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100000年後の安全

ファイル 189-1.jpghttp://www.uplink.co.jp/100000/
監督 マイケル・マドセン

未来のみなさんへ

ここは21世紀に処分された
放射性廃棄物の埋蔵場所です。
決して入らないでください。

あなたを守るため、
地中億深くに埋めました。

放射性廃棄物は大変危険です。
透明で、においもありません。

絶対に触れないでください。

地上に戻って、我々より良い世界を作ってほしい。

幸運を。

GoodLuck と言われてしまいましたよ。
フィンランドで、世界初の高レベル放射性廃棄物処分場が建設中という。監督自らその建設中の施設に潜入する。この建設を決めた専門家たちに質問を投げる。

この東北大地震後に、モンゴルに廃棄物処理施設を造るというニュースがあった。東芝だったかな、どこか日本のメーカーが関係するもの。
地震前には、原子力発電が如何にクリーンなエネルギーであるか、どんなに気遣って地中深くに廃棄物処理しているかと電力会社のCMが流れていましたね、某映画監督とか、鹿児島ゆかりの某女性歌手とか出演して。

10万年後、地球が無事で、人類が無事に生存していたとして、現在のホモサピエンスではないかもしれない。まあ運よく今の人類の進化型であり、意思伝達方法もさほど違わないとしても、古代言語であることは間違いない。千年前の日本語の文章でさえ一般人には読み説くことが難しいのに。ここに近づくな、触るな!と、どうやって伝える?この施設の存在を忘れることを忘れるな、と、矛盾した言葉が何度も出てくる。

巨大な経済効果の持つ力とは、知性や感性をかくも押しのけるのか。あまりにもわかりきったことが平然と行われていることに、あきれる。このドキュメンタリーの形の映画の初めのあたりから、すでに胃かなにか肉体的に痛みのようなものを感じた。

もともと、原発反対派が気にしていたのはこの廃棄物処理の問題が多かったのだが、地震、津波という自然災害によって、日本は今、被害者であり加害者でもある。
列車事故の真相隠ぺいで騒がれている隣の国で、もしもその手の事故があったら?真実が隠ぺいされたら?黄砂のようにその物質が流れてくるだろう、というようなことを、つい思った。

ヒロシマ・ナガサキへの原爆によって、原子力への抵抗が強かった日本人に対して、平和利用と強調する手段によって原発開発させた、アメリカが・・・みたいな記事も最近目にしましたぜ。

そして、残念なことに、この種の映画は、すでに基礎知識を持つ人が観客であるケースが多いだろう。みんな、見に行こう!
管理人atconさんのところにもポスターが貼ってありますよ。

MOVIE
comment(2) 2011.08.02 14:10

大鹿村騒動記

ファイル 187-1.jpg

http://ohshika-movie.com/
監督:阪本順治
出演 原田芳雄 大楠道代 岸部一徳 石橋蓮司

長野県に実在する村の実在する歌舞伎、原田芳雄さん自身がそれを舞台にした物語を望んだのだという。

最初のほうに出てくる村歌舞伎の観客がいい。なにしろ本物の村人、本物の観客だから。

ディア・イーターなんぞという食堂の主、サングラスにテンガロンハットの親父は、村歌舞伎の花形でもある。リニアモーターカーの導入をめぐって意見が割れる村、村歌舞伎の役者たちももめている。
ある日、そこへ、かつて駆け落ちした妻と親友が戻ってくる。妻は認知症になり、駆け落ちした記憶も無くなっている、それを持て余したのだ。

豪華な、達者な役者たち。観客のあちこちに笑いが起こる。たった2週間で撮った映画だという。
大楠道代さんは“ツィゴイネルワイゼン”で、石橋蓮司は“竜馬暗殺で、”岸部一徳は坂本監督映画常連、小野武彦は確か俳優座養成所仲間、阿吽の呼吸が、変に器用な気配にならない(と、私は思う)。おそらく、原田芳雄さんの体調についてわかっていて、この豪華なキャスティングになったのだろう。・・・どうしてここに優作がいないかなあ、などと思ってしまう。

いい大人の遊びの映画を残してくれてありがとう。エンドロールに流れる清志郎の歌声に、やっぱり泣けてしまった。
昔々、ミドリブタパックによく桃井かおり、松田優作と一緒に現れては唄ってくれたね、リンゴ追分。こちらは、横浜ホンキートンクhttp://www.youtube.com/watch?v=0e2jJUXt6kQ&feature=player_embedded作詞は藤竜也さん。

今から出てくる若い俳優さんは、もう原田芳雄さんと共演する機会は無いんだよ。

葬儀日時:2011年7月22日 12時より
場所:青山葬儀場にて 
その時間に、自分の居場所から、送りましょう。

MOVIE
comment(0) 2011.07.21 21:16

息もできない

ファイル 185-1.jpghttp://www.bitters.co.jp/ikimodekinai/
製作・監督・脚本・編集・主演 ヤン・イクチュン

細胞の一つ一つが暴力でできているかのような男がいる。男がそうなるには背景がある。借金の取り立てを生業としている。根性のある女子高校生がいる。そうなるには若いなりに人生がある。二人が出会う。最低の出会い。

韓国映画と韓国ドラマの間には大きな大きな違いがある。

劣悪な家庭環境に育った者同志、そんな話など何もしていないまま、魂が寄りそっていくように親しくなる。
最低の男だが、殴った相手である女に向かって、“殴られっぱなしでいいのか”と聞く場面に、何かが象徴されている…母親?

韓国暴力映画というジャンルがあると言っていいと思う。傑作が多い。が、その暴力は、この手の男が実際この国には少なくないのだろうというリアリティがある。アクション監督が振り付けた香港映画とまるで性格が違う。この国の成り立ちに係わるものなのか。
しかも、この作品は、すべてヤン・イクチュンという一人の男によって制作されているのだ。

高校生役の女の子がいい。若いけれどキャリアの長い女優だそうだ。

殴る蹴る半殺しにする、口汚くののしる。その対象であった父親が、自殺を図る。必死に助ける。それがきっかけで、取り立ての仕事から足を洗おうとする、が・・・。

キネマ旬報昨年度の外国映画第一位。ほかにも、東京フィルメックスほか数々の映画祭で受賞。韓国暴力映画史上(?)に残るであろう傑作であることは間違いない。が、居間のDVDプレーヤーで昼間見るようなものでは決してない。映画館で見そこなったら、もうどなたさまにもお勧めできない。夜中に灯りを消して大きな画面で一人見ることができる環境があったら、そして暴力映画に抵抗がないなら、是非。

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comment(0) 2011.07.13 19:15

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

ファイル 184-1.jpghttp://judan-movie.com/
監督 ジョニー・トー(杜 琪峰)
出演 ジョニー・アリデイ 黄秋生(アンソニー・ウォン)  林家棟(ラム・カートン) 林雪(ラム・シュ)

iマカオで中国人の夫と子供たちを待っているフランス人妻がいる。“你们在哪里?(あなたたち今どこ?)”と電話で聞いている。帰宅した彼らとフランス語で会話し、間も無く、3人の男たちによって銃撃される。フランス語・英語・広東語の台詞が混ざっている中になぜかこれだけ北京語だった。

病院で、妻だけがかろうじて生き残っているところへ、フランスから父親が来る。新聞の活字を使って、口がきけない状態の娘と会話し、その時の状況を聞きだす。

この父親役がジョニー・アリデイ、その昔フランスのエルヴィスと呼ばれ、シルヴィー・バルタンが“ジョニーはどこに?”と歌ったアリデイが、孫のいる(いた)役で出てくる。私が知っている姿は金髪だったよなあ、ロングヘアの時代あったよなあ・・・誰かに似ている。サム・シェパード?ハーヴェイ・カイテル?

別の3人の殺し屋たちがいる。組織のボスの命令で、あるホテルの一室でターゲットを殺した後、父親とすれ違う。

父親は、男たちに復讐を依頼することになる。父親もかつてスナイパーだったのだ。

ジョニー・トー作品ですからねえ、血しぶきが飛んで黒社会で、DVDで見るもんじゃないんです。映画館で観たかった。実際、途中で一回止めて休んじゃいましたよ。最初父親役をアラン・ドロンに依頼したけれど断られたとか。役名がコステロなのは、アラン・ドロンの映画からとったらしい。

香港ノワールを見慣れた人なら、ボス役のサイモン・ヤム、秋生サン、林雪と、メンバーを見ればどんな映画かほぼ想像がつく。この作品で良いのは、自転車、ゴミ置き場、シール、などの小物の扱い。そしてビッグ・ママという女性も良いね。銃撃戦で3人がなぜか煙草に火をつけるでしょ、あれ、『男たちの挽歌Ⅱ』の終り近くのシーン思い出すよね、って誰に聞いてるんだか、だれか同意して!

父親の頭には昔食らった弾丸が入っていて、いつ記憶を失うかわからない、という話をして間もなく・・・。

韓国のヤクザ映画と全然違う、スタイリッシュな映像、緊迫感の中にふっと笑いが起こる遊びの入り方、正しい香港ノワールだ。ちょっとゆるいかもしれないけど、おかげで後味は悪くない。

昨年度のキネマ旬報の、ベスト10に入っていた、何位だったか忘れました。原題はシンプルに“復讐”のようです。派手な邦題で。

MOVIE
comment(0) 2011.07.07 07:27

台北の朝、僕は恋をする

ファイル 182-1.jpghttp://aurevoirtaipei.jp/
監督 アーヴィン・チェン
出演 ジャック・ヤオ アーバン・クオ ジョセフ・チャン クー・ユールン

制作総指揮ヴィム・ヴェンダースだそうであり、アメリカ生まれの台湾人監督は故・エドワード・ヤンに心酔して師事したのだそうでありますが・・・。まああまったーりとした作品です。

パリにたつ恋人を見送る男の子がおりましたのさ。男の子さんは書店でフランス語学習本を立ち読みする日々、そこに女の子の店員さんがいて、彼にちょっと興味を示していて。
ある日、やっぱりパリに発った女の子にふられましたのさ。でもここで引き下がらない、フランスに行く!でも金がない・・・のでヤクザの金貸しさんから借りました。その代わり、ちょっとした荷物を運ぶよう頼まれ・・・。チンピラや警官やピストルや、なにやらかにやらに巻き込まれる若い男女であります。

その、ボスを出し抜こうとするチンピラ役の柯宇綸(クー・ユールン)があーんなまーったーりな役もできるのねえ、違和感無いのよそれが!と、そこはうれしい発見。エドワード・ヤン監督の作品などではもっと頬がこけていて神経質そうだったり、その後ゲイをやったり、なにかしら癖のある役という印象なのが、とんでもない、幅のある役者さんだったと知りました。しかし、91年の『クーリンチエ少年殺人事件』に中学生役で出ているのだから、結構な年齢のはず、若い。

映画の中にでてくる妙なダンスは台湾に実在するのか?映画のために創作したのか?これまた力の抜けたあれ、気になります。
それにしても、どこがヴィム・ヴェンダース、エドワード・ヤン?ともあれ台湾らしいことだけはまことに台湾らしい(まだ行ったことないけどね)作品。

追伸 公式サイトには エドワード・ヤン師事した とあるので、それは の間違いでは?と思っていたら、チラシのほうでは エドワード・ヤンに師事し と書いてあった。~を支持 ならわかるけど。なお、第60回ベルリン国際映画祭最優秀アジア映画賞受賞作品だそうです。へ?という気が、しないもんでも・・・。

MOVIE
comment(2) 2011.06.29 21:58

ヘヴンズストーリー

http://heavens-story.com/
ファイル 179-1.jpg監督 瀬々敬久
出演 崔岡萌希 長谷川朝晴 忍成修吾 村上淳 山崎ハコ

途中に休憩をはさんで4時間38分。

家族を殺された幼い娘、妻子を殺された若い夫、一人息子を育てながら復讐代行を副業にする警官、理由なき殺人を犯した学生、そしてその青年と家族になろうとする女性、彼らを中心に、20人以上の登場人物が、複数の殺人事件をきっかけにつながっていく。
と、チラシに書いてある。

幼い娘が家族を殺された直後に見たテレビの中で、妻子を殺された男が「僕がこの手で犯人を殺してやります」というのを見る、その瞬間に8歳の娘にとってその男がヒーローになる。なぜなら、その同じテレビ画面の中で、自分の家族を殺した男は自殺したことを知ったところだったから。もう自分の復讐はできないから。「お父さんの歳もお母さんの歳もお姉ちゃんの歳も超すよ、私死なない」と、祖父に伝える8歳の娘。
最初の物語のこの部分からしてすでにせつない。

行きずりに殺人を犯した青年に関心を持つ人形作家は、自分が若年認知症であることを知り、絶対に忘れたくないものを探してみたけれど、何もない、と言う。
この人形作家を演じる歌手の山崎ハコが役者として演じるなんて驚いたけれど、この役はほかに考えられない。たとえば緑魔子が演じたとして、ちょっと艶っぽさが過ぎる。この存在感は何だ?と、たぶん、山崎ハコという歌手を知らない人が見たら思うのではないか。
養子になった殺人犯訳の忍成修吾の、その後を見ながら、『リリイ・シュシュのすべて』という映画は結局どうなったんだっけ、と昔の姿を思い出したりした。

罪と罰、復讐、復讐の復讐・・・理由無き殺人にも何かの理由はあり得る。

今の時期なので、天災ならばいかに家族友人すべてを奪われようと、人は復讐など考えない、ことなどを思った。<原発事故は天災か人災か?復讐は?誰に?>

悲惨な話を、悲惨に終わるけれど、後味が悪いかと言うと、そんなことは無かったと私は思います。人形劇というのか人形振りと言うのか、仮面を付けた人と人形の芝居が間に挟まります。たくさんの、いい役者さんが出ています。片岡礼子さん、無理しないで長く続けてね。

MOVIE
comment(0) 2011.04.24 15:16

悪魔を見た

ファイル 177-1.jpghttp://isawthedevil.jp/
キム・ジウン監督
出演 イ・ビョンホン チェ・ミンシク

韓国映画のえげつない暴力シーンは見慣れているつもりだったが。
やくざの暴力・切った貼ったの血は見慣れていた、が、変質者の暴力・切り刻みというのは話が別なのだった。
まあとにかく、これをTVサイズで見る気には、全くならない、だろう。

チェ・ミンシクという俳優は、たとえば『オールドボーイ』とか、変な役をやっている事が多い。
イ・ビョンホンは、このところ妙な役ばかりやってないかい?甘い人生、グッド・バッド・ウィアード、アイカムウイズザレイン…。
ま、甘い人生、グッド・バッド・ウィアードはこの監督の作品なので。

恋人が惨殺される。国家情報院捜査官の主人公スヒョンは休職し、犯人探しを始める。

シリアルキラーのギョンチョルを探し出す。痛めつけ、GPS入りのカプセルを飲ませて、逃がし、また追い詰める。

ちょっと昔の香港映画でも、30回ぐらい死んでるぞ、と思われるのにまた起き上がって生き続けることがよくあるのだが、このギョンチョルも死なない。死なない程度に痛めつけてるったって、細菌感染するやろお、そーの汚い環境なら。
怪物だから感染症も逃げるらしい。

ゴローちゃんご推奨の作品だと聞いて、見たのだが。ホラーもサイコサスペンスもましてやスプラッタなんて絶対見ないのに、スプラッタ・ホラー・サイコ・サスペンスでしたぜ。
イ・ビョンホン以外の誰がこの役をやれるか?だれも思いつかない。
が、演技賞だったらチェ・ミンシクの方か。あーえげつない。

どなたさまにもお勧めしません。スプラッタやサイコサスペンスフリークの方、どうぞ。韓流ファンのおばさまがた間違って見た人も多いでしょう。

見るべきものが無いという意味ではありません。ゴローちゃんの評価ももっともです。

それにしても、『親切なクムジャさん』とかでもそうだけど、韓国の歴史的な問題でしょうか?何百年も積み重なった抑圧感のなせる技でしょうか?このえげつなさは。

“ベルセルク”などの日本のマンガの影響か?と書いていた人がいた。なるほど。

MOVIE
comment(0) 2011.03.10 10:19

ヒアアフター

ファイル 176-1.jpgWARNER BROS.STUDIOS
監督 クリント・イーストウッド
出演 マット・デイモン セシル・ドゥ・フランス

フランス人ジャーナリストのマリーは、東南アジアで大津波に巻き込まれて死にかける。呼吸停止の状態だったときに、いわゆる臨死体験をする。そのビジョンが忘れられない。

一方に霊能者でありかつてそれを仕事にしていたアメリカ人ジョージがいる。

今はちょうどニュージーランド地震の直後でもあり、津波のシーンがリアルにこちらに迫ってくる。が、どこでどんなふうにこの二人が出会うことになるのか?と思って見ていた。

私もスピリチュアル世界に関心はある。そういう世界があってほしいと思う。とは言えクリント・イーストウッドがなぜ?死後の世界に関心を持つ年代に至ったというわけ?と思ったら、スピルバーグが口説いたんだって。

もう一人(というのか二人というのか)、双子の少年の一人が車にはねられて死ぬ。双子は、薬物中毒の母親に育てられている恵まれない環境でもあり、深く寄りそって生活してきた。兄弟の死を受け止められず、もう一度話をしたいと願う。

願ったものでもなく霊能者となってしまうことの苦悩というのは深いだろうと、想像はつく。普通の生活を営みたいのは無理もない。

さて、面白いのだ、終盤まで、3人が出会うあたりまで。
ん?最後20分ぐらいはしょらなかった?ちょっと、終わり方があっけないでしょう。霊能者ジョージや、兄を失ったマーカスの喪失の深さに比べて、マリーのそれはちょっとレベルが違うんじゃない?そりゃあ花形キャスターの地位と恋人を失ったとは言え。

それでその最後のシーンなんだけど(ばらさないよ)、ねえ、あの二人にとって、そのあとは?それでめでたし?うーん・・・。

2011,3,22 追記
東日本の大地震、大津波を目の当たりにした今となっては、この映画の視点は…旅先の被害のことは?植民地的感覚になってない?と思う。
この作品はすぐに上映中止になり、中国映画『唐山大地震』は上映延期となった。

MOVIE
comment(2) 2011.03.09 13:46

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