著者 重松清
角川文庫
読んでみたいと思いながら、どれにしようかな・・・という状態で今まで縁が無かった重松清。ばったり会った友人が袋いっぱいに古本として売ろうとしていた中にあり、私のもとに来た。
友人の紙袋から私のもとに渡ったもう一つは宮部みゆきの『ブレイブストーリー』で、そちらを先に読み始めたのだが、何しろ上中下巻の内の中が抜けていて、読み進められず、「疾走」へと移ったのだったが、この二種がとてもよく似た小説だった。表現の方法、スタイルは全く違うが、弱い大人を親として持ち、家庭の崩壊という状況に向き合うことを余儀なくされた子供。ブレイブストーリーの主人公は小学生だが、疾走では中学生であり、より過酷な現実にさらされる。暴力、セックス、そして殺人。
下巻に入ってほどなく、気付くとグダグダ泣いていた。
上巻終わり近くに、神父の弟で、殺人罪で拘置所にいる宮原雄二に会うシーン、俺は死ねなかった、に始まる長いひらがなのモノローグの中に、おれはおもうのだ、ことばがあるから、ひとはなやむ。という部分がある。おれはことばなどおぼえるのではなかった。ことばさえなければおれはあんなにもくるしまずにすんだ。ひとをころさずにすんだ。・・・田村隆一の詩にあったよね(→atconさま)、言葉なんか覚えるんじゃなかった、というフレーズ。
読み終えて、最後でなんとか救いがある。
この著者にはこんなに(馳星周か?みたいに)暴力と悲惨に満ちたものでは無い小説があるはずだよね、お勧めはどれかな?
お、SABU監督で映画化されてたのか、手越祐也がシュウジ役、それは見なければ。