去年の雪

著者 江國香織
出版社 角川書店

kozo no yuki と、タイトルの上にある。
だけど、去年の雪はどこに行ったんだ?
というフランソワ・ヴィヨンの詩の一節から取ったタイトルであるらしい。

人が事故死するシーンがまずある。
一行空くごとに、登場人物が代わる。時代もずれる。ずれるどころか、平安時代と思われる話の中に、現代で起こっていることの欠片が迷い込む。死んだ男の魂なのか、別の時代の状況を眺めている。江戸時代の景色に、現代の誰かが遊んだシャボン玉がいくつも浮かぶ。ここでふいに無くなったトイレットペーパーが、別のどこかの買い物に紛れ込んでいる。烏が別の時代の物を運んでくる。

今死んでいることを進行形で感じながら死んで、どこかの時代に魂か何かの姿で迷い込んで、ぼんやり眺めている、たまにはその姿を見られる。いつか少しずつ意識が薄れていく。と言う死に方(ではないか、存在の無くなり方)は悪くないなあ、と思ってしまった。
久しぶりに江國香織を読んだ。好き嫌いが分かれるであろう作品、私は好きです。装丁も好き。

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