空中庭園

kuutyuu

監督 豊田利晃
出演 小泉今日子 鈴木杏 板尾創路 大楠道代

 団地に住み、“何事も包み隠さず”というのがモットーである家族。なので、高校生の娘は「私が仕込まれたのはどこ?」という質問をし、つまり生を授かった場所は“野猿”なるラブホテルであったと、親は答えるのである。

 当然のことながら、家族それぞれに言えない秘密を抱え込んでいる。それぞれが“野猿”にかかわっている、あるいはかかわってくる。

 小泉今日子が見せる“完璧な笑顔”と呼ばれる表情がすごい。名優加藤治子さんの、無邪気な毒(すみません、矛盾してます、はい)を含んだ表情を思い出した。
 この妻とその母親との関係が、そもそもの原因で、この絵に描いたような仲の良い誕生日はもちろんのこと娘の初潮、息子の性の目覚めまでが家族でお祝いされる家庭ができているのだ。
 
 母と自分との関係を憎み、それを反面教師にするということ。
 
 別に不思議はないよね、ある娘は愛が少なかったことを、ある娘は過剰だったことを、理解されなかったことを、スポイルされたことを、なぜあなたはそうだったんだ?と心の中で責め、自分はああはならないと思う。

 脇役のキャストが豪華だ。国村隼・瑛太・ 勝地涼・ソニン・永作博美などなど。2005年作品だと瑛太をこんな風に…と思う。大楠道代さんなんてあの美人女優が・・・である。

 どんどん壊れていくかに見える母の精神状態、みんなの関係が、最後に光が射して、再生に向かって、終わる。

 のだと思うのだが、それすらも母の妄想かもしれない・・・ような終わり方でもある。ので、原作はどうなんだよ、と、それから角田光代の原作を読んだ。
 映画ではいまひとつパッとしない息子が、原作ではこれがなかなか良い。賢く、感性のいい男の子さんだ。この子によって救われている。
 原作によれば、映画の最後のシーンはまさしく母の妄想であったのだけれど、原作の終わり方もやはり光に向かっている。ああ安心した、映画もきっ$FILE1_rとそうなんだよ。

 すぐれた日本映画というものはすごい、と、『ぐるりのこと』と同時にDVDを借りて見てつくづく感じましたさ。2005年公開。

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