二十歳よ、もう一度

二十歳よもう一度http://20again-movie.jp/index.php

監督 レスト・チェン

出演 ヤン・ズーシャン グァ・アーレイ チェン・ポーリン ルハン

韓国映画『怪しい彼女』(http://art-container.net/movook/archives/560参照)の台湾版リメイク。

どうにも渡辺美佐子さんそっくりに見える帰亜蕾 グァアーレイさんが、口うるさい姑でもあるおばあちゃん、その若返った姿が楊子姍ヤンズーシャン。歌手でもあるそうで、達者。孫役は、韓国のアイドルユニットの一員だった鹿晗ルハン、なので韓国アイドル顔に作りこんである感。そして、音楽プロデューサー役は陳柏霖 チェンポーリン、あの『藍色夏恋』の少年も、すっかり大人なのねー、と、古くからの中華映画ファンは思いますのさ。

『怪しい彼女』のポスターだと思われるものが、ベンチの後ろに大きくある、とか、青春写真館のショーウインドウに、ん?昭和の皇后さま?だったと思うよ、三日月に腰かけた姿でちらっと。などと、なんだかちょっとしたくすぐりがある、もっとほかにもあったのかもしれない。

ストーリーは、韓国版とほぼ同じ。台湾語の混じらない中国語映画は久しぶり、中国語学習者にお薦めしますよ。原題は“重返20岁”だと思われます。台湾らしいバラードがいろいろ聞けるのが楽しい。

日本では、倍賞美津子サンと多部未華子チャンでリメイクだって。ほとんど同じお話でも、やっぱりお国柄が出るもの、日本版も見たい。倍賞美津子サンと未華子チャンは全然似てないと思うけどね。

やたらアジア映画月間となりし今月でした。

雪の轍

雪の轍監督 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン

出演 ハルク・ビルギネル デメット・アクバア メリサ・ソゼン

カッパドキアが舞台で、カンヌでパルムドール受賞、で、それは見てみようと思ったのだが、久しぶりに、私が見なくてもいい映画に当たってしまいましたよ。

名優ですよ。トルコの映画を見たのも多分初めてだと思うけど、シェイクスピア劇が似合いそう。で、カッパドキアでホテルを経営している、まさしく元舞台俳優、という役。悠々自適。

が、若い妻とも、同居する妹との関係も、うまくいっていない。・・・これが、語る語る。日本人だったら喧嘩売られたと思うほどズバズバ批判する、自己主張する。つい笑ってしまう。

家を貸している一家が家賃を払わない。恨みを買う。

もうねえ、だんだんもういいようるさいよいいかげんにディベートやめて離れようよ…と思ってしまうのだね、日本人としては。

ほぼ会話だけで進んで行く。

カッパドキアの岩窟の中のホテルには、泊まってみたいものだと思います。実際、日本人カップルが泊まっている設定。

箱入りの世界文学全集に今も手を伸ばす人には面白いかも。

シフト 恋より強いミカタ

シフト監督 シージ・レデスマ

出演 イェン・コンスタンティーノ フェリックス・ローコー

ウォン・カーウァイの『恋する惑星』になんか全然似てないじゃないか、眠たいよ、と、7割がたのところまでは思っていた。主人公の女の子がギターの弾き語りで歌う歌はなかなかいい。女の子のピンクの髪もきれい。

で、最後のシーンで、腑に落ちた、というか、うん、面白い、と思った。面白かった、ではなく。新人女性監督の作品だということも、なるほど。

英語圏向けの、商品のコールセンターに勤めるフィリピンの女の子エステラ。先輩の面倒見のいい男性が教育係としてつく。仲良く仕事をしていくうちに、だんだんとエステラの気持ちが恋になっていくけれど、彼はゲイだ。

なんだかなあ、ゲイ率の高い職場に見えたけどなあ、タイじゃあるまいし、そんなことあるのかなあ、フィリピンで。・・・ほー、監督のインタビューで、コールセンターは国際的な多様性を求めていて、ゲイ・レズビアンに寛容なのだそうだ。ただ、バイセクシュアルに対してはまだ偏見があるのだそうだ。

その職場でリストラにあったエステラが、やはり同じような職場の面接を受けている最後のシーン、その、最後の最後、質問される。「では、5年後、どうなっていたいですか?」

カメラマン?シンガーソングライター?何を目指しているのか今一つはっきりしていなかったんだよねえ、テーマってそれだったのねえ。

歌がとてもいいと思ったのもそのはずで、フィリピンでは有名なシンガーソングライターなんだって、彼女。

鹿児島にもフィリピン人たくさんいるのね、映画は英語交じりのタガログ語だったけど、小さなガーデンズシネマの外で待つ間、タガログ語交じりの日本語の会話の陽気な人たちがいました。

 

 

怪しい彼女

怪しい彼女http://ayakano-movie.com/

監督 ファン・ドンヒョク

出演 シム・ウンギュン ナ・ムニ イ・ジヌク

口うるさく、おせっかいな70歳のオ・マルスン、いかにも韓国のおばあちゃん、嫁を危うく病気に追い込むような押しの強い姑が、ふと青春写真館という看板を見て、遺影を撮ってもらおうと思う。

出てきたら、なんと二十歳の娘に戻っていましたのさ。

若くして夫を失い(「国際市場で逢いましょう」と同じく、夫はドイツに出稼ぎに行き、そこで無くなってしまった)、苦労して息子を育てた。さて失われた青春を取り戻す時間が始まる。

孫のバンドのボーカルがいなくなったばかりだった。オ・ドゥリと名乗って歌手としての活躍が始まる。

歌はなかなかうまいので、誰かプロの歌で口パクしているのかなあと思ったが、シム・ウンギュン自身がボーカルとダンスのトレーニングをしたのだそうだ。

見た目はピチピチガールでも中身はおばあちゃんなので、さまざまとっ散らかって周りを混乱させる。そう珍しくも無い話の作りなのだが、これがみなさん達者、客席から笑いが起こる、遠慮なく私も笑える、終わり近くにはウルウルさせる、よくできた映画でありました。

最後のシーンで、マルスンの家の使用人だったころから彼女に恋心を抱いていたおじさんが、青春写真館に入って出てくるとこれが!そしてバイクでマルスンを迎えに行き…と、なるのだが、映画館を出て原付で家に帰る私には妙におかしい気分なのでした。

祝宴!シェフ

祝宴!シェフ監督 陳玉勳

出演 林美秀 キミ・シア 楊祐寧(トニー・ヤン)

恋人だった男の保証人のハンコを押したために借金取りに追われる羽目になった娘。実家に戻ると、母親も夜逃げしたらしい。隣人に聞いた場所に出かけると、食堂の前で踊って集客しようという目論見の母が。

亡くなった父親は高名な宴席料理人だったが、母には料理センスが無く、娘は食堂をやる気が無く売れないモデルをやっていたのだ。

ふらりと現れる料理ドクターを名乗る男。

父を訪ねて老夫婦がやってきて、昔ながらの料理を、自分たちの結婚式で食べたいと言う。

娘シャオワンは、賞金の出る全国宴席料理大会出場を決め。

そーんなことありますかいな! な運びではございますが、妙な脇役をあちこちに配置して、テンポ良く適当に歌うわ踊るわで、楽しく観てまいりました。さすらいの料理ドクター役のトニー・ヤンが、喇叭がどーたらという歌詞の歌を歌うのだが、どうもその歌詞が怪しい。台湾コメディーにありがちな下ネタ歌詞であられ。最後のあたりで、さあ皆さんご一緒に、な勢いになるのだが、歌えるか!と思うが台湾では観客が合唱するのか?もしかしたら。

まあとにかく、お腹空きましたよ。どれも美味しそうで。台湾に食を楽しむ旅行に行きたくなる映画です。

国際市場で逢いましょう

国際市場で逢いましょうhttp://kokusaiichiba.jp/

監督 ユン・ジェギュン

出演 ファン・ジョンミン キム・ヨンジン イ・ダルス

1950年ごろの朝鮮戦争時の混乱の中で、父・妹と離れ離れになったまま、母やほかの弟妹と釜山に避難してきたドクス。釜山の国際市場のコップンの店を訪ねるよう父に言われた通り、伯母の店で世話になる。

父の言葉を忘れず、家族を守るための労働にいそしむドクス。弟は頭が良く、ソウル大学に合格する。学費を捻出するため、親友ダルグと共にドイツの炭鉱で働くことになる。そして、そこでやはり韓国からやってきて看護婦をしていたヨンジャと出会う。

ダンスパーティでツイストを踊っているシーンなど、60年代の日活の映画、浜田光夫と吉永小百合のあたりの景色のようでもあり、日本にだって悲惨な炭鉱労働はあっただろう…が、朝鮮半島は1950年にはまだ戦争をしていたし、後の70年代にはベトナム戦争に参加した兵士がいたのだ、と、改めて思う。

戦争ということが、国の発展を妨げるのだ。それが、この映画を見ていて一番強く思ったことだ。安保法案成立で、早速武器の輸出が可能になったらしい我が日本。あー、そういうことで経済界が儲かるのか。そして結局戦争に巻き込まれ、儲かった少数がいて、そのほかの多くは貧しさに沈み、這い上がるまでに無駄に時間を要する。

兵士としてではないが、戦時のベトナムに仕事に行く。家長として妹の結婚費用を稼ぐために。

伯母の死後、買い取ったコップンの店を、どうしても手放さない頑固爺さんのドクスと、それぞれの時代の姿が行き来して描かれる。すごい老けメイクで、これ、別人?ではないか、と確かめてしまうほど。

結婚式のシーンでヨンジャが歌う『黄色いシャツ』は、大昔に日本でも流行ったもの。オッチョンジー ってどういう意味なんだろう?後の人気歌手の役で東方神起のユンホが出ていて、何だったかほかの韓国映画でも聞いたことのある歌を歌う。サービス出演?ナムジンという実在のその歌手に救われた設定のため、ドクスはずっとナムジンのファンなのだ。実業家やデザイナーなど実在の人物がそちこちにはめ込まれている。

家族を描いた作品を観終わったひとりもののわたくしでした。

 

 

火花

火花著者 又吉直樹

出版社 文芸春秋

とうとう買ってしまった。近所のツタヤには長く見かけなくなっていたのが復活してしばらく、手を伸ばそうか…と何度か逡巡し、今日初めて中の文章を覗いた、3ページぐらい。花火の描写が美しかった、続きを読もうと決めた。

逡巡の理由の一つには、私が太宰を好きでないことがあった。太宰ファンで有名な又吉なのであるから、どうなのだろう…と。

天才肌の、売れない先輩芸人との出会い。自分の伝記を書けと言われる。そして、この作品が、結果としてその伝記、という仕組みなのかな。

売れてないのに、一千万の借金を作ってしまう芸人。大昔の芸人さんと違って麻薬をやってるわけでもないのに。きっと、そういう、世の中の枠からどうしても外れてしまう人がいるんだろうなあ、その世界には。そういう姿を、太宰の継承と呼ぶのか。

先輩芸人との会話やメールのやり取りの、センス、という言葉でくくるのもなんだかな飛び越え方が羨ましい。わくわく。

途中、ふいに涙が沸き上がってきた部分があった。

とても、切なく、切羽詰まって書いた感があって、素敵な小説でした。

えーと、今気づいたのだけど、初めのほうで花火のシーンが出てきて、で、タイトルが火花って。いまだに間違える人がいるけど。

千千にくだけて

千千にくだけて著者 リービ英雄

講談社文庫

タイトルの「千千にくだけて」は、島々や 千千にくだけて 夏の海 という、芭蕉が松島を詠んだ句から。

日本で暮らし、中国や日本のことを日本語で書いて、時にアメリカの親族に会いに行く生活をしているエドワードが、カナダ経由でアメリカに行こうとしているときに9.11事件が起こる。国境が閉鎖され、バンクーバーに足止めされることになる。

アメリカ生まれの日本語作家リービ英雄の実体験をもとにしているであろう叙述は、例えば、飛行機の窓から見える海の景色に思う 島々や という言葉に、 all those islands  という訳文がこだまするという、言語の並立がいつもそこにあるものとなっている。母語しか自由に操ることができない身には大変興味深い。グラウンド・ゼロという言葉を聞き、ばくしんち という言葉を浮かべる、など。

表題作のほか9.11がテーマの2作と、台湾での子供時代を思い出す形の「国民のうた」が入っている。

母が「いくら日本人と一緒にいても,結局は死ぬまで外人として扱われるでしょう」と言うシーンが、一つの作品の中にあるのだが、アイデンティティーという言葉が、何やらすり切れたものに思えるような立ち位置を、見る気がする。

 

 

 

トム・アット・ザ・ファーム

トムアットザファームhttp://www.uplink.co.jp/tom/

監督 グザヴィエ・ドラン

出演 グザヴィエ・ドラン ピエール=イヴ・カルディナル リズ・ロワ

お薦めはしない。私にも理解不能なことがあちこちにある。

広告代理店に勤めるトムは、事故でゲイの恋人を失い、葬儀に出席するため、農場に向かう。そこには、恋人だったギョームの母と兄が暮らしていた。兄は、その家に泊まったトムに、突然暴力的に、ゲイであることを言うなと命じる。

田舎だから、同性愛の存在など考えられない。どこの国でも、都会であれば格別の問題なく生きていけるだろうが、田舎で、そして母親を相手に、あなたの息子の恋人でした、とは言えない。女性の恋人がいたという嘘に嘘を重ねていく。

恋人の突然の死で心には深い傷を負ったまま、説明不能な具合に暴力的で、どこか、この男も同性愛の傾向があるのか?とおもわれる、異常さをあらわにしている兄に対応するトム。いつの間にかトムは兄に従ってこの農場を離れられなくなっていくようだが、それはいわゆるストックホルム症候群的なことなのか?

偽の恋人にされた同僚女性サラに助けを求めたトム。彼女にも暴力を振るおうとする兄。

何がわからないって、逃げ出そうとしたはずのサラが、車の中で酔っぱらって兄と…薬でも盛ったか?兄よ不条理な、・・・それをサイコサスペンスと呼ぶのか。

金髪のグザヴィエ・ドランは美しい。壊れた心と暴力によって傷つき行く肉体。もうどんなところに流れていく話かと。

最後、なんとか、ちゃんと息つけます。

私は、このグザヴィエ・ドラン物を見る機会があったら追うことに決めたので(マミーを見てから)、今後も見続けます。監督、編集、衣装、そして主演がグザヴィエ・ドランです。

 

流著者 東山彰良

出版社 講談社

153回直木賞受賞作品。「火花」のみならず今回の芥川賞・直木賞作品はどれも興味をそそられたが、台湾出身の作家によるこれを最初に読んでみることに。

1970年代の台湾は、日本の1940~50年代を思わせる猥雑さ、混沌がまだまだ存在した、らしいことは今までに見た台湾映画の中でも見た景色で、しかし、文章で読むとうーむ。

中国の国民党支持者であった祖父が、共産党支配の国となった中国から台湾に逃れてきた。外省人と呼ばれる大陸からやってきた中国人にとって、台湾人は見下すもの、ということが当然のものだったらしい。…そうか…。異質な文化を持つ数の少ない者を蔑視したがる性質を、身に付けながら育つものなのか、大概の人間は。

などと小さな部分にちょっとしたショックを受けながら読むから、祖父を殺したのは誰か?というミステリーが主題であることが、ちょっと飛んでしまう。私には。

途中までは、誰か台湾の映画監督が映像にしてくれることを期待しながら読んだのだ。とても映像的な小説だし。が、この、台湾生まれの人にしか書けない時代の流れ、80年代の中国の姿、日本で育ってこそ、これは書ける作品で、えーと、もしも映像化されたとして、大陸で受け入れられるか?うーん、日本人が映画やドラマにしたってこの猥雑暴力混沌は描けない気がするし。映像化しないのはもったいないのだけど、さあ誰かなんとかしてくれまいか。

祖父が中国山東省出身であり、父が暮らし母が育った地が台湾の彰化であるところからのペンネームだそうだ。「このミス」銀賞とか、大藪春彦賞とか受賞しているというほかの作品も、読みたい。

 

 

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