完全改定版 占星術殺人事件

殺人事件占星術著者 島田荘司

講談社文庫

困った。

「東西ミステリーベスト100」日本編第3位と帯にある。何よりも、作家はこのシリーズの探偵“御手洗潔”役に金城武を希望している(が、断られた)と、以前に読んだことがある、ので、シリーズ第一作(2006年)を読んでみたのだが。

ごめん、私、日本の“本格”とか“新本格”ミステリーが、さほど好きではないのだった、もともと。

密室で殺された画家、彼が残した手記があり、六人の娘の肉体から、占星術に従って完璧な肉体(アゾート)を作る計画が書かれてあった。彼の死後、一部を切り取られた6人の娘の死体が、日本の各地から発見された。犯人がわからないまま、占星術殺人事件として騒がれた事件から40年たった。

占星術とか錬金術とか、私の理解力がなかなか及ばないままややこしく進展していく。画家梅沢平吉の結婚生活もややこしや。寝る前にちょっとずつ読み進めるタイプの話では無いんだな、それが悪うございましたね、まず。後半の、20枚の一万円札を半透明なテープを使うことで21枚にするトリック、えーと、どれとどれを繋ぐんだっけ?でまた躓く私。

人の体は、そんなに簡単に切れるものじゃないでしょうよ・・・。

この第一作では、探偵が趣味の占星術師である御手洗潔は、その後、星占いが趣味の私立探偵へ、そして探偵が趣味の脳科学者へ、と変化を遂げるらしい。今では地球上のほとんどの言語に堪能だとか。

ともかく、もう一冊読んでみよう。

 

追記 部分部分を読み返してみた。お札20枚を少し短い21枚にする方法は納得、その応用のトリックは、本格好きにはたまらない、のだろう。でもやっぱり、あの人にもあの人にも、体力的に無理だと思うぞ、その仕事は。それに、アゾートという言葉をいくら調べてもその意味がよくわからない・・・。

もらとりあむタマ子

もらとりあむタマ子http://www.bitters.co.jp/tamako/

監督 山下敦弘

出演 前田敦子 康すおん 富田靖子

なんだそりゃ?…と言ってしまえばそんなような話。大学を卒業して実家に帰ってぷらぷらしている女子。父親が作る食事を食べ、片付けるでもなくぐうたら少女マンガ(天然コケコッコーだ、と思ったらこの監督で映画化している)を読み、寝る。初めのころこそそれを責めていた父親だが、あきらめたかそのまま過ごしている。

就職活動するかと思うと写真館の息子(中学生)を使ってアイドル写真のごときものを獲り、オーディションを受けようとしている始末であった。

正式な社員として生活した経験の無いわたくしですら、イラッとする感のある莫迦娘である。のだが、前田敦子がAKBアイドルだったのは幻に違いない、ほど自然なぐうたらぶり、中学生伊東清矢クンのぼんやりとしたパシリぶり、そしてなんといっても父親の康すおんの味、で、映画館の中で笑い(失笑?)が起こり、映画としてなぜか成立している。一瞬ぼやけた今井雅之かと思う父親役、 かん・すおん という人はこの人だったのか、この字は見たことあるし、かん と読むことも知っているが、何の記憶も無い。印象に残りにくい顔立ちは、俳優として幅広く演じられるお得な個性とも言える。もう覚えたぞ、と思うけれど、さてどうだろう。

ほかに、鈴木慶一サンが出ていたり、それと、星野源という俳優さんが歌もやっているという知識はあったけど、これの主題歌、良かったな。

そうか、『リンダリンダリンダ』の監督ね。『苦役列車』や『天然コケコッコー』を、見たくなった。

 

光にふれる

光にふれるhttp://hikari-fureru.jp/

提供 王家衛

監督 張榮吉(チャン・ロンチー)

出演 黄裕翔(ホアン・ユィシァン) 張榕容(サンドリーナ・ピンナ)

原題『逆光飛翔』英題『Touch of the light』というこの作品、提供;王家衛とは? 張榮吉が監督短編映画部門最優秀賞を獲った「天黑」という作品があり(同じ黄裕翔主演)、それを見た王家衛が長編映画を撮らせよう、となったそうだ。

盲目のピアニストの卵、ユィシァンが、音楽大学に進学する。盲学校卒の学生を受け入れるのは初めてだ。入学に付いてきた来た母親は心配を隠せない。

一方、ダンサーになる夢を抱いている娘シャオジェは、通販で大量の品物を買い続ける母親のせいでアルバイトで稼ぐ生活。ストリートダンスのリーダーの彼氏は浮気しているし。

ある日、横断歩道を渡り損なって立ち往生しているユィシァンを、シャオジェが助けて、親しくなっていく。

音楽がすばらしい。そしてダンス教師の踊りに目を奪われる。後で調べたら、マーサ・グラハム・ダンスカンパニーに長く在籍した世界的に活動している人だそうだ。

ストリートダンスのほうでは“Asian 4 Front”という、沖縄出身のTAKESHIがリーダーの、台湾人・日韓ハーフ・米台ハーフとなんと国際的な4人組が、出てた、はずである。ダンス指導に呼ばれたけど結局出演した、ような話を何かで読んだ。台湾で駆け出しのシンガーでダンサーの人たち。

黄裕翔は実在のピアニスト、映画の中でもバッハを弾いたりヴォイスパーカッションしたり、いろいろなことを見せてくれる(寮の同室のおデブな子の誘いで組むユニットの音楽いいよ)が、実際にクラシックにとどまらない幅広い活動をしているという。だから、ジャンルにかかわらず音楽が好きな人、ダンスが好きな人、是非、とお薦めしたい、気持ちのいい作品。

 

小さいおうち

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監督 山田洋次

出演 松たか子 黒木華 吉岡秀隆 倍賞千恵子

2010年143回直木賞受賞作の映画化。64回ベルリン国際映画祭銀熊賞、黒木華(はる)最優秀助演女優賞。

これは、原作を読んでいない人が見た方がいいと思う。

昭和の初め、東京郊外の、戦前で言うところの中流の暮らし(20~30年ぐらい前の日本の、みんな中流と思っていたものではなく)、おしゃれな赤い屋根の、洋間がある家。そこに、「おしん」のような東北の田舎から上京してきて女中になったタキ、『タキさんと時子、名前が似てるわね』と出会いの時に言った美しい奥様。

黒木華さんはとてもいい。美しすぎないから、いろんな役ができる。「舟を編む」ではいかにも都会的な出版社勤務の人だった。整形してみんな同じ角度の鼻になっている韓国の女優たちよ、これを見よ、と、心に思ってしまう。寺島しのぶサンにしても美しすぎないからこその幅の広さだ。ま、基本、女優として優れていることが必要だけど。

吉岡秀隆クンは、この作品の場合、ちょっと違和感があるかも。美しい若奥様に一目ぼれされるにはちと地味でしょう。

原作があって映画化されるとき、ほとんど原作通りであってもそれでは映画で見る甲斐が無い、と思う時もある。換骨奪胎されて新鮮に感じる時も、あれ?という時もある。この作品についていえば、それなりにうるうるしながら見ていたし、まあ原作に沿っている・・・けどなんだ?何だか違う、と、家に戻って原作をめくった。そうだよ、倍賞千恵子さんになってからのタキさんの造型が、原作と違う。奥様が道をはずしかける理由が、原作にはある。

元々、山田洋次作品を、好きかどうか、という問題かもしれない。小さな毒のような針のような部分を、省略して描かれた物語が、私には少し物足りなく感じられた。

なお、原作についての(簡単な)感想文はコチラ。

http://art-container.net/mbblog/diarypro/archives/152.html

白雪姫には死んでもらう

死んでもらう白雪姫には著者 ネレ・ノイハウス

創元推理文庫

「深い疵」に続き、オリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン主席警部とピア・キルヒホフ警部が捜査に当たる警察小説。わかっているつもりでも、読み始めてしばらくは読みにくい。相変わらず、ドイツ人の名前がなかなか覚えられない。えーとこれ誰だったっけ?としばしば表紙裏の人物紹介を見返すこととなる。

かつて二人の少女を殺したとされている男トビアスが出所して戻ってくる。男には、自分が殺人を犯したという時間の記憶が無く、冤罪を主張している。

プロローグの、やあ、白雪姫、と小声で話しかけたのは誰?娘が死んでいるのはもちろんわかっていた、とは?

そして、空軍基地跡から少女の白骨死体が発見され、オリヴァーとピアの出番。

小さな村で、守りに入った村の者たちから受ける迫害、暴力。何を守ろうとしているのか?

一人の少女が、疑問を持つ。そして。

名前だけでなく人物関係が入り組んでいて、なおかつ、本筋と別に気になるサイドストーリーが展開され、で?彼はどうなるの?・・・邪道ですが、ちょっと後ろの方を先に読んでしまうなど、しちゃったけど。

小せえ、と、申すか、自分まわりを守るためにどいつもこいつも・・・。ドイツの警察小説ですが。

そして、うまい作家だ、サイドの話でシリーズ続きを読みたくさせるんだもの、だってオリヴァーの結婚生活の行方は!

さよなら僕の夏

さよならぼくの夏著者 レイ・ブラッドベリ   北山克彦 訳

出版社 晶文社

すばらしく詩的で、ものすごく読みにくい。…と思って、まずあの名作『たんぽぽのお酒』を読み返してから読む、つもりで、数年積んどいたのだった。たんぽぽのお酒 の、ダグが主人公、12歳だったダグが14歳になろうとしている夏の終わり。

たんぽぽのお酒 は、ブラッドベリ37歳のときに世に出した作品だそうだ。そして、もともとはこの『さよなら僕の夏』の母体となった話とともに『夏の朝、夏の夜』として書かれた、のだったと、ブラッドベリ本人の後書きにある。長すぎると出版社に言われたそうだ。半世紀以上の時を経て、第二部が完成する。

作家の年齢のせい?過ぎる時間、命の終わり、老人と少年たちとの争い、時の流れを止めようと大時計を壊す少年たち。時の流れを受け入れる、少し大人への道を踏み出す、少年たち、の、物語と、受け止めていいのか?

若かった私が、書店でその頃流行っていた学者の“俺には俺の生き方が”どーしたようなタイトルの本を見て、ゲ、と思って後ろを向いたその本棚に『たんぽぽのお酒』原題dandelion wineがあったのだ。晶文社文学のおくりものシリーズを手にした最初だっただろうか。

『さよなら僕の夏』原題Ferewell Summerは、ブラッドベリらしく、と言う以上に極端なほど詩的に美しい表現が散りばめられている。書きだしの文章を引用しよう。息を吸ってとめる、全世界が動きをやめて待ちうけている、そんな日々があるものだ。終わることをこばむ夏。

始まりだけでこれですよ。

小説として成功しているか?それについては訳者もそれぞれにおまかせしよう と言っている。

老人の時と、ダグの時が交錯する、シーンがある。私にはまだ年の取り方が足りないのか?スコンと理解するには。やっぱりもう一回たんぽぽのお酒を読みなおすこととしよう。

 

LOVELESSラブレス

ラブレス著者 桜木紫乃

出版社 新潮社

友人から貸し出されたもの。表紙・タイトル・作家名、そして帯には“突然愛を伝えたくなる本大賞”とあるところも、書店で見かけても私は避けて通ったかと思われる。が。

45歳の小夜子と従妹の理恵、小夜子の母・里美、理恵の母・百合江、さらに百合江と里美の母・ハギ。始まりは、久しぶりに百合江の家を訪ねると、百合江は位牌を手にして病の床についていたところから。そこには有名な女性演歌歌手のCDが積み重なっていた。

3代の女性の生き方が、現在と過去の時点を行き帰して描かれるので、しばらくその人間関係がつかみにくい。

一気に読める。歌がうまかった百合江は、地方回りの一座の歌手になる。昭和のキャバレー全盛時代。

先日、タイガースメンバー全員そろって40数年ぶり再結成、2013年12月27日、東京ドームでコンサート、を、BSで放映したものを見た。法事で帰ってきていた妹とともに。ジュリー沢田研二はますます横幅が増しているが、明らかに今のほうが艶も幅もある歌声で、うまい。前回の再結成時にはいなかったトッポ加橋かつみの高音が入って、ああタイガースだと思う。長く人見豊という一般人、学者だったピー瞳みのるが、走り回って歌う。一人若々しいけれど、この人は大きな病気を二度しているのだ。車椅子の岸部四郎も登場。森本太郎作詞作曲の歌が昔からあったのか。かつてサリー岸部おさみだった岸部一徳と沢田研二がすっと第一線で活動しているからこれだけのことができるのだろう。

百合江がャバレーで歌った歌の中に出てくる。ザ・ピーナッツや沢田研二の曲が。

一座の女形との間に女の子を産んだ百合江の人生。

70過ぎで老衰と判断されるような人生。その、人生の最後が近いであろう時が、なんと幸せに満ちているか。

作家になっている理恵が、その祖母や母の人生を書こうとしているシーンがある。そしてその結果がこの小説になった、というしくみなのだろう。

2013年『ホテルローヤル』で直木賞受賞というこの作家、父親が釧路で実際にホテルローヤルというラブホテルを経営していたのだそうだ。

私事だが、今日が母の四十九日。ひとり片付け事をしていると、あちこちから古い思い出が現れる。老いた親戚が今の私よりも若かったころ、正月に集まった写真とか。個人の事情も絡まって、真夜中に最後はびいと泣いた本でした。

 

深い疵

513rFQT9UJL__SX230_著者 ネレ・ノイハウス

創元推理文庫

元アメリカ大統領顧問だった著名なユダヤ人の老人が殺される。司法解剖の結果、なんとその被害者はかつてナチスの武装親衛隊員だったことがわかる。

友人からの借り物だが、ドイツで評判になったシリーズらしい。ドイツ人の名前を覚えられない。そもそもドイツの推理小説を読んだ覚えがある?一気に読み進むならまだわかりやすいだろうが、ちびちび読み進んでいると、誰?と登場人物紹介を見直すこと何度だったか。

次々に殺人事件が起こる。

とにかくオリヴァー・フォン・ボーデンシュタインという名の主席警部(貴族の血筋、いかにも)と、ピア・キルヒホフという名の女性警部のコンビが、その事件解決に臨む。

途中まではこの話何なんだと思っていたが、読み進みほどに面白くなってくる。でも名前はやっぱりこんがらかる。ドイツ語を知っている人にはそうでもないのかな。

もしかして読んでみようかと思うかもしれない人のために、これ以上の内容説明はいたしません。

稀代の悪女、ってこういうことだな、という人物が出てくる。

読み終えて、ちょっと前のほうを読み返してみると・・・ず、ずるいよ!作家のひっかけというか、初めからゲームを仕掛けたね、と。誰かしらに疑いを持つような書き方になっている。

シリーズの3作目を先に翻訳紹介したのだそうで、ピアの恋愛ばかりか主席警部のおいおい!な状況もはさまれたり、シリアスドラマの中のちょっとしたお遊びあり。ドイツ人のユーモアってなんだか。

4作目の『白雪姫には死んでもらう』の翻訳も出ているそうで、このオリヴァーとピアのコンビをまた見てみたい気がしている。

まほろ駅前狂騒曲

曲まほろ駅前狂騒著者 三浦しをん

出版社 文藝春秋

一人で過ごすクリスマスイブからクリスマス当日にかけて、読みました。後半数回ケラケラ笑い。

シリーズ第三作なので、状況を知っていた方が分かりやすいお話、だけど、旧ブログのほうにまほろ駅前シリーズの第一作について書いたので、良かったら参考にしてください、読んでいない人は。

もう、行天は松田龍平の姿でしかイメージできない。多田は瑛太の姿にはならないのだけど、読んでいる間。

行天の生物学上の娘であるはるちゃん(ただし、そんなことをはるちゃんは知らない)を預かることになった便利屋の多田と、行天。そこに、以前の事件からかかわっている、バスが間引き運転をしていると主張してやまないじいさん、およびその仲間がなぜか絡んで、うさんくさい無農薬野菜栽培グループに(結果的に)立ち向かう。

行天がね、チャーミング。どんな子供時代を過ごしたかも、明かされる。

今、10月30日初版のこの本を買うと、2か所の刷り間違いが付いてきます。一か所の分はちゃんと訂正の紙が付いてるけど、残念、もう一か所には気がつかなかったんだね。

事情と都合により、今回は短い案内にて失礼。前作と同じく、瑛太・龍平で映画化決定だって。

銀の匙

匙銀の著者 荒川弘

出版社 小学館

 

中勘助のあの繊細な幼年期の思い出の、お話ではありませぬ。

八軒勇吾クン(進学校だった中学から北海道の農業高校に入学した)を主人公とする、土と労働と汗と糞と、いろんなものにまみれた高校生活物語。

机の上でのお勉強は、当然ほかの生徒よりできて、総合点ではトップなのだが、一つ一つの科目において、どれひとつとしてトップを取れない。つまり周りは皆、一つの道を目指してこの高校に入った、いわばすでにプロなので。魅力的な脇役たちがぞろぞろ。

父母の期待に応えられず、自分の道を見つけ出せず、というまことによくありそうなイマイチ優等生の、成長物語、であるらしいこれ、一巻を読んでケラケラ笑い、今出ている9巻中、7巻まで読んでしまった。2012年マンガ大賞、アニメになり、また、実写映画にもなるという。

北海道の農業高校だからなあ。鹿児島の農家と規模が違うからなあ。農家を継ぐ、という気持ち満々の、高校生たちの集団。酪農なんか、そりゃあ家族で作業するよなあ。

作者が実際に農家生まれの農業高校卒業生だそうだ。かつ、実体験を基にした『百姓貴族』というエッセイマンガも並行して書いているということだ。

で、なんで“銀の匙”なの?8巻まで読むとその由来がわかるらしい。

今では別宅庭でちょっとだけ芋とかタマネギとか育て、欅の大木から落ちた枯れ葉で庭一面がおおわれているのを見て、おお、こうやって自然に土が肥えてきた、と感動を覚えるわが身は、進学校落ちこぼれ出身である。むふふ、わかるぞ八軒クン。そしてすごくうらやましいぞ農高。だが、酪農家の家族が見るとそりゃあ全く納得のお話なんだろうなあ。

八軒、もう少し成長に時間をかけて、マンガを長続きさせてほしい、のだけど。