恋するシェフの最強レシピ

http://hark3.com/chef/
監督 デレク・ホイ(許宏宇)
出演 金城武 周冬雨

おじさんになった金城武と、若いにしても童顔の周冬雨の、王道ラブコメ。おっちょこちょいだが腕利きシェフのヒロイン、彼女が働くホテルを買収に来た実業家2代目、彼はちょっとでもまずい食べ物は飲み込めずに吐き出してしまう食通。インスタントラーメンを作るにも秒単位で時間を計って最適のタイミングで食べる(トランクに詰まっているインスタントラーメンは出前一丁でありました)。

周冬雨がかーわいい。美人か?というとまあそうでもないが、チャーミング!おいしいものに眼の無い金城二代目おぼっちゃまおじさんが、彼女の部屋に転がり込んでもひたすら食に対する欲しか存在しない、のもなんだか不思議もない。

映画館で観たかったのだけれど、さすがにもうあきらめて、久しぶりにレンタルいたしました。良い感じにおじさんになっている金城武を見ると、オジサンになることを許されないジャニーズのみなさんのことを思う。

金城武のことをお気に入りのピーター・チャン陳可辛がプロデュース。ヒュー・グラントとか、そういう感じの、クリスマスに見るのに良さそうな映画。とは言え、カップルで見るには、金城武は少し髪が薄くなりかけていても素敵だし、周冬雨は超チャーミングなので、比べてしまっては・・・ちょっとね。

映画館で観たかったなあ。おいしそうな食べ物も。台湾版のポスターのほうが好きだったし。

彩雲国秘抄 骸骨を乞う

著者 雪乃紗衣
角川文庫

ライトノベルという分類なのだろう。時に、正しくないかもね、という言葉の使い方があったりもするし、そもそも若い子たち風の会話言葉がなにかとあるので、ん?と引っかかるのだよ年寄りはさ。

が、小野不由美の『十二国記』シリーズや上橋菜穂子の『守り人』シリーズ、阿部智里『八咫烏』シリーズなど、もともと子供向け、若いゲーム好き層に向けたかと思われるライトノベルの中から、良きファンタジーが生まれているよねえ。
で、たまたまこの作家の『レアリア』が、友人宅から我が家にやってきて、かーなり読みにくい、状況がつかみにくいお話であったにもかかわらず、魅力的に思えた。ので、まあ日本ファンタジー界では知られた作品であるらしい『彩雲国物語』を読み始め、まだシリーズ5までしか読んでいない、のに、友人宅から今度はこの『骸骨を乞う』がやってきた。

『彩雲国物語』を知らない人のために。昔昔中華などこかの国、貧乏貴族の娘紅秀麗という子がいました。昏君(バカ殿)と呼ばれている王に仕えることになり、賢く根性ある秀麗は、そのうち国で初めての女性の官吏になり、荒れた国で戦い始め~。

シリーズ途中までしか読んでいないのに外伝的なもの読むから、知らない名前もいろいろ出てきて、なにかと戸惑いながら。
生きて、戦って、滅びに向かう。まあそういうお話。
ですが、わたくしまことに久しぶりに、びいびい涙しながら読み進みましたよ。途中で、じぶんどこか病んでるか?と疑問符を抱くほどに。

読み終わって、いや、関係性が良くわからないままだったからもう一回読んでみよう、と始めから読んでいくと、またぼろぼろ涙してしまう。友人から来たのは単行本だったのだが、近所の書店で文庫を見かけたら、一遍足してあるという。文庫下巻を買い、その最後の部分を読み、ここ数日で一年分の涙した感ありますぜ。

日本のファンタジーが好きな人なら、とっくに知ってるんだろうけれど、作家の名前が雪乃紗衣、えーと、と思った私が悪うございました。存じ上げてうれしゅうございます。

日日是好日

監督 大森立嗣
出演 樹木希林 黒木華 多部未華子

https://www.nichinichimovie.jp/
大森立嗣という監督の名前を最初に観たのは、その弟の大森南朋が出ていた『赤目四十八瀧心中未遂』だったせいだろう、こんな静かな映画を撮っているんだ、といいうところに驚きを感じる。
樹木希林さんは、年齢を経るごとに魅力的になっていった稀有な女優さんであり、この人の代わりはいない。

まあそういう映画です。って大雑把過ぎますが。

生け花でも茶道でもほかの伝統的な習い事のいろいろが、結構な費用が掛かるものだよね。普通のおうちの子だったように見える、そう収入が多かったはずもない状況の若い女性が、ずっと続けていけるものなのかな、と、余計なことを考えるビンボー人なのでしたが。

あんまり丁寧に生きてこなかったなあ、と反省しても、今からこのガサツは改まらない気がする、けれど。

斬、

http://zan-movie.com/
監督 塚本晋也
出演 池松壮亮 蒼井優 塚本晋也

こんなに理不尽三昧な映画を、前に観たのは何だっただろう?と、映画館を出て歩きながら思っていた、のだが、そうだ例えば同じ塚本監督の『野火』だ。
池松壮亮は殺陣ができます。皆様にお勧めは・・・なかなかできません。
江戸末期、世が変わろうとしている、浪人の男はここで世のために何事かを成すことを思って江戸に出ようとしている。そこへ強い男が志を同じくする仲間を求めて現れる。
音楽は、黒沢大作映画のようだ。
が、あー戦うとは戦争とはつまりそういう、ということを、始まらないうちに無残な形で。
3週間で撮った作品なんだって。

蒼井優?この場合、どうなんだろう。二階堂ふみぐらいの年齢だったのでは?

モリのいる場所

http://mori-movie.com/
監督 沖田修一
出演 山崎努 樹木希林 加瀬亮

94歳の画家モリ(熊谷守一)、その妻秀子76歳。昭和49年の東京に、姪と暮らしている。さほど広いわけではない土地だが、こんもりと木が茂り、小さな森のような庭、その一角には深く土地を掘って池が作られ、魚が住み着いている。
地面に横になり、ずーっと延々と蟻の行列を眺めているモリ。

熊谷守一の、後年になるほど単純化され、ほとんど抽象のよう、もしくは子供の絵のよう(昭和天皇が、この絵は何歳の子供が描いたのか?と問うシーンは、きっと事実だったのだろうと思っていたら、有名なエピソードであるとか)な作品を、私はとても好きだが、なるほど、こんな風に観察していたのか、と納得する。

妻が着ている刺し子の普段着は、演じた樹木希林さんの私物であるとか、あれ、買ったらお値段張る品だよねえ。地味に見えても。
テレビではドリフが高視聴率を誇る時代、なんだあのタライ…。
とか、宇宙人…。

観客の年齢層の高かった小さな劇場、最後の字幕に林与一と出てきて、ん?いたっけ?と思ったのだがそうか天皇陛下。

 

その犬の歩むところ

著者 ボストン・テラン
文春文庫

ギヴという名の犬が主人公。と言っても、語り手は別にいる。9.11の後イラク戦争に志願、戦友を失い、自分も怪我、深く傷ついた心は自殺に向かいながら車で走っていた。危ういところで傷だらけの犬に出会い、その犬ギヴを助ける、ディーン・ヒコック。

ギヴが旅して生きてきた場所、そこにいた人間たち。

ひどい、悲しい出来事も起こる。けれども。

戌年に読んだ良質な犬の物語。ボストン・テランのものは「神は銃弾」「音もなく少女は」に続いて3作目。タイトルがいつも詩的なのは、原題がそうなのかな?ボストン・テランという人は覆面作家なのだそうだ。
犬好きな人ならもちろん、たとえ猫派でもウサギ派であろうとも、終わり近くにはウルウルすると思うよ。

タクシー運転手 約束は海を越えて

http://klockworx-asia.com/taxi-driver/
監督 チャン・フン
出演 ソン・ガンホ トーマス・クレッチマン ユ・ヘジン

1980年光州事件。聞き覚えはある、というぐらいのものだ。軍部が力をもって、民主化への動きを阻止しようとした、と。
日本はこれからバブルへ向かおうという太平の世であった。ので、隣の国で起きていた、戒厳令発令などという言葉がなかなか腑に落ちない。

ともかく隣国の光州では、学生をはじめとする民衆と軍部の衝突により、公式発表とは実態の異なるかなりの数の死傷者が出た1980年5月、という時があったのだ。

ソウルのタクシー運転手マンソプは、妻を亡くして女の子と二人暮らしをしている。暮らしは楽ではない。家賃を滞納している。そんな中、通行禁止時間までに光州に行ったら10万ウォン払う、という話を聞き、その契約をした運転手を出し抜いて、ドイツ人記者を乗せ。
観ているこちらは、途中までは、そう気分は乗ってこない。そういう、私と同じような観客殿、頑張ってもう少し先まで観よう!

日本に滞在していたドイツ人記者が、実際その時期に韓国に渡って、困難な中取材した、そんな人がほかにもいて、この事件が世界に知られることになったのだそうだ。
事実をベースにしているという。

だらしないおっちゃんのソン・ガンホが、途中からえらくかっこよくなっていく。うまいね、今更言うまでもないけど。

韓国映画の熱量は、やはりすごい。

29歳問題

監督 キーレン・パン
出演 クリッシー・チャウ ジョイス・チェン エレイン・ジン

2005年香港、化粧品会社の有能なキャリアウーマンであるクリスティは、もうじき30歳を迎えようとしている。長い付き合いの恋人はいるが、結婚というところにはなかなか進まない。
仕事が認められ、昇進する。しかしそれはストレスを強く抱え込み余裕がなくなることであり。そして父親の認知症が追い打ちをかける。早々に部屋を出なければならない事情まで出来。
家主の手配で、しばらくパリ旅行で留守にするティンロッという女性の部屋に住むことになる。
その部屋にあった日記を読み進むうち、クリスティとは全く違う人生を送っているティンロッの、生き生きとした姿が見えて。

ウォン・カーウァイ監督の『花様年華』のポスターや、レスリー・チャンの歌声、ロックグループBiyondの黄家駒(日本でのバラエティー番組収録中の事故で亡くなってしまった人)とか、香港芸能ファンが、おっ、と思うもの、そしてもっと詳しい人にとっては、ラップユニット『軟硬天師』のエリック・コッ(金城武主演の「初恋」の監督)とジャン・ラムが出演しているなど。

もともと、監督のキーレン・パン自身の作・演出・主演による舞台劇だそうで、最後にその舞台のシーンが出てくる。
たぶん、舞台で一人二役で演じられると、部屋の持ち主のティンロッとクリスティはパラレルワールドの同一人物、という感じがもっと感じられるのだろう。

クリスティとティンロッを足しても足りない私の年齢では、ちょっと脇のところで二回ほどウルッと来てしまった。はは。私は評判を目にしていたから楽しみにしていた。でも、地方都市には香港映画情報なんて届かないのね、悲しい人数でした、館内。

カメラを止めるな

http://kametome.net/index.html
監督・脚本・編集:上田慎一郎
​出演:濱津隆之 真魚 しゅはまはるみ 長屋和彰 細井学 市原洋 山﨑俊太郎 

Netで噂のこの映画、超低予算で作られたこと、元は舞台劇だったこと(そしてその監督かだれかに盗作と訴えられているらしいこと)しか知らずに観た。それが正しい。
なのにそんな作品を紹介するってどうよ。

血みどろが苦手な人にはお勧めできない。が、あまりの理不尽な血みどろぶりに、かなり初めのあたりから笑いをこらえられない私であった。そこはまだ笑うところではなかったが、あまりにあまりなんだもん。〇〇ビの動きはへたくそだし。

で。

途中から観客が笑いだした。

いや、よくできてる。観客まばらなことが多いミニシアターの補助席でしたぜ。

そんなわけで、なるほどねえ。どんなわけだか知りたいお方、どうぞ。

烏に単は似合わない

著者 阿部智里
文春文庫

実はこの作家の第二作である「烏は主を選ばない」から読み始め、「黄金の烏」「空棺の烏」と一気に読み、もう一度ざっと読み返し、そして一作目、という順序で読んでしまった。なぜなら三冊は友人からの借り物だったから。
いやいや、とっても好みのものを貸してくれてありがとう。巻末の解説にもあるように小野不由美の『十二国記』シリーズや上橋菜穂子『守り人』シリーズなどが好きな人、物語が好きな人、まだ読んでいなかったらお薦めですよ!

八咫烏 という一族が住んでいる世界、山内と呼ばれるところで起こる事件。日本の平安時代あたり?いやもっと後?の異世界朝廷。なにしろ私は二作目から読んでしまったから、この金烏とされる若宮と、いやいやながらその側仕えとなった雪哉が共に、うつけ、ぼんくらとみなされているが実は、という設定、昔から好き!で。

権力争いが繰り広げられる、ファンタジーにして推理小説の性格を持つこのシリーズにはまり、第一作目を読まずにいられるか、となったわけだが、なんとこの一作目は、作者二十歳の作品ですと。若宮のお妃選び、というまことにありがちなテーマながら、巧緻に編み込まれた権謀術数人間の裏側。この視点を二十歳の大学生が…特にあせびの君という、ほかの姫君たちより幼く世間知らずの姫君の造形。
まいるね。2012年の松本清張賞受賞作だそうだ。そこそこブンガクショウジョ育ちだった自分の二十歳を思い起こすにまったく!

コミックになったそうだ。映像化もあるかな。