「絶望の国の幸福な若者たち」古市憲寿


zetubouno出版社: 講談社 (2011/9/6)

日本という国はつくづく若い人間を大事にしない国だと思う。

昭和時代、第二次世界大戦末期に実施された、戦死を前提とした特攻隊(特別攻撃隊)に駆り出されたのは、10代から20代の若者たち。若者の命を爆弾1個分と引き換えにするという、とんでもない作戦を考え付いたのは、当時の大人たちでした。

平成の現代においても、国の財政破綻のしわ寄せは若者にきています。

パート、アルバイト、派遣、契約社員など、安くてクビにしやすい労働力として、非正規雇用の若者が増え続けている。2011年には15~24歳非正規比率が男49.1%、女51.3%というデータもあります。( 「社会実情データ図録 Honkawa Data Tribune」本川 裕
会社都合でいつクビになるか分からない非正規社員という身分は、若者たちに結婚や子育てを含む将来設計を立てにくくしています。国民年金を掛けられる余裕はないし、そもそも将来社会保障が機能しているかどうかも保証がない。

7月5日、大飯原発3号機は発電を開始しました。原発は安全性の問題も放射性廃棄物の処理も、すべて先送り。若者たちが原発のリスクをこの先ずっと背負い、将来彼らや彼らの子どもたち世代が何とかすればいいだろう、って一部の大人たちは考えているのです。

日本は若者が未来に希望の持てない国になっている。それは確かだと思う。

しかし、社会学者古市憲寿氏は、「絶望の国の幸福な若者たち」の中で

「2011年現在、若者たちは過去の若者と比べても、『幸せ』だと思う」

と言っています。
「絶望の国の幸福な若者たち」は、この26歳の社会学者によって書かれた若者による若者目線の若者論です。
著者は大量の資料やデータをもとに、過去の若者世代やこの国の近代化を検証し、現代の若者の「幸せ」を立証しようと試みています。

驚いたことに、 2010年の時点で20代の70.5%が現在の生活に満足しているという「国民生活に関する世論調査」があるそうです。
この満足度は70代以上の次に20代が高く、40代から50代はぐんと低くなる。若者の親世代の方がよっぽど日々不満を抱きつつ、生活していることになるようです。

とは言え、この満足度は未来に希望が無いからこそ高くなるとも考えられる。

「もはや自分がこれ以上幸せになるとは思えない時、人は『今の生活が幸せだと答えるしかない。

というわけです。

読み進めるうちに、この国の現状は若者世代だけに特に厳しいわけでなく、どの世代にもまんべんなく世代内の格差があること、大多数の一般人にとって、老いていくほどに暮らしにくくなる社会であるということがはっきりしてきます。
まあ、既にみんなが気が付いていることではあるけど・・・・

私自身も将来のことを考えると気持ちが凹むポジションにいるので、何とかささやかな幸せを身近なところに作り、今の生活に満足しようと考えたりしています。中高年だって結構若者と似たような状況です。
でも「今の生活に満足していますか」と聞かれたら、「満足している」とは、まだ答えたくはない。
何が起こるか分からないのが世の中さ、って思っています。
今の若者たちの中から 10年先、20年先、日本を変えるような人物が現れないとも限らない。
若者を、いや若者だけでなく、国民を大事にする大人の国になっているかもしれない。
根拠はないけど、希望は持っています。

著者はクールなヤツなのか、ただの皮肉屋なのか、クールで皮肉屋なのか、最後にこうも言っています。

「『日本』がなくなっても、かつて『日本』だった国に生きる人々が幸せなのだとしたら、何が問題なのだろう。国家の存続よりも、国家の歴史よりも、国家の名誉よりも、大切なのは一人一人がいかに生きられるか、ということのはずである」

もろ手を挙げて同意はできないけど、最近やたら聞こえてくる「国益」「国益」って言葉をきくと、「国」より大事なのは「人」でしょ、って私も思います。

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