「整形前夜」穂村 弘


seikei出版社:講談社 (2012/7/13)

『現実入門』を書いていた穂村弘さんも、結婚という生々しい現実を手に入れ、いまや「現実上級」資格取得者。
もはやイノセントな少年のままではいられなくなったからか、この『整形前夜』には、
「「今」をきっちり生きることができないために、そこから先の未来が次々に腐ってゆく。(非エレガンスのドミノ倒し)」
だとか、
「普通に真面目に働き続けることで幸福になれた時代は終わって、同じ道が今では「絶望」に繋がっているのではないか。(「普通列車「絶望」行」)」
なんていう、極めて現実を見据えたセリフも出てきたりします。
今回は妄想の天使も現れない。
ただし、のっけから、彼の留守中に部屋を整頓してくれるという「妻」が登場します。「結婚したんだもん!」というアピールでしょうか?いや、単にノロケたいだけでしょう。
妻と古本屋めぐりをしていることとか、一緒にグアムに行ったこととか、もう臆面もなく書いちゃっています。「人生はぴんとこない戦いの連続だ」と、怯え戸惑いながらも、しあわせなんですね。きっと。

それはさておいて、「中身がどんなものでもこれなら即買う、という傑作タイトル」の話が面白かったので、私も真似して、これまで読んだ本の中からタイトルが気に入ったものを書きだしてみました。
が、・・・・案外、思い出せないものです。

「幽霊の2/3」ヘレン・マクロイ
「時計じかけのオレンジ」アントニイ・バージェス
「幻の女」や「私が死んだ夜」/コーネル・ウールリッチ(=ウィリアム・アイリッシュ)
「10月は黄昏の国」/レイ ブラッドベリ
「月は無慈悲な夜の女王 」/ロバート・A. ハインライン
「笑う警官」/ペール・ヴァールーとマイ・シューヴァル共著
「箱男」や「壁」/安部公房
「限りなく透明に近いブルー」/村上龍
「摩天楼の身代金」/リチャード・ジェサップ
「すベてがFになる」/森 博嗣
「潜水服は蝶の夢を見る」ジャン=ドミニック・ボービー
「意思ばかり生む夜」/小西 啓
「ハルビン・カフェ  」/打海 文三
「あなたの人生の物語 」/テッド・チャン
「ここがウィネトカなら、きみはジュデイ」大森望編
「冷たい方程式」/トム・ゴドウィン

穂村弘さんの本もタイトルに魅かれます。「世界音痴」や「本当はちがうんだ日記」も好きなタイトルで、中身もタイトルのイメージを裏切らない。
しかし、この『整形前夜』はちょっと予想外でした。
タイトルから私が想像したのは、常日頃、素敵男子になることを熱望してやまない作者のことだから、ついに整形したか!小心者だから、たぶんプチ整形に手を出したに違いない、というものでしたが、全くハズレ。
『整形前夜』はノーマ・ジーンがマリリン・モンローに変わる、その前夜について語ったものでした。
「男たちは多くを期待しすぎるけれど、私には応えてあげることができない。彼らは、鐘が鳴るのを、汽笛が鳴るのを期待する。でも私の体は他の女性たちと同じなの」
マリリン・モンローの言葉だそうです。
「分かる、分かる」と、言ってみたい。

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