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【元記事】汚染水が増加 海側の地下水、濃度が高く

毎日新聞

原子炉建屋側へ移送せざるを得ないため

 東京電力福島第1原発で、一連の放射性汚染水対策が効果を発揮せず、逆に全体の汚染水量を増やす事態に陥っている。海側に掘った「地下水ドレン」と言われる井戸から地下水をくみ上げ、海へ放出するはずだったが放射性物質の濃度が高く、原子炉建屋側へ移送せざるを得ないためだ。今年は汚染地下水が海へ流出するのを防ぐ「海側遮水壁」(総延長780メートル)が完成したことを受け、東電は「リスクを大きく低減できた1年だった」と総括するが、一進一退の状況は変わっていない。

 東電は10月、地下水ドレンから地下水をくみ上げて海へ放出する作業を開始したが、5本ある井戸のうち4本の井戸水で、高濃度の放射性物質や塩分が検出され、海に流せなくなった。一方、海側遮水壁で流れをせき止められたため、地下水が増加。その水圧で、海側遮水壁が約20センチたわむトラブルも発生し、東電は補強工事をするなどの対応に追われた。

 東電は、地下水ドレンや陸側の「サブドレン」と言われる井戸から地下水をくみ上げることで、1日300トンずつ増えていた汚染水を150トンに半減できるとしていたが、原子炉建屋側へ移送している汚染水は1日最大約400トンに上り、逆に増える結果となった。

 東電第1廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者は記者会見で「(汚染水増加で)タンクを余計に作る結果になってしまったが、外部へは決して漏らさない」と述べた。

 東電は、2016年度中には地下水の建屋への流入量を1日100トン未満に減らし、放射性物質を除去する多核種除去設備「ALPS」を稼働させることなどによって、東京五輪が開かれる2020年内に、汚染水の増加量をほぼゼロにすることを目指しているが、課題を積み残す結果となった。東電は廃炉作業全体については、2041〜51年の間に終えるとしている。【酒造唯】