幻想の書

著者 ポール・オースター

新潮文庫

映画『スモーク』や『ルル・オン・ザ・ブリッジ』の脚本で先にポール・オースターという名前を知ったのだったかなあ。映画作品が好きなのに、あまり小説を読んでいない。久しぶりに読もうと思ったのは、TVの本紹介番組で、司会の鈴木保奈美が、ポール・オースターで一番好きなのは『幻想の書』だと言っていたから。

無声映画の時代に忽然と姿を消した、喜劇映画の監督・俳優だったヘクター・マン。飛行機事故で妻子を失い、失意の底にあったジンマーが、そのヘクターの映画と出会い、『ヘクター・マンの音なき世界』という彼の映画の研究書を書く。そしてある日、ヘクターの妻を名乗るフリーダからの手紙を受け取る。ヘクターが会いたいと言っている、と。そしてまたある日、アルマという女性が現れ、ニューメキシコの、病床にあるヘクターのもとに連れて行かれることになる。

複数の誰かの人生が重なって描かれ、一つ一つが独立した映画になりそうでもある。ヘクター・マンの作品とされるものも、実際に観られるものなら観たいと思わせる。

なかなか読み進めなかった、読むのに時間がかかったのだが、誠に読み応えのある優れた小説でありました。今年の4月に亡くなったんだったか。『スモーク』を撮った残りのフィルムで6日間で作った映画『ブルー・イン・ザ・フェイス』ってのがあるんだって。スモークのハーヴェイ・カイテルのほか、ルー・リード、マイケル・j・フォックス、マドンナとか出てるんだって。DVDは出ているけどリージョンコードが日本と違うんですと。まあもちろん日本語字幕も無いよね…。

そのままの翻訳なのだけれど、『The Book of Illusions』という原題のほうが合う気が。

 

コメント (2)

atcon2024年8月14日(水曜日) at 2:04 AM

ポール・オースター、何年か前「ガラスの街」を読みました。繊細な小説という印象が残っていますが、感想を書き残しておかないと忘れてしまいますね。

春に購入して、1ページも開かれることなく、積んだままの分厚い本が3冊。「息吹」「神前酔狂宴」「関心領域」年内にこのうち1冊は読んで感想を書きたい。

aar2024年8月14日(水曜日) at 11:47 PM

ちょっとオースターを続けて読みたくなっているのだけど、おそらく20年以上前に読んだうちの本棚のもの、ひとかけらも覚えていないので、ひっぱりだしてみる所存です。

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