犬がいた季節
著者 伊吹有喜
双葉文庫
高校に住み着いた白い犬。美術部の早瀬光司郎の席にいたことから、コーシローと呼ばれることになる。昭和63年度の卒業生たちのエピソードに始まり、令和元年の夏までの、高校生、そして卒業したかつての在校生たちの物語。時にコーシローの視点からも語られる。
この作家にしては、なんか普通の青春小説?と、ちょっとした残念な感じで読んでいたのだが、そうでもない仕掛け、その年の流行りの歌、出来事がそれぞれに挟み込まれる、例えば第1話だと映画『トップガン』、で、あ、その頃自分は、と読者もその季節に戻ることになるのだ。
第2話にはF1グランプリが出てくる。マクラーレン・ホンダのアイルトン・セナ、ウィリアムズ・ルノーのナイジェル・マンセルだって!中島悟、鈴木亜久里!私はその頃も知ってはいるけど、もう少し後の、シューマッハやハッキネンの頃、頑張って夜中のテレビを見ていたー、もうすでに若すぎない年代で。そしてその番組のスタッフとして名前が出てくる人の親族が近しい女性だったこと、などに思いが広がる。まんまと仕掛けに引っかかることになる。阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、ノストラダムスの大予言…。
進学校であるらしいのに、Howeverを“永遠にする方法”と訳す生徒がいるかあ、と思うがhow toとforeverをくっつけてそうなったエピソード気に入っています。
「令和の昭和感」という表現に嵌りました。 なんかそういう感じ、日頃、感じること…