なでし子物語

著者 伊吹有喜

ポプラ文庫

一日に数ページしか進まない本の合間に、このところ伊吹有喜が挟まってそれは一気読みしている。『ミッドナイト・バス』『カンパニー』など。そして、まあまあ分厚いこの本。間宮燿子という母親から育児放棄された子どもと、もっと小さい遠藤立海という旧家の坊ちゃんが出会って。

この物語、今のところバーネット夫人の『秘密の花園』を日本を舞台に置き換えた風である。林業を営む遠藤家の大きな家、常夏荘に住む病弱な立海、その遠藤林業に勤める祖父に引き取られた燿子。立海は妾の子であり。

燿子の祖父間宮勇吉、立海の年の離れた兄にあたる龍一郎(故人)の妻、照子、家庭教師の青井、それからハムイチ・ハムスケ兄弟など、魅力的な脇役たち。まことにイラっとする訳知り顔女性教師などもいる。

1980年という、特に林業などを生業とする場所ではまだまだ男性優位の、旧家の、ありがちな状況の中、青井の言う“自立、顔を上げて生きること、自律、美しく生きること”言葉を知り、少しずつ変化する精神。

2012年に刊行された本書のあと、『地の星 なでし子物語』『天の花 なでし子物語』そして今年刊行の『常夏荘物語』とある。この物語がどこへ行くのか追いかけてみる所存です。

 

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