彼女たちの部屋

著者 レティシア・コロンバニ

出版社 早川書房

パリで弁護士として活動している女性、ソレーヌは、ある日、判決が出た直後のクライアントの自殺を目撃する。そのことで(もう一つ、男との別れを引きずっていることも)鬱になり、休職する。医者は彼女に、恵まれない女性たちの代書人というボランティア活動を勧める。気が向かない彼女だったが、さまざまな理由で住む場所の無い女性たちの保護施設で、代書人を務めることになる。家庭内暴力、故国のひどい因習(女性器切除)、麻薬中毒etc.から逃げてきた女性たち。

それと並行して描かれる、1920年代に生きた救世軍女性ブランシュ・ペイロンの人生。貧困、差別の中で生きる女性たちの居場所を作るために、戦い続ける。まだまだ女性は権利を持たない時代、結婚し、6人の子供を夫と協力しながら育てつつ、病を押して挑んでいく。

ソレーヌは、女性たちの外側から補助するという立場から、次第にその内側で共感を覚えながら代書するように変わっていく。

そして、長い時間とたゆまぬ努力と協力への呼びかけの積み重ねの上に、ブランシュが創った女性会館が、現代のソレーヌが出入りしている場所であることがわかる。実在した女性らしい。

なーんて書き方ではこの本の魅力を伝えられないのだが、これ、某公共施設の図書コーナーで一気読みしたもので手元になくて。同じ作者の『三つ編み』は、困難な状況にある女性たち本人を描いていたが、こちらは彼女たちにかかわっていく立場から描かれる。少し気持ちが落ちているときに読むと、ちょっと私も頑張ろう、と思える気がする。ブランシュのパートを読みながら、実際にホームレスの人たちに手を差し伸べている知人を思った。

 

コメント (2)

atcon2025年2月1日(土曜日) at 10:48 AM

また読みたい本が増えそう。
未読の本がいくつも積まれている状態なのに。
でも読みたい。

aar2025年2月1日(土曜日) at 7:47 PM

サンエール1Fの図書コーナーで読めます。あとは断捨離を進めて生活縮小、と思っている年代にはブランシュのバイタリティが、もう少し若い、キャリアを重ねてきたけれど…の年代にはソレーヌのパートが響くと思われます。

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