spring
著者 恩田陸
出版社 筑摩書房
バレエマンガは昔からたくさんある。いにしえの『アラベスク』など、いくつか読んでいる。バレエ小説は?私は初めてだった。
バレエのワークショップで、JUNには目に留まって仕方がない参加者がいた。HAL。純は両親がバレエ教室をやっている。春はある日バレエの側から捕まえに来た、ような、バレエの師との出会いがあり、8歳から始めた。いわゆるバレエの申し子。いや別に天才と努力の人などと、単純に描かれたりはしない。
萬春よろず・はる 男性。バレエダンサーにして若い時から振り付け家である春を巡り、純を始め、叔父の志田稔、滝沢七瀬、そして春本人が語る形で描かれる。それ以外もそれぞれ魅力的な出演者たち。
私の身内に踊る人がいたから、バレエも少しは観ている。どちらかというとコンテンポラリーが好きだ。ずいぶん昔のことだがこの本にも出てくるジョルジュ・ドンやショナ・ミルクの公演を見たこともある。そのレベルの人間が一番楽しめるかもしれない。七瀬が作曲し春が振りつけた作品を観たい!存在しないけど。あたかも実際にあるもののように思える。“紅天女”なんてのも出てくる。話の中でもまだ創られていないけれど『砂の女』を映画化の時の武満徹の音楽で、とか、おーい、どんな作品になるんだよ、と思う。『アサシン』とか『蜘蛛女のキス』とか製作された(この小説の中で)ものはどんな?
ずーっと、なにやら人間離れしている存在(まあ例えば羽生弓弦か)に感じられた春だが、本人の語りになってにわかに生々しくなる。ちょっとお!おーい…。な、気分でもある。
『蜂蜜と遠雷』はクラシック音楽の世界の話だった、あれもピアノコンクールのことを何年も取材しただろうことがしのばれた。こちら『spring』の帯には構想・執筆10年とある。そりゃそうだろう。
踊る人だった身内は、もう地上にいないので、ねえ、あれ読んでみて、踊り手としてはどう思う?と聞きたいのだが答えは返らない。
この単行本、真っ白のカバーを外すと本体の表紙がカラフルです。
『アラベスク』『紅天女』『砂の女』『武満徹』『蜘蛛女のキス』….私が知ってる懐かしい名前が並んでいる~って、ちょっと興奮しました。
自分の肉体で美とか物語とかを表現できる人たち、、、その凄さ!憧れますよ。
アヴィシャイ・コーエンという人の音楽を使う、というところもあり、聴いてみたら好きな音だった。知ってる?
それと、左ページ左下にバレエのシルエットがあり、パラパラマンガになっています。
アヴィシャイ・コーエン知らないので、いろいろ聴いてみますね。
パラパラ漫画付きの本って、サービス精神旺盛です、恩田陸さん。