監督 濱口竜介
出演 ヴィルジニー・エフィラ 岡本多緒 長塚京三 黒崎煌代
パリ郊外の高齢者施設。介護と看護、時間、予算、やりたいこと、やれること。どこの国でもこんな感じなんだなあ、という地味な気配が続く。カンヌで二人の女優が受賞したということ以外、ほぼ知識無く観たので、はじめは、ん?こんな感じ?と思いながら観ていた。
施設長マリー・ルーが、自閉スペクトラムとわかる少年と出会う。フランス語で、英語で、日本語で話しかける。彼が位置情報を知らせる物を持っていたので、連絡し、真理と出会う。真理は演出家で、一緒にやって来た老人は少年の祖父であり舞台俳優だった。
一人舞台を観に行くマリー・ルー。イタリアでは精神病院が廃止された、と言う話から日本語で語られる一人芝居。フランス語の字幕が後ろに出る。孫がその芝居に勝手に入ってきてもそのまま続く。観客が楽器の音で参加することもある。
その後の会話からストンと親しくなるマリーと真理。マリーの職場である施設に泊まることになる真理。真理は癌のステージ4であることも語る。
二人の会話の中でホワイトボードに図を描きながら少子高齢化は世界の必然であることなどについて議論しているあたりをもう一度観たい。フランス的、理屈っぽい哲学っぽいなあと思っていたら、何しろ原作である往復書簡の主は、人類学者と哲学者二人の女性なのだった。
近い身内に癌で亡くなった者がおり、その娘は以前、介護施設に勤務していた。ユマニチュードという言葉は、私自身が母の介護をしていた頃によく目にしたし、その介護施設の職員の人がユマニチュードの講習を受けた話も聞いた。突然恋に落ちるように親しくなる二人の状況に、不自然さを感じる人もいるかと思うが、私自身にも一夜にして古い友人のようになった人がいる。
そんなにうまくはいかないさ、それは承知の上。そこはファンタジー風味として、私には素晴らしい映画だった。


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