サクリファイス

サクリファイス著者 近藤史恵

新潮文庫

自転車のレースの話。高校時代は陸上でいい記録を出していた白石誓。それは、彼にとっては苦痛でしかないものだった。その誓が、ある日ロードレースと出会い、そこにはエースとアシストという役割分担があることを知る。その、アシストなら自分に向いていると転向を決意、自転車部の強い大学に入り、卒業後、プロになる。

選手は当然それぞれに個性が強い。アシストがいてチームのエースが成り立つということには、もちろん実力の差が存在するが、なにがしかの犠牲(サクリファイス)を強いる、強いられる立場が、ある。

事故と背中合わせでもある。

私が自転車のレースを目にするのはオリンピックの時ぐらいだ。4輪ならかつてはF1のレースを(テレビで)見てミカ・ハッキネンを応援していたし、2輪もモーターバイクのレースはたまに見ていたが。加藤大治郎という、鈴鹿の事故で亡くなった人がいたなあ。

ちょっとしたミステリー仕立てになっている青春小説風味。読んだのが台風の夜、ラジオの情報を気にしながら読んでいて、いささか集中しそこなった。魅力的な登場人物にもう少し感情移入したかったぜ。サクリファイスというタイトルの、意味が、そこにあるのに。

で、台風一過、続編の『エデン』を見つけて、読んだ。誓は今、フランスに本拠地があるチームに所属している。こちらのほうが、F1を見ていたことが多少役に立つ。レースに日本人が出るにしても、スターでは無いし、人種差別的な扱いがあるのも不思議ではない。誓はミッコ・コルホネンというフィンランド人選手のアシストである。ニコラというチャーミングなフランス人選手がいて、プチ・ニコラ(映画にもなった絵本の主人公の少年の名前)と呼ばれている。

嫌なやつ出てきたよ。誰とはお知らせしない。ドーピングとか。

続いて『サヴァイヴ』という短編集も文庫になっている。

 

 

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