お勝手太平記

 

お勝手太平記著者 金井美恵子  出版社 文芸春秋

はるか昔の記憶だから定かではないが、“金井美恵子はバカの顔を見たくないのだ”だったかそんなような文章を目にしたことがある。書評だったのか文庫化に際して誰かが寄せた文だか。

帯に、優雅なる脱線、冴えわたる悪口 とある。趣味は手紙を書くことというアキコさんなる六十代のご婦人の、友人への手紙によって成り立っている小説。あー意地悪。

まずは絵手紙について。あの絵手紙の主題は「見て、見て!あたしが描いたのよ。ど?いい感じでしょ?絵は下手でも、人生の幸福感とか豊かさにあふれててさ」という唯一の単調な主題に尽きるのです。

私も絵手紙は苦手です。だからこそこの意地悪さって、ううう…と響くものであります。

まあいろんなことをお勉強できます。きざす という言葉には、兆す と 萌す の二つの漢字があることとか。映画についてのなんと豊富な知識!とか。モネが白内障だったことは知っていたけど、手術した後で色合いが違ったって知らなかった。

六十歳過ぎると映画は千円で見られるんだけど、ここに、「ありがたいことに」と付けると、とっても老女っぽくなると思わない?  今は1100円だけどね。で、この文章には老女が一人で見に来ているのは見たことが無いと書いてあるけど、私は今日も一人で見てきましたよ。で、それに関連して病院の待合室で大声で泣いてむずかっている男の子に対して、小柄なおばあさんが「男の子って、おだてて褒めてあげれば、何とか育つのよ、家のおじいちゃんを見てたってそう思うもの」と教えてくださったというおばあちゃんに対する感謝をつづったエッセーに対して、大嫌い、と言い切る!

“熱いココア すすりながら”という由紀さおりの歌『手紙』の歌詞、ココアを啜っちゃいけない、啜る は鼻水、って。気付かなかった。

気づき という言葉。気づきが大切、と、そういえばよく目にしますね、青少年育成関係で。読み聞かせ という言葉。気づき っていつから存在する言葉なんだろう?わたくし気づいておりませんで。読み聞かせ が、言い聞かせる という脅し的な言葉に聞こえるという。はあー、そうですよねえ。

(昔の)映画の中で、和裁している女優がいつも三つ折りぐけしかしていない、そうです。裾の三つ折りぐけならそう下手さが目立たない、ぐし縫いほどには、という理由であるらしい。岡本かの子が派手な柄の羽織を自分で縫っていたのを平林たい子が目撃したというエピソードに絡めて。

例えば、私たちの世代の女性が好んだエッセイといえば幸田文と森茉莉(もち、私は森茉莉派です)、その少し後に武田百合子  はい、その3人ともとても好きでした・・・という具合に、共感することはいろいろ出てくるのだけど、素人の女性のエッセーに対する鋭く意地悪な指摘たるや。いや、もちろんいっぱしの男性に対しても。

私のイメージの中では、何かしら雑誌で見かけたベリーショートの髪、眼鏡をかけた賢い少女、のままなのだけど。私より年上の人だから、デビュー時に少女だったわけはないのだ。

この人と誕生日が同じと知ったときは、ちょっとショックだったな。

下線部分は引用です。どうもヘタクソな紹介しかできない、鼻持ちならない、ですよ、でも、興味があったら読んでみてください。

 

 

 

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