恋恋風塵

恋恋風塵監督 侯孝賢       87年制作 89年日本公開

出演 王晶文 辛樹芬 李天禄

1960年代と思われる時代の台湾の田舎、幼馴染の阿遠と阿雲。成績は良かったらしいが、中学卒業後、台北で夜学に通いながら働く。年下の阿雲も、二年後、台北の仕立て屋で働く。

阿遠に兵役の時がやってくる。しばしば届いていた手紙が届かなくなり…。

ストーリーを紹介してもあまり意味は無い、そういう種類の映画なのだ。深い緑がにおい立つような景色、昭和の、と言いたくなる懐かしいような田舎の風景。セリフの少ない、微妙な表情で伝わってくる思い。

撮影場所が、九份じゃないかなあ、と思って観ていたのだが、帰宅後、撮影場所を特定している映画ファンのサイトを見たところ、やはりそうらしい。十分という駅が出てくるが、二人の生まれ育った村の撮影場所は九份だそうだ。今の状況とは大違いだけれど、あ、この階段、同じ監督の「非情城市」の病院の受付から見える階段と同じ所かも、と、思った。

よく小津安二郎の影響を指摘される侯監督だが、小津作品の中にいつもいた笠智衆さんのように、かつていつも侯孝賢監督作品にいた李天禄さんの姿が味わい深い。

辛樹芬というみずみずしい女優さんは、数年間たった五本の侯孝賢作品に出た後、引退、結婚したということは知っていたが、兵役のベッドの中で号泣するシーンが印象的な主人公・王晶文は、なんと去年急逝していた。もちろんこの映画でおじいさん役の李天禄さんも、この世にいなくなって久しい。

かつてこの映画のビデオを持っていたのだが、この作品を映画館で見ることができて良かった。国際映画祭で評価が高かったこの作品は、台湾の映画祭にはノミネートされなかったそうだ。その理由が、兵役中に失恋するというストーリーが軍の許可を得られなかったからとか。

 

 

コメント (2)

atcon2015年2月22日(日曜日) at 9:45 AM

名前だけ知っていて、観ることのなかった映画です。感想文を読んで、心に染み入るようないい映画だってこと伝わってきます。
私は最近読書していて、1960年とか、1970年とか、過去の年号を目にしただけでも、胸が詰まるような、泣きたくなるような気持ちになることがあって、そんなところでも年をとった自分を実感します。

aar2015年2月24日(火曜日) at 6:11 PM

DVDだと退屈かもしれない。映画館で見てこそ、という気がします。先月まで教わっていた若い中国語の先生が、私たちの子供のころの話をしてから昭和にはまったらしく、携帯で昭和のゲームをやっていました。ちゃぶ台とか出てくるやつ。

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