流著者 東山彰良

出版社 講談社

153回直木賞受賞作品。「火花」のみならず今回の芥川賞・直木賞作品はどれも興味をそそられたが、台湾出身の作家によるこれを最初に読んでみることに。

1970年代の台湾は、日本の1940~50年代を思わせる猥雑さ、混沌がまだまだ存在した、らしいことは今までに見た台湾映画の中でも見た景色で、しかし、文章で読むとうーむ。

中国の国民党支持者であった祖父が、共産党支配の国となった中国から台湾に逃れてきた。外省人と呼ばれる大陸からやってきた中国人にとって、台湾人は見下すもの、ということが当然のものだったらしい。…そうか…。異質な文化を持つ数の少ない者を蔑視したがる性質を、身に付けながら育つものなのか、大概の人間は。

などと小さな部分にちょっとしたショックを受けながら読むから、祖父を殺したのは誰か?というミステリーが主題であることが、ちょっと飛んでしまう。私には。

途中までは、誰か台湾の映画監督が映像にしてくれることを期待しながら読んだのだ。とても映像的な小説だし。が、この、台湾生まれの人にしか書けない時代の流れ、80年代の中国の姿、日本で育ってこそ、これは書ける作品で、えーと、もしも映像化されたとして、大陸で受け入れられるか?うーん、日本人が映画やドラマにしたってこの猥雑暴力混沌は描けない気がするし。映像化しないのはもったいないのだけど、さあ誰かなんとかしてくれまいか。

祖父が中国山東省出身であり、父が暮らし母が育った地が台湾の彰化であるところからのペンネームだそうだ。「このミス」銀賞とか、大藪春彦賞とか受賞しているというほかの作品も、読みたい。

 

 

コメント (1)

atcon2015年8月11日(火曜日) at 8:14 AM

『このミステリーがすごい!』の受賞者ということで、名前だけ知っていた作家です。読んだことなかったけど、ちょっと気になってきました。

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