月の森に、カミよ眠れ

著者 上橋菜穂子
偕成社文庫

上橋菜穂子 ファンタジーの原点 と帯にある。
宮崎に「あかぎれ多弥太伝説」というものがあるのだそうだ。古代、美しい娘のもとに通ってきた男があった。素性のわからないその男は、実は大蛇の化身であり、娘は子を産み、子孫は源氏に仕えた、というような話らしい。それをもとにした物語。
隼人族であったのだろう、大和朝廷の主流である民族とは異なる文化を持った民族がいた。回りに存在していた別の民族も、大和朝廷のシステムに飲み込まれて行っている。その中で。

中央国家が整うにつれ、次第に独自の文化を失い、祭る神をも失っていく経過と言うのは、近代にあっても、例えば台湾の少数民族の文化を、戦前台湾を統治していた日本が奪ったということにも見られる。

日本は神代の時代から単一民族だ、という主張をしている人たちがいるよね。ABEさんの政府の主流のお方たち、なんかそんなようなことを思ってるみたいだよね。
でも日本人の顔立ちって結構いろんな遺伝子が入ってるからバラエティ豊かなんだよね。南国鹿児島生まれ鹿児島育ちの友人の一人は、フィリピン人から「フィリピンの方ですよね?」と聞かれたそうだ。

生産性が高く、システムが整っている主流の中央国家に抵抗を試みながら滅びていく地方の民族がいくつもあっただろう。逆に中央国家には、それが成立する過程で外国の文化を取り込み、外国人、外国の文化を受け入れてきている歴史が、当然ある。

これが書かれたころよりも、ナショナリズムというか他民族排他というか、世界中でおかしな空気が漂っているから、今の私はそういう読み方になってしまうものなのだろう。カミとかオニとか、そういう存在のことを読む読み方でなく。

 

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