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  • 「人新世の『資本論』/斎藤幸平」80%読んでからの読書感想
  • 「人新世の『資本論』/斎藤幸平」80%読んでからの読書感想

    人新世の「資本論」(ひとしんせいの しほんろん)

    著者:斎藤幸平
    発行:集英社新書/2020年
    ‎ 新書:384ページ

    「新書大賞2021」受賞作

    日本は経済大国第3位

    日本は経済大国と言われています。

    2021年の名目GDP(国内総生産)は世界第3位だったらしい。(「【2021年】最新世界GDP(国内総生産)ランキング 2050年の予測も紹介」参照)

    世界第3位の経済大国!と言われてもなんか実感が湧かない。

    名目GDPを人口で割った一人当たりの名目GDPで見ると、日本は世界第25位。
    生産性の低い働き方で、65歳以上の高齢者も動員して、隠居なんかしようと思うな、身体が動く限り働け、年金を当てにするんじゃない、という掛け声の下に総出で働いて、世界第3位の経済大国です。

    年金が当てにならなくても、NISA(ニーサ)がある。iDeCo(イデコ)がある。これで老後は安心。とか言っている政府。いったい誰に向けて言っているのでしょう。昨年、最低賃金がやっと時給821円になった鹿児島市民の身にもなって欲しい。

    という市民感情を抱えつつ、話題の本『人新世の「資本論」』を購入しました。
    本書は、2021年に新書大賞第1位に選ばれた経済書。それが35歳の若き哲学者が書いたということでも話題になりました。新書としては異例の売り上げとなっているそうです。
    私も「哲学者が書いた経済書」という組み合わせに惹かれました。

    読み始めたのは昨年の秋頃だったか、、、、
    前半はグイグイ読んでいたのだけど、後半からちょっと読むスピードが鈍って年を越し、ついに4月。280ページ目から後書きのページにワープして、全体の80%ほど読んだところで勝手ながら読了としました。

    『人新世の「資本論」』を読んで

    本書前半部分、資本主義と地球環境問題との関連性を事細かく深く掘り下げているところは、共感を持って読み進みました。

    「世界の富裕層トップ10%が排出する二酸化炭素は、その「裕福な生活様式」によって全排出量の半分を占めている」こと。
    「先進国」と呼ばれる国が、「どこか遠く」の人々や自然環境に負荷を転嫁し、豊かな生活のため経済成長を続けていること。
    「どこか遠く」の国では、資源と労働力を収奪され人々が貧困の中にいること。
    二酸化炭素排出量は増大し続けているし、気候変動の深刻さも先送りしてはいけない。
    知らなければいけない問題がたくさんあります。
    でも、レジ袋を削減して温暖化対策をしていると思い込むことで、現実の危機から目を背けている私たちがいる。

    「経済成長を支えてきた大量生産・大量消費そのものを根本的に見直さなくてはならない。」と著者はいいます。そのためには、資本主義に代わる新しい社会システムをつくるべきだと。
    地球環境問題は、個人で取り組めば何とかなるというレベルのものではなくなっているのです。

    本書の後半には、著者が考えるポスト資本主義の世界観が具体的に書かれているのですが、ここは読む人によって意見が分かれるところかもしれません。

    著者が提唱する「脱成長コミュニズム」という社会。
    電力や水道や教育、医療、インターネット、あらゆる生産手段そのものを「<市民>営化」する。
    社長や株主の「私有」でなく「国営企業」でもなく労働者たち自身による「社会的所有」とする。
    市場にも、国家にも依存しない形で、お互いに共同管理のネットワークを広げていくプラットフォームを作る。
    過剰な生産はしない、脱成長で地球環境を守っていく、というものです。

    著者は「脱成長コミュニズム」社会で人は、自分らしく働ける、安定した豊かな生活と人間らしい自由時間を手に入れることができる、持続可能で公正な社会が実現できるーーと言います。
    あまりにもユートピアとして語り過ぎではないでしょうか。何だか、ニュータウン入居者募集のパンフレットを見ているようで、逆に懐疑的になってしまいます。ま、私がひねくれ過ぎかもしれないし、どんな新しいシステムもやってみなければ分からないことではありますが、、、

    ともあれ、本書は、先送りできない地球と世界の問題を提示していて、このままの社会システムを続けていていいのか?と問いかけてくる一冊であることは間違いないです。

    余談ですが、

    世界の超富裕層1%、資産の37%独占 コロナで格差拡大(日本経済新聞 参照)を読むと、世界の上位1%の超富裕層の資産は2021年、世界全体の個人資産の37.8%を占めるまでになったらしいです。

    世界の1%、、、、ざっと計算して約7,875万人。結構いますね。


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