著者:辻田 真佐憲
発行:講談社現代新書(2023/5/18)
「戦前」の正体
愛国と神話の日本現代史
神武天皇、教育勅語、万世一系、八紘一宇……。
右派が誇り、左派が恐れる「戦前日本」の本当の姿とは?
「国威発揚」の物語を検証するーー!
本書は神武天皇から始まる日本の神話が、明治維新から第二次世界大戦まで、いや、実は令和の現在に至るまで、どのように利用されてきたか?ということを近代史を追って考察したものです。
日本の初代天皇と言われる神武天皇。『古事記』や『日本書紀』の中にしか存在しない、この伝説上の天皇は幕末の頃、急にフィーチャーされたという。それはいったい何故なのか?
平成29年、あの森友学園が幼稚園で園児に軍歌を歌わせ教育勅語を暗唱させていた問題。愛国教育と称賛する人たちもいれば、戦前回帰と批判する人たちもいて物議を醸した。では「愛国教育」とは?「戦前」とは何か?
多くの文献資料に当たり、紹介すべき史跡は著者本人が現地に赴き写真を撮り、時代のエピソードを加えて、面白く読める本になっています。
キーワードは「神話」「神武天皇」「軍事」「教育」「神社」といったところでしょうか。日本の歴史の一部でありながら私には知らないことが多く興味深く読みました。
なのに!
読み始めてから4か月余り。85%ほど読み終わった頃、ついに読書を中断することを決断しました。
読書が好き!とかねがね口にしている者としては、買った本を読み通せないと読解力が無く根気が無いことがばれたような、情けない気分にもなったりします。
しかし読書中断の理由は、内容が理解できないとか、面白くないとかでは決してなく、ただもう難読漢字が多い。これに尽きます。
日本の歴史を日本語で書いてあるのに読めない漢字のなんと多いことよ。
難読漢字にはフリガナ(ルビ)が振られていますが、2回目以降に出てきた時にはルビがない。もうさっき教えたでしょう?ちょっと戻って確認してごらん。ってシステムなんだけど、難読漢字が再出現するたびに”巻き戻し読書”になることも。
前後の文脈から推測できないような漢字には出現する都度ルビ振ってくれないかなあとも思うけど、いやでも、そのルビの小さい文字がほぼ読めない。歳のせいなのです。しょうがない。
とまあ愚痴ってはみたものの、この本のたいていの読者はきっと、難読漢字も含めて本書を面白く読んだのではと思います。
『古事記』や『日本書紀』に記される日本の神話は難読漢字のみならず難読カタカナも豊富で、例えば神武天皇の本名はイワレヒコ。漢字で書くと「神日本磐余彦尊」。読み方は「かむやまといわれひこのみこと」。そんなこと知っているよって層の方たちが読者層なのかも。だからAmazonで【新書大賞2024 第7位!】「わかりやすい」「読みやすい」と話題沸騰のベストセラー!!になっているのだと思うのです。
さて、難読漢字とルビ読みに疲れた頃、著者・辻田 真佐憲さんのYouTubeチャンネルがあることに気づき、本書からネットに移行してみました。
個人的に少々興味がある「君が代」について解説している動画があったので下記に添付します。
「君が代」については、公立の学校現場で国歌斉唱時に起立することを強制する問題がたびたび起こってきました。1999年(平成11年)2月には「君が代」斉唱をめぐって、卒業式前日に校長が自殺するという痛ましい事態も引き起こしています。その年の8月に「君が代」は日本の国歌として法的に定められました。
2012年には、大阪府立の高校で教職員がちゃんと歌っているか口の動きもチェックするという徹底ぶりで、国歌斉唱時に起立しなかったという理由で教職員が懲戒処分を受けたりしています。
いったい何故「君が代」を強制したいのか?あるいは何故「君が代」を忌避したいのか?
そもそも「君が代」はどうやって生まれ、どう育ってきたのか?
各時代の有力者たちの思惑でもって創られ、時代によって解釈が変遷していく「君が代」の歴史。
2時間近いマニアックな動画ですが興味ある方におすすめします。
私個人は音痴なので「君が代」を歌えるわけがない。自慢じゃないけど「校歌」だって、斉唱に参加したことはありません。周りの人の邪魔にならないよう、いつもクチパクしていました。
しかしクチパクでもいい。曲の間みんなで一緒に立っていることが肝要というのが国歌斉唱起立強制派の考えです。果たしてその心は?
辻田真佐憲さんは、神社の歴史に詳しく軍歌研究家でもあるらしいです。となれば、右寄りの人?と思われがちですが、ご本人は右でも左でもない中道を行くスタンスを取っておられるようです。