テレビドラマ化について

誉田哲也の「ストロベリーナイト」が単発ドラマとしてテレビで放映されるという。それを聞いて私はちょっと驚いています。

今年、原作の文庫を読んだばかり。その際「あれ、これ前に読んだかなあ、テレビで観たんだっけ・・」と最後まで既視感が付きまとい、ネットで調べたことがありました。その時点では過去にテレビ化されたという情報はなく、「そりゃそうだよね。いくらなんでもこれは映像化できないよねえ」と思った作品でした。
なにしろ殺人シーンがね、グロテスク過ぎる。それに殺人者の精神状態や家庭環境、児童虐待の描写などもムゴ過ぎる。
もちろん、このすさまじいシーンを描写できるのが作家の力量なのだろうとは思いますが、しかしこれは本だから許されるんじゃないのかなあ。

映画と違ってR指定が機能しないテレビ。
最近では携帯で観ている人も多いパーソナルメディアでもあります。良くも悪くも子供から大人まで、かなりの影響力を持つ情報媒体です。本当にこんなシーンを映し出すつもりなのかしら?なぜ、この作品をチョイスしたのかな?もっと楽しめる原作が他にもたくさんあるんじゃない?いったいどんな人たちをターゲットにドラマ作りをしているのだろう、とテレビドラマ化に関しては、次々疑問が湧いてきます。

その反面、やっぱりなあ、とも思います。テレビってこういう刺激的な殺人が好きなんですね。
現実には小説を超えるような残虐な事件も起きるし、そういう事件にワッと飛びつくワイドショー感覚でドラマの素材を選んでいるのじゃないかと・・・・

ま、まだ放送されていない番組のことをとやかく考えるのは取り越し苦労というもの。おそらく「放送倫理・番組向上機構」にひっかからない範囲で納まるよう、映像処理され放送されるでしょう。それにグロテスクなものほど、ビジュアルに凝ると、むしろ美しくことさら意味ありげにみえることがありますしね。

しかし、もっと考えてみると、もし殺人事件の裁判員に選ばれたら、こういう映像もしっかり見なきゃいけないのですね。や~だ、怖~い、なんて甘ったれたことは言ってられないわけで、精神的にタフでなければ生きていけない。一般人にとってもハードボイルドな世の中ですね。

「ワーキングプア―日本を蝕む病 」NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班

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出版社:ポプラ社 (2007/06)

働いても働いても報われない人々「ワーキングプア」。NHKスペシャル取材班が、放送では伝えきれなかった詳細を書籍化し、大反響を呼んだ。現代日本の象徴的な問題に我々はどう対処すべきか。渾身のノンフィクション。
(内容Amazon.co.jp<「BOOK」データベースより)


NHKでスペシャル番組、「ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない~」と「ワーキングプアⅡ~努力すれば抜け出せますか~」が放送されたのが、2006年7月と12月。

本にまとめられ発行されたのは2007年6月。
2007年8月にはT/T:Blog 「ワーキング・プア」でこの話題に触れていましたね。

NHKの番組はとても反響が大きかったということです。私は当時観ることができなかったので、せめて本にまとめたものを読みたいと思いながら、読むと辛いぞという予知能力が働いて、ついこれまで避けてしまっていましたが・・・・ブックオフでみつけ手に取りました。

  • 1.「貧困」の闇が広がる日本
    2.ホームレス化する若者
    3.崩壊寸前の地方
    4.夢を奪われた女性
    5.グローバル化の波にさらわれる中小企業
    6.死ぬまで働かざるをえない老人
    7.荒廃を背負う子ども
    8.現実に向き合う時

 

目次を目にするだけで、たいていの人は書かれている内容を想像することができるのではないでしょうか。
他人事ではない。そう思う人が多いのではないでしょうか。

私もワーキングプアという集団の同心円内にいます。円というよりは巨大な巨大なすり鉢をイメージした方が分かり易いかもしれません。
今のところ住むところと仕事を持っていますが、加齢とともにすり鉢の底に向かって吸い込まれていくのは間違いない。
この巨大な巨大なすり鉢は、底に穴のあいているブラックホールです。

すり鉢の中を緩慢に、あるときは急激に、滑り落ちていく感じを身をもって知っている人、そうなるのではという不安を抱えている人がどれだけ多くいることか。しかしその数は実際には数えられていません。
構造改革に伴う「痛み」を引き受けてしまった者たちの存在を、ただ「格差」という言葉でまとめて、それで改革は終わりですか?とかつての日本国代表と現代表に聞いてみたいですね。

続編として「ワーキングプア 解決への道」も発行されているようです。
ぜひ読んでみたい。解決の道を探す努力をしている人たちがいることも知りたいと思います。

「ワイルド・ソウル」垣根 涼介

wild出版社: 幻冬舎 (2006/04) 

内容(Amazon.co.jp「BOOK」データベースより)
1961年、衛藤一家は希望を胸にアマゾンへ渡った。しかし、彼らがその大地に降り立った時、夢にまで見た楽園はどこにもなかった。戦後最大級の愚政“棄民政策”。その40数年後、三人の男が東京にいた。衛藤の息子ケイ、松尾、山本―彼らの周到な計画は、テレビ局記者の貴子をも巻き込み、歴史の闇に葬られた過去の扉をこじ開けようとする。
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2、3年前、読んだ本です。
国と外務省に騙されて過酷な地に棄てられてしまった人間たちの復讐物語、ときくと暗く重たい旋律のBGMが流れるストーリーを想像してしまうかもしれませんが、むしろ、陽気でおおらかなラテン音楽が似合う、痛快な作品だったと記憶しています。
タイトルどおりワイルドでソウルフルな物語です。
大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞のトリプル受賞。

ブラジル移民については、苦労の末コーヒーなどの栽培に成功した入植者たちのドラマをTVで観たことがありましたが、アマゾンの地に見棄てられた多くの人々がいたことを、私はどれだけ知っていただろうと考えさせられた作品です。
作家というのは歴史を掘り起こし、読む者に伝えるという使命も担っている、そういう作家もいるのだと思います。

ただ、垣根涼介の他の作品、「君たちに明日はない」や「借金取りの王子」を読んだ時にも感じたことですが、登場する女性のパッションというか、活発な精神というか、とても魅力的なんですが、たぶん私はこういう女性に会ったことがないのだと思います。ちょっと感情移入しにくかった。正直に言ってしまうと、主人公となる男性についても、とても好ましい人物なのに、全く別世界の人のように感じられる。人見知りな私にはちょっと近づきにくいキャラクターでした。

2008年がブラジル移民100年の年であったようで、記念サイトがいくつかありました。
「 ブラジル移民の100年 」は「国立国会図書館」のコンテンツの一つとして公開されているサイトです。
「国立国会図書館」の電子展示会へのリンクがあったのでたどってみると、思いがけず興味を引くコンテンツがいろいろありました。

まず「絵本ギャラリー」を開いてみたのですが、”18世紀から1930年代に至る期間の、日本と欧米の絵本の名作を紹介”しているそうです。
繊細でノスタルジックな美しいイラストレーションの数々。そんな絵本をまるごと電子図書として音声付で読めます。日本語で聞くのもいいですが、英語音声にすると、子供も楽しく英語の勉強ができるのでは。こんな贅沢なサイトがあるなんて、今まで知りませんでした。
他にも、
「博覧会-近代技術の展示場」
「江戸時代の日蘭交流」
「写真の中の明治・大正 -国立国会図書館所蔵写真帳から- 」
「描かれた動物・植物 -江戸時代の博物誌-」
「インキュナブラ -西洋印刷術の黎明-」
etc・・・マニア心をくすぐるコンテンツがいろいろありますよ。
本の万華鏡」というのも気になるし、今度またゆっくり覗いてみようと思います。

としまえんと東京タワーとグリルつばめ、ではなく「つばめグリル」③

tokyo09グリルつばめ、ではなく正しくは「つばめグリル」でした。私はずっとグリルつばめと思い込んでいました。

つばめグリルのホームページによると創業は1930年。特急つばめの誕生にちなんで名づけられた、80年の歴史を持つ老舗レストランです。
本店は銀座にあり、支店も多数あるようですが、私が行ったのはレトロなビアホールといった風情 の品川駅前店。

ハンバーグステーキをアルミホイルで包み込んだ「つばめ風ハンブルグステーキ」が人気のお店です。アルミホイルをナイフで切り開くと、柔らかいけれど少し歯ごたえのあるハンバーグと、意外とさっぱりとした味のビーフシチューが、ほんわりと芳ばしい香りとともに現れます。

ジャガイモを1個まるごとオーブン焼きにしたベイクドポテトが添えられていて、これだけで十分お腹いっぱいになる1品ですが、やはりこの店ではシーザーサラダも注文したい。新鮮な食材のみを使用し、化学調味料や着色料、保存料を使わないという、お店のこだわりが実感できるシーザーサラダ・・・これがいいんだよ、と東京出張から帰ってきた夫が熱く語ったことがあります。

シーザーサラダの主役は、レタス。普段スーパーで見かける丸っこいレタスではなく、大振りの縦長いレタス。夫はその名前が思い出せず、私が「それはサンチェじゃないの?」と言うと、「違う、違う」と首を振るばかりで結局思い出せませんでした。
とにかくいつか食べに行こう、と当てにならない約束をしてくれたのですが、それから間もなくその約束は果たされることになりました。

2006年7月20日、夫と二人でつばめグリルの品川駅前店で食事をしました。
日付まではっきり覚えているのは、その日、国立がんセンターにセカンドオピニオンを受けに行ったからです。がんセンターでの診断はあまりに厳しく、一縷の望みをも打ち砕くものでしたが、夫はその日の夕食に、つばめグリルに連れて行ってくれました。

夫が、つばめ風ハンブルグステーキとシーザーサラダ、ビールとコーヒーを注文し、「これだよ、ロメインレタス!」と、やっと解答を得て嬉しそうに言いました。
食事をしながら何を話したのかは思い出せませんが、病気の話題は避けて、いつものように仕事のこととか、たぶん食べ物のことや何か、たわいも無いおしゃべりばかりしたように思います。私は泣くまいとこらえるのに精一杯で、ハンバーグもサラダもまるで味など分らなかったのですが、夫は生ビールを美味しそうに、まるで心配事なんて何もないよ、というような顔をして飲んでいました。不思議な人です。最後までそんな調子で、人前で辛い顔を見せることはありませんでした。

今回、つばめグリルには、娘と夫の姉や姪と一緒に行きました。夫の思い出を身近な者と共有できたことが嬉しかったし、今度はしっかりと味わうこともできました。
しかし、「本日は野菜の良いのが入らなかったので。」ということで、シーザーサラダは注文できませんでした。残念・・・。

tokyo10左の写真を撮ったのは私です。間違えて隣のサラダを撮ってしまい、シーザーサラダはお皿半分しか写っていません。
つばめグリル ロメインレタスのシーザーサラダに調理中の画像があります。こちらを見た方が美味しさが伝わりますね。

ロメインレタスとは、白菜のように長円形にゆるく結球し、ラグビーボールのような形をしたレタスのことです。古くは古代エジプト王朝で食べられていたと言われる歴史の長い野菜で、「立ちちしゃ」や、エーゲ海のコス島で栽培されていたので「コスレタス」とも呼ばれています。ロメインレタスは、葉に厚みがあって、サクッとした歯ごたえとクセのない爽やかな味覚があるので、特にシーザーサラダのメイン素材として人気のあるレタスです。また、ロメインレタスは生食だけでなく、炒め物や煮物など加熱するお料理にも幅広く使われます。
1から始める料理の基本より

としまえんと東京タワーとグリルつばめ②

tokyo06東京タワーに登りたい、と言うと「馬鹿と煙は高いところに登りたがる」と笑われそうですが、確かに私はその部類です。
高所恐怖症のクセに、屋根と壁に囲まれて、床が透けていないこと、という条件さえ合えば、高ければ高いほど登りたくなってしまいます。

地上250mの展望台から見下ろすと、以前より高層ビルがかなり増えたというのが実感できました。
竣工年代順・東京都(23区)・超高層ビルデータベースによると、1968年に高さ100m以上のビルは1棟だったものが、2010年1月現在で402棟ほど。9月の今ではさらにその数を上回っているはずですし、さらに現在建設中もあるようです。

東京の街も上へ上へと登りたがっている・・・ひょっとして街を挙げて私と同類でしょうか。
この高層ビルの全てが、「としまえんカルーセル エルドラド」のように100年以上の月日を、果たして生き延びていけるのでしょうか。
そんな老婆心を抱きつつ、街の風景を上空から鳥の目で俯瞰できる東京タワー。この3月には日本一高い建造物のポジションをついに東京スカイツリーに譲ってしまいましたが、私はデザイン的には東京タワーのAラインが好きです。

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※写真は娘の撮ったもの

グリルつばめについては、また明日。