市民コミュニティ

「最近講習会に積極的に参加しています」ということを、このブログで書きましたが、まるでそれを知られてしまったかのように、先日NPO法人の方から「市民コミュニティへ参加しませんか」というお誘いがありました。

タイトルは「原子力と放射性廃棄物の地層処分について 」
高レベル放射性廃棄物の地層処分事業を推進するために設立された、「原子力発電環境整備機構:(NUMO)(ニューモ)」の取り組みを市民レベルに周知理解させるのが目的のコミュニティです。
内容は『放射性廃棄物地層処分事業に関して、マスコミの主張や反対派の行動に流されずに、自分自身で問題の価値判断、意思決定等を行うための学習やディスカッション、アンケート等を行う』というもの。

資源エネルギー庁はNPO法人を通じて、全国で「放射性廃棄物ワークショップ」を開催しているそうです。それは50人~80人くらいの参加者が講習を受け意見交換をするものだそうですが、今回の参加者は6人限定です。人数が多いと積極的に意見を出しにくい。講習内容がどこまで理解されているかも把握しにくい。少人数に同じ内容の講習を受けさせ、疑問点や本音の意見をより多く引き出したいというネライがあります。

主催は東京電力の関連会社です。
参加資格は特別な知識は要らない、まじめに取り組んでくれる人。
私は原発問題に関心はありますが、ほとんど知識はありません。放射性廃棄物の地層処分についても「地中に埋める」といった程度の認識です。講習を受けるだけなら楽しそうだけど、知らない人たちと少人数でディスカッションすることは経験が無いので、ちょっと苦手意識が先にたちます。
しかし「昼食、交通費、謝礼支給」という一行に惹き付けられ、「参加します。いえ、ぜひ参加させて下さい!」と お願いしてしまいました。謝礼は私の気持ちを軽くするのに十分な金額でした。(この気持ちを軽くするのに十分な金額って人によって大きく異なるんでしょうね。)

先週、市内ホテルの会議室に20代から60代の男女3人ずつ、計6人が集まりました。

学習内容は「放射性廃棄物のホームページ」(http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/
に書かれているものとほぼ同じです。興味のある方はHPをご覧下さい。

私は現在日本で稼動している原子力発電所が何基あるか、そういうことも知りませんでした。53基だそうです。そして電気の約30%が原子力発電によってつくられているといいます。思っていたより多い数字でした。

日本の電力発電は、石油、石炭、天然ガスを原料とする火力発電が主ですが、1973年のオイルショックにより、原料を石油に頼りすぎるのはマズイと考え、原子力発電所を増やしてきたようです。
将来的には日本の電源構成の3~4割程度を原子力にしたい、というのが国の方針だそうです。

最初に、原子力発電のメリットについて説明がありました。

  • ・火力発電に比べCO2の排出量を大きく削減できること。(地球温暖化対策になる。京都議定書の目標値達成に有効)
    水力発電はCO2排出量が原子力より低いが、ダムを1基造るのに莫大な費用がかかる。
    ・原子力の原料となるウランは、石油に比べ比較的政情の安定した国から輸入できるのでエネルギーの安定供給が望める。
    ・太陽光発電や風力発電に比べ低コスト。
    ・天候に左右されない。(エネルギーの安定供給)
    ・使用済み燃料を再処理して再利用できる。(他の発電方法に比べ効率が良い。
    など、です。

説明してくれた工学博士は、「原子力は地球環境に貢献し、効率的で低コストで安定したエネルギー供給ができる。自動制御装置もあり、以前より格段に安全な構造になっている。原子炉建屋全体が分厚いコンクリートで覆われているので、たとえ事故が起こっても放射能漏洩はありえない、チェルノブイリのような事故は日本では起こらない」と断言します。

そう言われてもなかなか、原子力発電が安全だと信じ切るることはできません。むしろ疑問はふくらむばかり。

・地球温暖化対策は勿論大事だけど、原発で事故が起これば地球規模のダメージになるのでは。
・いくら原発は安全だと言われても、構造物の老朽化、人為的なミスなどによる放射能漏洩が無いとは言い切れないのではないか。(※原子炉の法定耐用年数は16年とされていますが、保全補修を繰り返しながら40年~60年使うことが可能だと言います。実際は使える限り使うというのが現状だそうです。
ちなみに、耐用年数の終了した原子炉は高レベルの放射性物質を帯びているためコンクリートで固め、永久に使用できない巨大なゴミの塊となります。川内原発もいずれ1基が巨大なゴミとなり、新に1基増設されます。)
・先進国がこぞって原子力発電を推し進めていけば、今度は石油でなくウランをめぐって資源争奪紛争が起きるだけのことではないか。(※実際にウランの価格も近年上昇傾向にあると報告されている。)
・太陽光発電や風力発電の電気蓄積の技術開発、あるいは別のエネルギー開発の促進に、もっと力を注いでもいいのでは。

もっと原発の安全性については聞きたかったのですが、今回は原子力発電そのものの是非を問うものではなく、原子力発電によって既に発生してしまった高レベル放射性廃棄物の処理についてが、優先される重要課題です。『高レベル放射性廃棄物とは、使用済燃料からウラン・プルトニウムを分離・回収した後に出る液状の廃棄物で、放射能レベルが高いことから「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれる』ものだそうです
そもそも、ゴミをどう処分するかという避けて通れない問題を棚上げにしたまま、原子力発電事業は推し進められてきました。増え続ける電気の消費量に追いつくために、やむなく問題を先送りにしたのかも知れませんが、日本の原子力事業も40年以上たち、いよいよゴミの問題と直面しなければならない時期が今来ているのです。

《高レベル放射性廃棄物》の処分の工程は、

  • ・液体状の高レベル放射性廃棄物をガラス原料とともに溶かし合わせて固めて《ガラス固化体》にする。(ガラスは水に非常に溶けにくく、長期間にわたり変質しにくいという性質がある)
    ・それをステンレスの容器に入れる。
    ・高レベル放射性廃棄物は高熱を帯びているので、『高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(青森県上北郡六ヶ所村)』 に貯蔵して、30年から50年間かけて自然冷却する。
    ・冷却後、粘土による緩衝材で包み込み、地下300mの深さの岩盤に埋め込む。これが『地層処分』です。
    (※《ガラス固化体》を作る技術や地層を300m掘り下げる技術については、まだ安全性が確立していないという問題もあります。)

そしてこの地層処分する場所(最終処分地)については、平成14年から全国の市町村を対象に公募を行っていますが、まだ決まらない。決まらないのは、原子力と放射性廃棄物の地層処分について一般人の理解が得られていないからだ、というので今回のようなコミュニティが全国で開催されているということでした。

参加してみて、既に発生してしまった高レベル放射性廃棄物を処分しなければならない必然性は理解できましたが、原子力発電を推進していくことには、納得がいきませんでした。
原発が稼動している限り、高レベル放射性廃棄物は増え続ける。それを地中に埋め続ける。・・・本当にそれは地球に影響しないのか?他に道は無いのか?他のエネルギー開発を進めて、原子力発電を縮小方向に持って行って欲しい、というのが私の意見です。

蛇足:
謝礼で買ったもの
①大人らしいサンダル 1足
②書籍2冊:「世界のかわいい紙」(その名のとおり、世界中のかわいい紙のコレクションです):穂村弘のエッセイ集「現実入門」
③外食
贅沢に使い切りました。

「光る砂漠」 矢沢 宰

hikarusabaku私の手元にあるのは、たぶん30年以上前に購入した詩集。
久しぶりに本棚から取り出してみました。文庫本はほとんど捨てるか売るかするのだけど、画集、詩集、写真集、と集の付く本はなかなか捨てられません。
矢沢宰さんは14歳から詩を書き始め、21歳で亡くなっていますが、この「少年」という詩は20歳の頃の作品。こんな美しい詩は若くなければ書けない、そう思います。

 

 

 

少年

矢沢 宰

光る砂漠
影をだいて
少年は魚をつる
青い目
ふるえる指先
少年は早く
魚をつりたい