MOVIE+BOOK - 青銅の悲劇 瀕死の王              

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青銅の悲劇 瀕死の王

ファイル 106-1.gif著者 笠井潔
出版社 講談社

 (昭和)天皇の病状悪化のニュースが伝えられる頃の設定。東京郊外の旧家、鷹見澤家で次々起こる事件のことで相談された探偵小説家宗像冬樹。冬至の日、トリカブト毒を用いた殺人未遂事件が起こり・・・。
 矢吹駆シリーズ日本編待望の第一作、と帯に書いてあって、厚ぼったい本なのだけどつい買ってしまった。
 
 私は日本の本格推理小説はさほど好きではない。が、笠井潔の矢吹駆だけは贔屓の探偵さんなのであり、現象学とかさっぱり理解できないツールを使われ、よくわからないことがなにかとありつつ追いかけているのである。が、この話では矢吹駆は活躍しない。
 笠井潔本人に関心がある人にはなかなか面白い展開になっている。宗像冬樹の履歴は笠井潔自身をモデルとして描かれている。だから笠井潔の探偵物、伝奇物などを読んでいてどうも笠井潔という人が気になる私には、へー、そーだったのか、的面白さが満載である。

 が、じゃあこれってミステリーとしてよく出来てるのか?というと、なんだかご都合主義だなあ。まあ日本製の本格推理を読むと大概そんな気になるからあまり読まないんだけど。

 最低限、エラリー・クイーンの『Yの悲劇』を読んでいないと楽しめない作りになっている。それ以外にもヴァン・ダインとか、海外の本格推理小説について基本的な知識があるほうがいい。なにかの小説の引用であるらしい登場人物たちの会話が出てくるのだが、たぶん中井英夫あたりの作品?

 で、結局この作品は、これで完結していない。“わたしは日本に帰ってきた、矢吹駆を殺すために N・Mの日記から”って思わせぶりな前ふりは何?もーう、こーんな厚い本読む暇はないのに何とか読み上げたらプロローグだって。また次読まなきゃならないんじゃない。しかも、私は知らなかったのさ、『哲学者の密室』のあとに『オイディプス症候群』と『吸血鬼の精神分析』という矢吹駆ものが出ていることを。カッパノベルスでそのオイディプス探しまっさ。
 これだけ突然読んでも、面白くない・・・よね、たぶん。すみませんね、惚れた男ってものは他人にはとんとなんのこっちゃわからなかったりするわけで・・・。

BOOK
comment(0) 2008.12.22 23:01

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