著者 北村薫
出版社 文芸春秋
第141回直木賞受賞作。
この作家のデビュー作『空飛ぶ馬』をはじめとする落語家円紫さんとわたし(名前は出てこない)のシリーズが好きだった。日常の出来事の中の小さなミステリーを、円紫師匠が解き明かす、シリーズ最初は大学一年生だった“わたし”の繊細な感受性に対し、ああなんて粗雑なワタシだったことだろうとわが身を省みたが、北村薫はもともと高校の国語教師だったそうで、その小説の中に散らばる引用の原典探しというのも楽しみの一つだった。 栗本薫、高村薫、に続いて北村薫、と、この人も女性作家か?どっち?と思ったものだ。
本作は、昭和初期の、明らかに女子学習院だな、という女学校に通っている英子と、その周りの人々に起こる謎を解決するお抱え女性運転手ベッキーさん、という、環境を変えた円紫さんシリーズじゃん、とも言えないでもないが、まあそれはそれ。
英子とベッキーさんシリーズにも、気になる引用がいろいろ出てくる。いちめんのなのはな って誰だったっけ?続くフレーズはなんだったっけ?とか。
きらきらとひかるおおきなかたまり
―-大化の改新だな
あっちは鎌足よ。
なんて会話もある。おいおい。こちとら『日出ずるところの天子』も大方忘れてしまってそんなの頭に浮かびません。
シリーズ3作の中に緻密な伏線があって、最終章の歴史的大事件につながる。そうか、雪だ。ここに至るためのこのシリーズだったのか。
ベッキーさんこと別宮みつ子さんカッコ良すぎる。なんで運転手?とつい思ってしまう。
えーと、今ではすっかり知られていることですが、北村薫さんは男性です。念のため。