MOVIE+BOOK - 金魚生活              

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金魚生活

ファイル 136-1.jpg著者 楊逸
出版社 文藝春秋

 金魚生活って・・・読みたくなるでしょう、それは。タイトル勝ちというか。
 
 中国語読みでは魚という字を余という字と同じ音で発音する。で、物が余る=豊かということで魚は縁起のいいものとなっている。で、金魚といえば金が余るとなるわけだ。
 
 レストランで働く玉玲は、そこの金魚の世話係でもある。43歳の時旦那が車の事故で死に、今は50を過ぎているが今もなかなかの美人である。日本で結婚し働いている娘が出産するので、手伝いに来てほしいという。
 日本語がわからない玉玲が、日本行の飛行機の中で出会った北京出身で日本人と結婚している森田という夫人、娘のアパートの隣人のおばさんとのそれぞれなんだかちょっとズレてる交流があったり、娘に日本人との再婚を勧められてお見合いすることになったり。まあそうはいっても娘には話していないが中国で夫の友達だった男(うだつの上がらない)男と同棲している。

 お見合いと言っても無礼な状況もある。3人目の人は漢詩の愛好者で少し中国語も話す。心が揺れる。李白の詩を吟ずることは日本人にとっては教養だが中国では小学生で習うので、会話が進む。ここに出てくるエピソードで、『静夜思』牀前月光を看る 疑ごうらくは是れ地上の霜かと  頭を挙げては山月を望み 頭を低れては故郷を思う の、山月の部分が中国では明月である という話についてはしばらく前に日本の高校生?だったかその研究をしたということが新聞記事になっていたはずだ。おまけに最初の看明月の部分も明月光となっているバージョンもあると、以前通っていた中国語教室でも話題になりましたのさ。興味のない人にはなんのこっちゃでしょうが、中国語学習者の私としてはこの見合い相手のおじさんの気持ちがよくわかりますよ、心弾んだことでしょう。玉玲だってつい夢想する。・・・が。

 この小説の、リアルなんだけど変なおかしみ、例えば張芸謀の映画『至福の時』の感じによく似ている。中国出身の作家の言葉の使い方が、間違いではないけれどどこかちょっと変なところも、結構重い事情もはさみながら淡々と進んでいく気配に加担している。

 なんかね、まいったぜ、と思ったのですよ、読み終えて。この短い小説の中で、文化の違いや、人間性や、人生が描かれていることに、ということかな。

BOOK
comment(1) 2010.04.14 22:31

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atcon 2010.04.16 08:54 edit

面白そうですね。「金魚」の意味も、へーそうなんだあ~と驚きました。李白の詩も小学生で習うのかあ・・・漢文は苦てだったなあ、私は。でも今、すごく中国語に興味があります。日本語のルーツだものね。読んでみます。