MOVIE+BOOK - 音もなく少女は              

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音もなく少女は

ファイル 148-1.jpg著者 ボストン・テラン
文春文庫

新しく本を買うのはしばらくやめようと思ったばかりなのに、空き時間に書店に入ったら、出会ってしまった。帯に“いい小説だ。心に残る小説だ。”と、北上次郎の言葉があったのだ。北上次郎の書評でこんな風にほめられてる場合、私の好みに合致する確率は高い。

冒頭に、一通の手紙。私は殺人の隠ぺい工作の手助けをしました、と始まる短い手紙。そして①54歳のブロンクスの女性店主、麻薬の売人を射殺、というニュース。②21歳のチャーリーと17歳のイヴが、イヴが住んでいる建物の屋上に毛布を広げて空を見上げ、みずみずしい恋のシーン。

その三つのエピソードがどんなふうにつながっていくのか?

とんでもない最低の環境(ろくでなしの夫を持つ無学で信心深いクラリッサ、耳が聞こえないその娘イヴ、ヒットラーの時代、断種法により聾者の子を身ごもったために子宮を摘出された経験を持つフラン)、最低の男たちとの係わり、その中で女たちが、強い絆を結び、生き抜き、そして何が起こるのかは、どうぞ読んでください。クラリッサとフランの墓碑銘に、
 女、姉妹、友達、母親
と彫られるシーンがある。心身に深い傷を負った女たちの、(何かを守るための)靭さを、静かに描いて、本当にいい小説です。原題は『WOMAN』ですが、翻訳タイトルにまず魅かれるよね。

BOOK
comment(1) 2010.08.09 10:48

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atcon 2010.08.10 12:15 edit

私もよくタイトルに惹かれて、買ってしまう本ってあります。
今も読んでいる本もそう。「肩甲骨は翼のなごり」というタイトルです。ちょっといいでしょう?
でも読んでみると児童書のようです。小学高学年向きかな。児童書は苦手だなあと思いつつも読み続けていますが・・