MOVIE+BOOK - 愛おしい骨              

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愛おしい骨

ファイル 169-1.jpg著者 キャロル・オコンネル
創元推理文庫

ホッブズ家の兄弟が少年だった時、天使と呼んだ人が(頭のいかれた老神父)いた。ある日、二人で森へ出かけ、写真の天才だった弟が行方不明になった。

20年の時がたち、家政婦が兄オーレンをその家に呼び戻す、父が危篤ともとれる手紙によって。カリフォルニアの森に面した小さな町、そこでは携帯電話の中継塔が建てられていない。
父は元気だが、弟が少しずつ帰ってきていた。弟の骨が。

小さな街の住人のそれぞれに秘密がある。どこか異常なものがある。ちょっとした言葉、エピソードが、のちに、あー!と気づかされる。アル中の妻を、狂おしいほど愛している弁護士、夢遊病の中で架空の箱を抱えて「うちの子がいなくなってしまったよ」と話しているオーレンの父。

ゴシック小説のような設定でありつつ、狂言回しのように小さな老家政婦が活躍し、幼馴染みのかつての少女は大人になって再会した瞬間にオーレンを蹴っ飛ばし・・・。

ふいに大切な身内を失った時、残された者が感じる罪悪感、その深い痛み。

それぞれのパンドラの箱が開いていく。

読み飛ばすことはできませんよ。むしろフィードバックしながら読むことになりそう。もしも頭の中で地図を描くことができるなら、この町を箱庭に思い描いて住人を住まわせて、映像化しながらじっくり読んでみるのがいいと思います。
『このミステリーがすごい!2011年版』1位。すでにこの欄で紹介している「音もなく少女は」が2位。
この、御伽噺のような街の造型のせいでもあるが、異形の住民たちばかりなのに詩的な美しさが漂うこの小説を、原文で読むだけの能力が欲しかった・・・。

BOOK
comment(1) 2011.02.15 12:34

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atcon 2011.02.16 09:05 edit

うーん、これも面白そう。読みたい本が溜まっていく。。。