MOVIE+BOOK - ワルツ              

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ワルツ

ファイル 197-1.jpg著者 花村萬月
角川文庫

上中下三冊、一気に読み進む。

戦後の混乱期の日本、元特攻隊員の城山、実は朝鮮人留学生の林、東京大空襲で両親・妹を亡くした美しき岡崎百合子、この3人を中心に描かれる任侠の世界。・・・と一言で言うと、映画やドラマでよくある世界のようだが、いやいや、馬鹿にしたもんじゃありませんぜ。

かの戦争中に従軍慰安婦という名の女性たちがいたことは知っている。かつて植民地だった朝鮮半島からそのために連れてこられた女性たちが今でも日本政府に対し叫びを上げている。が、戦後すぐ、日本に駐留するアメリカ人兵士のために同じような組織を国が企画し、性の防波堤として提供した、なんて知っていた?警視総監・坂信弥が駆け回り、大蔵省主税局長池田勇人が資金を出して、と、実名で書いてある。女子事務員募集 年齢18~25歳まで 宿舎、被服、食糧支給 などと募集を出したのだそうだ(頼まれもしないのに)。

特攻崩れの城山は、なにがしかの金と煙草でヤクザ殺しを請け負う。それを依頼した館岡組利根川の名を名乗って。
何も手を染めずに利根川は名を上げる。
その場に居合わせてすべて目撃していた、左頬に傷のある美貌の男、林。
すでに余生を送っている、のであるらしい、欲と無縁の男、城山龍治。
新宿に流れ着き、偶然のことから館岡組に身を寄せ、組長澤村の妻、姐と呼ばれることとなる百合子。こんな女いねえよ、と‘中’を読み終えてつい口に出ちゃったけどね。男の理想を絵に描いたような。
それを言うなら、澤村だって城山だって、男が男に惚れる、といった男でありますのさ。
賭場の仕組みだとか、金の動きだとか、はあそうだったんですか、な(一般人には日常役立つことはない)知識も得られる。

任侠の世界だ。個人としての付き合いがどうあろうと、仇は取る。なんでだよ、と素人の女としては言いたいことが次々起こる。いやその前に、きったねえ…物理的に汚いこと、血みどろ満載、そんな世界に近づきたくもない女性にはお薦めしませんが、帯にもあるとおり、現代エンターテインメントの傑作には違いない。

時に、昔の政治家は器が大きかった、それに比べて今は、などと目にすることがあるが、トンデモ政治家は昔も今もいくらもいるようだ。などと思いもする小説でもある。

BOOK
comment(0) 2011.09.28 16:57

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