著者 よしもとばなな
新潮文庫
アリシア・ベイ・ローレルの『地球の上に生きる』は、二十歳頃の私のバイブルのような本だった。いわゆるヒッピー生活、自分で手作りする、大地と主に生きる生活。当時実際に周りにいたヒッピー的な人たちの仲間になりたいと思ったことは全く無いけれど。
そのアリシア・ベイ・ローレルが表紙の絵を書いている。・・・ってすごい。
『王国』という3部作は、薬草茶を作る名人だったおばあちゃんと山で暮らしていた雫石という名前を持つ女の子が、都会へ移り住み・・・という物語。占い師でゲイの目が不自由な男・楓のアシスタントになって、少し浮世離れした少しカルトな展開、守る、守られる関係。
で、本作は、その雫石の娘、ノニの物語である。ノニの父は楓、そのパパは亡くなり、パパを愛していたパパ2がいる。
舞台はミコノス島。そこで運命の出会い。
こんな説明に意味がない物語なのですよ。
実は、王国3部作には今ひとつノレない私であった。が、ノニのこの物語はすっと読めて、うん、おいしいお水、という感じ。
私の周りの奄美がルーツという人の中には、ちょっとした超常現象、スピリチュアル体験が身近に起こっている、ということがさほど珍しくない。霊の存在を感じるとか。
沖縄や台湾も舞台になるこの物語の、ファンタジーな展開は、その場所、その人の資質によっては、ありえなくはない気がしてしまうのです。
好きな人、わからない面白くないという人、分かれてしまうでしょう。
まあ、だからアリシアのあの手書き文字の本を読んでなにかその中の手作りを試したことのある人なら、この物語(全然どこにもたどり着いていない話だけど、今のところ)が好きなのではないかと思います。
自分の人生を生きる、とは?という話、かな。