MOVIE+BOOK - 「イルカ」よしもとばなな              

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「イルカ」よしもとばなな

たまにはベストセラーを、と、噂の本屋大賞『東京タワー』リリー・フランキーか、あの劇団 ひとりの『陰日向に咲く』かどちらか読んでみるつもりで書店に行ったのに、買ったのはよしもとばななの新作「イルカ」だった。
十いくつ年上の女性ユキコと長く付き合っている五郎と、小説家のキミコの出会いがあって、妊娠ということが起り、結婚はしないけれど出産する、と短く言えばそういうお話。
あっさりと淡々と性的に放縦な人が出てくることがよくあるばななさんの小説、以下はたとえば「イルカ」におけるその種の表現の例。
☆当時あまりにもやりまくりすぎて、今は肉体関係を結ぶことは盆暮れ正月にもない
☆たいていの人はなんだかんだ言って、セックスのマナーが気持悪いのだ。なにで勉強したかわかってしまう。人間相手に勉強した人は意外に少ない。
☆「ええと、失礼ですが、あの時期に俺以外の人と寝ましたか? 他に可能性のある男はいますか?」
そして、超自然的な、オーラの泉的なことがこの小説の中でも当たり前のように起っていく。イルカには人間の心を読む超能力があると言う話をよく聞くが、3回目のデートで 水族館に行ってイルカをみたその夜、五郎と寝た、というエピソードがあるだけ、それでこのタイトルになる。
たとえば「キッチン」でも、肉親ではない人たちとの擬似家族関係のようなことが描かれる。そしてある種、浮遊・変動するであろう関係、のなかでの信頼というようなものが 描かれる。
☆「私たちにはこういうフレッシュな生き物が必要だったのね!」と妹は何度も言った
というシーンがある。
私にもね、こういう、命の、光の、物語が必要で、梨木香歩の「沼地のある森を抜けて」や、 この「イルカ」にふっと引き付けられたのだと思う…高齢家族との、滅びに向かう日常のなかで。そして、今生における我が身の人との関係のありようを反省し、来世にはもう少しまっとうに潔く、と心するのでありましたよ、いや、私事にて失礼。

BOOK
comment(0) 2006.05.08 14:40

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