作 リュドミラ・ウリツカヤ
訳 沼野恭子
新潮クレストブックス
赤ちゃんなのか子供なのかわからないような幼い時からソーネチカは本の虫だった というのがこの本の最初の部分である。いかにもそういう子供だった私としては、どうにもやはり読んでみたくなるのであった。
ソーネチカは、図書館の司書という幸せな職を得、広大な書物の海を泳ぎながらその価値を見定めることが出来るようになる。
ある日、第二次世界大戦が始まる。疎開した地でも図書館の地下書庫と言う憩いの場所を見つける。そこで、有名な画家ロベルト・ヴィクトロヴィチと出会い、見た目のぱっとしない女の子だったにもかかわらず唐突にプロポーズされる。
年の離れた夫であり、反体制的な芸術家である年の離れた夫との結婚生活は、貧しいながらも幸せだった。一人娘が大きくなり、やがてヤーシャという美人の友達を連れてくる。
それから、その後の展開(とても静かな、大きな)、ソーネチカの対応、それをもし男性作家が書いていたとしたら、血が通ってないうそ臭い女の姿になっただろう。はー、男の理想ねー、勝手になさい、みたいな。
女性がその姿を生み出すと、そんな人がいたのだ、なんと自然にそう生きる人が、と、静かに受け止めてしまう。
あまり長くない小説である。その中に、ソビエト時代の社会に対する批判的な視線もありつつ、心鎮められる。
新潮クレストブックスにはほかにこんなものがあります。http://www.shinchosha.co.jp/crest/さて次はどれにするかな?