MOVIE+BOOK - サウスバウンド              

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サウスバウンド

ファイル 70-1.jpg
小説
奥田英明 著
角川文庫 上下巻

映画http://southbound-movie.com/
監督 森田芳光
出演 豊川悦史 天海祐希

 管理人actonさまお勧めの奥田英明「サウスバウンド」です。小説については、読み始めこそ父親語る全共闘世代言語が嫌いな私にはつらいものがありましたが、いや、面白かったです。ただの過激派バカ(こんな言葉はありませんが)ではない、最近の環境問題をテーマとするさまざまな動きについて時に胡散臭く感じられたりすることなどがきちんととらえられた、作品でありました。
 元過激派で破天荒な父親を持った子供たち、実はお嬢様だったのだがこれまた実は元活動家であった母親。世の流れになあなあで同調することの無い父親の故郷である、沖縄の西表島に移住することとなる。そしてそこでも開発業者や政治家相手に戦う日々となり・・・。最後のシーンが、なかなかファンタジーな匂いである。これ、『ティファニーで朝食を』は、カポーティの原作によると主人公ホリー・ゴライトリーはどうやらアフリカに行ったり“旅行中”の生活を送っているらしい結末になっている、ということを連想させる(のは私だけかも)。
 
 で、映画ですが。
 森田芳光監督作品は、佳作と駄作の波が大きい。で、佳作ではない。が・・・駄作と言うより、中途半端。
 予告編を見た時の違和感が、そのまま当てはまってしまった。まずここは、トヨエツ、ではない。破天荒だけれど彼なりに筋が通っていて、豊かであるからこの妻や子供が付いてくる、というキャラクターをやるのにほかに誰が?と思うとたとえばいにしえの坂東妻三郎、緒形拳、原田芳雄、うーん、松田優作・・・今の40代の男では?50代だけれど三浦友和なんて良いかもしれない。父性が見えそう。40代・・・佐藤浩市では?
 で、肝心な台詞が無い。その島が琉球に支配された歴史を持つこと、環境問題を高らかに口にすることでろくに仕事をしない言い訳にしている人間、など。だからただのやかましい全共闘オヤジにしか見えない。脚本の問題。

 とても良いのが島の警官役の松山ケンイチ。それと上原家が移り住んだ島の家はセットだそうだ。すごい。

 かつて豊川悦史・天海祐希・金城武で『ミスティー』という失敗作ありけり。この組み合わせがいけないのか?最後のシーンも、ニライカナイ求めて旅立つような風を感じない・・・。

MOVIE+BOOK
comment(2) 2007.10.27 00:05

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atcon 2007.10.27 09:27 edit

そうですか、やっぱり原作を上回る映画って少ないですねー。
主役はトヨエツではない、と思っている人は多いと思う。私も原田芳雄がもう少し若ければ彼かな、と思いました。
トヨエツは好きですけど、役者の層が薄いですね日本映画界は。
原作者の奥田英朗は、「モスキートコースト」をモチーフにして、破天荒な父親に翻弄される家族の話を書いた、みたいなことを言っているのをどこかで読みました。なるほど、って感じです。
ラストシーンは私のイメージでは「蜘蛛女のキス」の最後の場面、海に漕ぎ出すカヌー(ボートだったかな?)、が遠去かって行く、あの幻のような美しく切ない場面なんですが・・・・ま、映画は観ないでおきます。映画館でキレルかも知れないから。

あある 2007.10.27 14:51 edit

蜘蛛女のキスの最後?覚えてない・・・むむ。

私はある時期からトヨエツ駄目になってしまったので、なおさら。「顔」とか「ラブレター」の彼はいいけど。
原作と違う映画にするか、きちんと精神を踏まえた映画にするかどちらかだろうと思う、でも形だけの感じ。

喫茶店の詩の朗読会のシーンがあるんだけど、それはずしたら必要なものを入れられたのに。