MOVIE+BOOK - 時が滲む朝              

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時が滲む朝

ファイル 98-1.jpg著者 楊 逸
出版社 文藝春秋

 同じ地区で育ち、優等生だった二人梁浩遠と謝志強が、1988年大学に進学する(まずこの時点で、その当時の中国では成績によって各大学に割り振られるシステムであったらしいことに驚かされる)。若い大学教授、女友達などに影響を受けるうち民主化運動へ、天安門事件へ、と流れていく。その天安門の事件によってではなく、労働者たちとの口論、乱闘の末退学になる二人。
 それぞれ別々の道を歩くことを余儀なくされる人々。
 中国残留孤児の娘で中国に戻って勉強をしていた女性と結婚し、日本に渡った梁浩遠(日本で祖国の民主化運動をしていた人たちの中には北京オリンピック開催反対を唱える人もいたらしい、これまた驚き)。オリンピック開催前夜、梁浩遠と謝志強は日本で再開する。

 日本語を母国語としない女性によって書かれていることで話題になった。中国のこの20年の流れと言うのはものすごい激流である。その大きな流れとそこに生きる人々を実に淡々と描いている。ひとつひとつのエピソードを、別の小説として描き出せるはずである。なんというか、その淡々とした描き方の中に、小説のタネがぎっしり詰まっている。この人にはいくらでも描き出したいことがあるのだろう。

 

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comment(0) 2008.08.30 10:06

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