著者 マイケル・アレン・ディモック
出版社 早川書房
再読。
二階の瓦が一枚落ちて雨漏りが起こり、ふと気付くと壁一面の本棚の向こうの壁に雨がしみて・・・という事件があったために、この本を目にした。全く記憶になかった。
読み返すと、フレースなりエピソードなりに覚えがある。ストーリーは完全に記憶から欠落。
精神科医ケイレブは、人を猫型と犬型に分類する癖がある。タイトルはそこから。
家庭内離婚状態にある刑事シネスは、十代のころ、芝生に座ってザッパやジョプリンやB・Bキングを聞きながらマリファナ煙草を回し飲みした、という世代。野外コンサートで本物を、ってことよね。
ケイレブの家の本棚にはドストエフスキーからゾラまであり、多くはアメリカの作家フォークナー、ヘミングウェイ、スタインベック、アプダイク、ベロウなど、人ルの棚にはミステリ作家ドイル、チャンドラー、ハメット、ジョン・D・マクドナルドとロス・マクドナルド、それにグレンジャー、パレツキーなどシカゴの作家が並んでいるそうだ。
会計士が自殺を装って殺される事件が、まず起こる。
ケイレブはゲイであることがわかるのだが、ゲイであることで脅されるかのような事態になって、彼はいまどきそんなことがと一蹴する。最初にこれを私が読んだのがおそらく1995年、書かれたのが1993年、読んだ時に、ああ、そんなものなのか、と思ったことをよく覚えている。2010年の今でこそどこかの首相がゲイだと公言したとかゲイ同士で結婚したとか、国によっては政治家でも何の問題にもならないようだが、当時の日本ではまだ特殊なことと思われていただろう。
殺人事件の犯人探しとしてはさほどのものではないかもしれない。人間関係、社会性(まだエイズは不治の病の時代である)、いろんなエピソードが詰め込まれて、それが興味深い。
作家は男性名だが、実は女性で、この作品で新人賞を取っているが、その時の本職はシカゴ市営バスの運転手。なぜかその後翻訳は出ていないようだが、英語版は続編などあるらしい。