著者 中島京子
出版社 文藝春秋
143かい直木賞受賞作。
緻密に構築された、ちょっとミステリー仕立ての、佳作。
昭和初期の、中流の上?くらいのおうちに女中さんとして奉公することになったタキさんの回顧録の形で話が進んでいく。
赤い三角屋根の小さいおうちには美しい若い奥さんがいて、奥さんの連れ子の息子、少し年の離れたおもちゃ会社にお勤めの旦那さん、そして、気働きのすぐれた女中さんである語り手(書き手ですが)。
ほとんど戦争の影も感じられず、東京オリンピックの話が進んでいたころから、次第に戦争へと進んでいく時代にあって、このくらいのクラスのおうちではそんなだったんだろうなあ、というような、かなり優雅な戦争前夜暮らし。優秀な女中さんによって者が少なくなってからも、いろいろと工夫を凝らして美味しそうなお料理があらわれるのは、ちょっと真似させてもらいたいものがあります。
読み進むと、ん?という気配が・・・うーん、そうか。そういうことね・・・。
まあべつに、どんでん返しとかそんな大げさなものではなけれど、小さな、え?がいくつかあって。
『ちいさいおうち』というバージニア・リー・バートン作石井 桃子訳の絵本があるそうです。それも読んで見ようと思っています。
atcon 2010.09.15 08:30 edit
へえー、ミステリー仕立てなんですか。意外でした。私は絵本の方の『ちいさいおうち』を読んだことがあるので、本屋さんでカバーを見たとき、メルヘンチックなものなのだろうと思い、手に取ることもしませんでした。先入観を持ってはいけませんねー。面白そうな本ですね。