著者 あさのあつこ
小学館文庫
今頃何をぬかしやがる、と、一瞬湯だったのが二日前の話。久しぶりの店で、今更だけど、と前置きされてオーナーから昔男の言葉が伝わったとき。私事で失礼。
何十年と生きていれば、思い出したくない(傷ついたこと、傷つけてしまったこと)過去が無いわけがない。
92歳で死の床にある女性のモノローグ。その松恵には3人の子があり、娘の一人奈緒子は、父母どちらにも似ていない美女に生れついた。松恵の夫の今はの際の言葉が、“奈緒子は誰の子だ?”だった。
疑いをかけられ、父に受け止められずにそだった奈緒子は、愛を求め続ける恋多き女になる。
大ばあちゃんからひ孫の代まで、そしてひ孫の継母となる女性や、母殺しの罪を犯した男の、そこへ至る背景、など、そのどれかが、読む者にとって、生きてきた道のどこかの傷につながるだろう。
ああ、それにしてもほんとうに、いいお日和です。
とても美しい一日です。
と、終わる物語。
ジャケ買い(という言葉も、レコード時代の死語となったけれど)ならぬタイトル買いした一冊。