著者 よしもとばなな
文春文庫
久しぶりに読むばななさん。しばしば身近な誰かの死ということが根幹にあって、そこから始まる、が。カルトな雰囲気もばななさんの作品には珍しいことではない、が。
なにしろ亡くなったママは魔女だったという。ママと双子のおばさんと、ある日を境に会わなくなり、いとこの昇一とも会わなくなった。そのいとこが訪ねてくる。おばさんは、“私はお姉さんとは縁を切ったけれど、由美子ちゃんのことはドロドロした世界から助けてあげられなかった、あの子を助けてあげて”と遺言に残したというのだ。
成人している(と思われる)由美子ちゃんは、なぜかそこそこ周りに恵まれ、お金をくれる元ボーイフレンド(イタリア人かもしれない)がいたりする。地に足が付いている生活ぶりでは無い。
魔女だった母からかけられたと思われる呪いを解くために、昇一と過去をたどる旅に出る。
ずるいよ、ちょっと、と、いう仕掛けが、最後に現れるのだが、それを言っちゃあ・・・なので。まあ、ファンタジーな仕掛け。
ばななさんは子どものころに目が悪くて、治療のために全く見えない状態で過ごした時期があるという。そのせいか?或いは彼女の両親の結婚にまつわることのせいか?何か深く心に傷を負う事態があったようだ。実際に文庫版後書きにもそれらしいことが書いてある。
なにか絶望の淵のようなところにいて、だからこそ淡々と生きていて、というシチュエーションでしばしば描かれるように思う。
ある種の、再生の、物語。