MOVIE+BOOK - うほほいシネクラブー街場の映画論ー              

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うほほいシネクラブー街場の映画論ー

ファイル 201-1.jpg著者 内田樹
文春新書

この本を知ったのは金城武ファンサイト、『不夜城』評の中で、チョウ・ユンファを継ぐ亜洲映帝は金城君だ、と出ていると紹介されていた。

もちろん本人によると、アジア映画専門ではない。ハリウッド、スペイン、日本、台湾、新作も旧作も、様々な分野が取り上げられている。そして、本人が最初に断っていること、「あらすじ」「バックステージ情報」「監督、プロデューサーなどの自作解説」には触れず、「映画とそれ以外のものとの関連性」を論じる、のだそうだ。

これを読む前の夜、NHKBSで小津安二郎の『秋刀魚の味』を見た。定点観測か、と突っ込みたくなるカメラ、そして、なんちゅうスケベオヤジどもだこいつら・・・という笠智衆おとうさんの同級生ども、淡々と普通に過ごしてまんまとなんだかしみじみ見終わったのだが。
そうか、あのオヤジ共はほかの作品にも出てきていたか。この時代だから男子校育ちの最高学府出の中流の上クラスのオヤジだちが同級生で集まるとこうなるのか。おいおい勝手に仲間を殺すな、みたいな冗談も淡々と出てくる。ちょっと頭のいい連中にありそうだなあ。そして、こんなおじさんたちがなんだかんだ口出しして縁談を進めたからこの時代娘たちは結婚していったのだそうだ。それぞれ娘たちは結婚したがらない理由を持っていたらしい。

後期の黒沢映画はつまらない説、まことに大賛成。仲代達矢という人は演技ということを何か思い違いしている、『椿三十郎』の時を除き、という説にも大大賛成、であったが、後の記述に、『天国と地獄』の刑事役の仲代達矢がとてもよいことに気づいて訂正している。えーと、山崎努が出てた、くらいしか記憶にない・・・いつか見直そう(ごく最近の仲代サンは死んだような冷たい目をしていないと、私は思っています)。

『男たちの挽歌』評の中で、チョウ・ユンファいついて「暖かいエネルギーを放射できる人」と言っている。わかっているなあ。その章の最後を引用する。ほんとうに優れた俳優は、くだらないメロドラマを感動巨編にできるだけではない。彼らは無生物に生命を吹き込むことだってできるのだ。

侯孝賢の台湾映画の話とか、そうたくさんは出ていない中華圏の映画評が、私にはドツボである。その一つ、『ウォーロード』について、葛藤する人間‐長男のジェット・リー、次男のアンディ・ラウ、葛藤のない人間‐三男金城武の間に起こる悲劇、諸悪の根源はウーヤン(金城演じる三男)、と言われれば、そのとおりだ・・・。

そして、村上春樹の長編について、『コンスタンティン』評の中で述べていて、(ご存じなかったですか?)と書いてあるのだが、存じませんで、ほんとにまあ指摘されれば誠にその通りで、なんとうかつだったことか。
それについてはよろしければ書店にお運びください。

BOOK
2011.10.26 12:08

Comment List

atcon 2011.10.26 23:43 edit

面白そうな本ですね。
金城がチョウ・ユンファの後継者っていのうは、納得できるけどしたくないって感じです。
誰の後継者でもない金城であって欲しい。
金城の、軽ーいB級的作品を観たい。あんまり大御所になって重厚な役ばっかりして欲しくない、という勝手なファン心です。

あある 2011.10.27 09:22 edit

亜洲映帝と呼ばれる立場を継ぐのは、という意味ですよ、チョウ・ユンファの後継者という意味にはどうしてもなりませんよ、全くその持ち味が違うもの。
本人は、昔からずっとコメディをやりたいと言っている。あー、B級アクション典型『探偵はバーにいる』テイストで、まだ動けるうちにお願いしたいなあ、私も。

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