著者 桜庭一樹
出版社 東京創元者
時は戦後しばらくたった時期の鳥取県に、『辺境の民』に置き去りにされた女の子がいた、それが後に赤朽葉家の千里眼奥様と呼ばれる万葉、そしてその娘毛鞠、またその娘瞳子の三世代にわたる物語。
1953年に10歳ぐらいだった、と言うのだからそんなには古い時代のことではないのだけれど、まだまだ山陰などにはいわゆる山の民、文明と離れて暮らしている民がいたという設定。
わたくしこういう物語は大好きです。
戦後の昭和の時代の変遷が、明治大正の時代のことであるかのような奇異な或いはファンタスティックな、事件と絡めて描かれていきます。で、作者はおそらくわざとそうしているでしょうがなんだか時々変な言葉遣いというのか、ん?な文章あり、また、ああ?な表現あり、ところどころ引っ掛けどころを作って書いているのねあなた>桜庭一樹様。
突然ザ・ピーナッツの恋のバカンスの歌詞がまるごと出てくる60年代、学生運動の70年代、暴走族からバブルへの80年代、バブル崩壊の平成、と、思えばいろいろあったのね、の流れの中、脇役の女性までさまざまな生き方が描かれて、うーん、これは今年のベストⅠ候補に挙げておきましょう。
ただ、鳥取が舞台だけれど、伝え聞く鳥取の様子とはちと違うぞ…と思ったら、桜庭一樹は、米子市生まれのしかも女性でした。鳥取市とは違うのかも・・・。