著者 瀬尾まいこ
出版社 新潮社
瀬尾まいことい言う名前は「幸福な食卓」というタイトルとセットで記憶にインプットされていた。けれども作品を読むのはこれが初めて。
僕は捨て子だ。子供はみんなそういうことを言いたがるものらしいけど、僕の場合は本当にそうだから深刻なのだ。という書き出し。
それが子供のありがちな妄想なのか事実なのかあいまいなまま母と子の生活が進行し(母にへその緒を見せてくれと言うと卵で産んだのだと言う)、母の好きな人の話、学校に出てこなくなった同級生の話、おいしい食事、などあって、母がその好きな人と結婚、姓が変わり新しい姓に慣れたころ、母さんのお腹が少し大きくなる、あれ、今度は卵で産まないの?と聞くと同じことを二度したってしょうがないでしょ、と言って、出来損ないの昼ドラみたいな話なんだけど、と、どうして主人公育生と母さんが家族になったかについての話を始める。
少しおかしな母さんのいる物語詩のような繊細なお話。
もうひとつ収録されている「7's blood」は半分血がつながっている年の離れた姉弟のお話。これも家族とは、家族のつながりとは?というテーマが流れて、しーんと痛い。
もうとっくに作家デビューしていた2005年に正式に教員採用試験に受かって今も中学校の国語の先生だそうです、瀬尾まいこさん。
とても好きな作品でした。これがデビュー作だそうです。これからこの人の物を読み進んでいくだろうと思います。今年映画化された「幸福な食卓」のビデオも見ます。