【元記事】22年で稼働はたった250日。 廃炉される「もんじゅ」に投じられた金額に衝撃

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posted on 2016/12/21 18:03

政府は12月21日午後、「高速増殖炉もんじゅ」の廃炉を正式に決定した。

使用済み核燃料を再処理し、抽出したプルトニウムをウランとともに使う「高速増殖炉」。

使った以上のプルトニウムを得る「夢の原子炉」は、資源に乏しい日本の核燃料サイクルを担う存在として、膨大な税金が投じられてきた。

BuzzFeed Newsは、運営主体の日本原子力研究開発機構や各メディアの報じたもんじゅにまつわる数字をまとめた。

1. これまでに投じた予算:約1兆2千億円

建設費は約5900億円。もんじゅの出力は28万キロワットだが、一般的な原子力発電所(出力100万キロワット)の建設費の約2倍だ。

日本原子力研究開発機構はこの理由について、もんじゅが「研究開発の中間段階の原子炉」であり、「経済性の見通しを得ることではなく、高速増殖炉で安定した発電ができることを実際に確認することに主眼があった」ため、としている。

2. これまでの稼働日数:22年間で250日

1985年に建設工事が始まり、1994年4月に初めて臨界に達したもんじゅ

巨額の建設費がかかったのに、この22年間で稼働したのはわずか250日だ。

1994年の臨界後は205日間運転をし、送電も開始した。しかし翌年12月、冷却材のナトリウムが漏れ出す事故が発生し、運転は中断した。

改造工事などを経た2010年5月には試運転を再開し、臨界を達成。今度は45日間運転したが、8月に炉内中継装置の落下トラブルが起き、再び中断を余儀なくされた。

その後、2013年には原子力規制委から事実上の運転禁止命令も受けた。

3. 1日の維持費:5千万円

福井県の西川一誠知事(手前)に高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉方針案を説明する松野博一文部科学相(時事通信)

動かない原子力発電所。にもかかわらず、巨額の維持費がかかり続けていた。

1年間(2016年度予算)で見ると、「維持管理及び安全対策に要する経費」が185億円。そのほか人件費に29億円、固定資産税に12億円かかっている。

4. 再稼働費用:5400億円

もんじゅを再稼働するためには、耐震化などの対策が必要だった。

文部科学省の試算では、福島第一原発事故後に強化された原子力規制委の新規制基準が適用された場合の経費は1千億円以上

燃料をつくる茨城県東海村の工場の対策も欠かせず、準備期間は最低8年を要する。維持費やその後の運転費も含むと、5400億円かかる見通しだ。そのために廃炉が選択された。

5. 廃炉費用:3750億円

文部科学省の試算では、もんじゅの廃炉費用は3750億円。普通の大型原発の廃炉は800億円かかるため、約5倍だ。

ただ、もんじゅの冷却材であるナトリウムを取り出す技術はまだ確立していないなど、課題は大きい。費用はさらに増える可能性もある。

廃炉には30年かかる見通しだ。

6. 日本のプルトニウム保有量:約47.9トン

日本国内には10.8トンの、国外(イギリス、フランス)には37.1トンのプルトニウムが保管されている。

核兵器を持っていない国のなかでは、最大だ。プルトニウムは数キロあれば核兵器をつくることができるため、あまり持ちすぎてしまえば、国際社会から懸念されてしまう。

7. 放射性廃棄物を地中に埋める期間:10万年

フィンランドの放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」=Sam Kingsley / AFP / Getty Images

原発で出た核のごみ(放射性廃棄物)は、地下深くに埋める「地層処分」をする必要がある。

政府は先月末、原発を廃炉した場合に出た廃棄物のうち、制御棒などの処分方針を決めた。

地下70メートルより深いところに埋め、最初の3〜400年間は電力会社が管理をする。その後は国が10万年間、掘削を制限するという。

使用済み燃料を再処理した時に出る高レベルの廃棄物も、地下300メートルより深いところに、やはり10万年間埋めることになっている。候補先は、まだ決まっていない。

もんじゅが廃炉になると、「核燃料サイクル」が破綻する。

プルトニウム消費先の一つである「もんじゅ」が廃炉になると、一体、どうなるのか。プルトニウムは普通の原発の「プルサーマル発電」で使うこともできるが、それだけでは47.9トンの消費は追いつかない。

そのため、政府は「もんじゅ」に代わる高速炉開発を今後も進める方針だ。2018年をめどに、開発の工程表をまとめる。

松野博一文部科学相は会見で、「もんじゅ」について「私自身は一定の成果だったと判断している」と述べ、「結果責任へのけじめ」をとると表明した。

約5カ月分の大臣給与と、賞与を自主返納するという。