「ドーン/平野啓一郎」読書途中の感想文

ああるの「映画と読書」に紹介されていた「マチネの終わりに」に触発されて、平野啓一郎さんの本を読みました。私にとっては、初めまして!の作家さんです。

ブックオフに赴き、数ある著作の中から迷った末購入したのが、本書「ドーン」。

『DAWN 』 講談社文庫:2012年 Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。

舞台は2033年のアメリカ。近未来小説です。
その10年程前には東京大震災があった、という設定になっています。
タイトルの『ドーン (DAWN) 』とは、人類初の有人火星探査宇宙船の名前です。
主人公・佐野明日人(サノアスト)が、 この 『ドーン』 のクルーとして火星に行き、火星でのミッションを終えて地球に帰還した、ところから物語が始まります。

人類初の火星探査に成功し、一躍英雄となった宇宙飛行士・佐野明日人。
しかし、闇に葬られたはずの火星での”出来事”がアメリカ大統領選挙を揺るがすスキャンダルに。さまざまな矛盾をかかえて突き進む世界に「分人」という概念を提唱し、人間の真の希望を問う感動長編。

「BOOK」データベースより

『ドーン』を読んで私が気になったワードは、以下の5つ。
可塑整形、 散影 、添加現実 、無領土国、分人主義、 

可塑整形:顔の中に塑性シリコンという物質を埋め込んで、粘土を捏ねるように顔を自由に形成していくことができるというもの。
これによって、人はいくつもの顔を持ち、使い分けることができるようになる。

散影:防犯カメラの映像全てがネットに繋がって、誰でも(一般人でも)閲覧できるようになっているプログラムシステム。顔認証検索機能がついているために、誰がどこで何をしていたか、いま何をしているか、検索すれば一切丸見え。プライヴァシーなんて無いに等しい。

添加現実(AR) :現実に存在しないものをコンピュータの三次元映像として付け加えること。亡くなった人であっても、その人のDNA情報や解剖的データ、生活環境などの情報を駆使し、本物そっくりのAR人間として蘇らせることができる。

無領土国 :文字通り領土を持たない国家。
現物としてのお金が無くても通用する仮想通貨と同じように、現実の領土は無くても国家として統治権を持つ政治的共同体。

分人主義dividualism) : 略して ディヴ と言う。
個人は一つの人格をもっているのではなく、 対人関係ごとに異なる人格を分けることができ、それは意図的に創りだしたり使ったりするのではなく、その場に応じて ディヴ は自然発生する。複数のディヴ の集合体が個人であるという概念。
正直、分かりにくい概念です。、、、、自分自身に置き換えて考えると、私も対面する人によって、相手との関係性、場の空気などに左右され、異なる自分になっているとは思う。
それはキャラを作っているわけではなく、自分を断片化し、決して丸出しにならないよう自分で制御しているのだと、自分では思っているのですが、、、、分人主義とは真逆の考え方かもしれません。

本書は640ページほどの長編ですが、宇宙飛行の過酷さを考えたり、登場人物のセリフや大統領候補者たちの演説内容に惹きこまれたり、読み応えがあります。

そして未来小説を読むといつも思うのですが、人類社会は常に進化しているけれど、必ずしも「より良い方向に進歩している」というわけではなく、ただ後戻りができないだけなんだなあ、と。

現在、520ページ目を読んでいるところで、実はまだ読み終わっていません。
いつも読了したらブログに感想文を書こうと思って読み始めるのですが、結局いつも書けないまま次の読書に移ってしまいます。
そこで今回は、読み終わる前に感想文を書いてみようと思いました。
今夜は結末に向かって残りの100ページ余りを楽しもうと思っています。

『中田敦彦のYouTyube 大学 』が面白い

令和元年も足早に過ぎ去ろうとしています。
令和上半期は、忙し過ぎてあまり読書する時間がなかった。
秋からは新しく得た趣味作業に熱中しているために、さらに読書時間がなくなりましたが、代わりに作業BGMとしてYouTyubeを視聴することが増えました。

そこで今回は、今月聞いて面白かった『中田敦彦のYouTyube 大学 』を紹介してみます。

正直、タレントユーチューバーなんて、ヤラセのバラエティ番組みたいな動画を配信しているんでしょ、とこれまで観ることはなかったのですが、 申し訳ない、それは偏見でした。

『中田敦彦のYouTyube 大学 』は、オリエンタルラジオの中田敦彦さんが、あらゆる分野の専門書(もしくは専門書の解説書)を読み解いて、学校の授業みたく解説する動画です。
スタイルとしては、テレビの『池上彰のニュースそうだったのか!! 』に近く、 池上彰さんの著書を取り上げることも多いようです。もちろん、池上さんよりはうんと砕けた口調ですね。
テレビと違って、取り上げるテーマに制約が無いからか、政治、経済、情報文化、歴史、文学、芸術、などなど多岐にわたります。
どの分野も無知な人間としての立場で、好奇心を持って猛勉強しているようで、聞いている方も分かり易く楽しく聞けます。

最近、1年振りにあった友人が、自分のガラケー携帯をみつめながら、
「5Gになったら、ガラケー使えなくなるんだって」と言うので、「え?どういうこと?」と私。
そのあと二人とも無言。
私も友人も、5Gという言葉は聞いたことあっても、それが何だか説明することはできなかったのです。
私はスマホを使っているので、5Gになったらナンカ今より通信速度が速くなるんだろうな、ぐらいの認識であまり興味もなかったのですが、急に気になって家に帰ってからPCで検索。そして 『中田敦彦のYouTyube 大学 』 を知ったわけです。

5G、確かに通信速度が速くなるのだけど、それはただスマホが便利になるっていうだけの話ではなかった。まさしくこれからの世界が変わる話でした。
そう遠い未来じゃない。
孫たちが大人になっているぐらいの未来。
その未来は幸せなんですか?って考えてしまいます。
たぶん幸せの価値観も変わっていくのでしょうから、今の私には想像がつかない未来です。

5Gになるとガラケーが使えなくなるか?という疑問については、この動画では分からなかったので、さらに検索してみると、下記サイトに答えがありました。

【ガラケー終了はいつ?】廃止のお知らせは本当?使えなくなったらどうするの?ドコモ/au/ソフトバンクの現状を解説

これによると、「2022年でガラケー終了」というデマが出回っているらしいです。
2022年にauの3G回線を停波するために、そんなデマに繋がったようです。使えなくなるのは「auの3G回線端末」を使った機種のみということですが、ユーザーは極少数。マニアレベルだそうです。気になる方は上記サイトを参照してみてください。

追記: 『中田敦彦のYouTyube 大学 』では、原発についての解説動画もありました。
【政治】まだ解決していない「原発問題」〜原発の歴史編〜①
【政治】国家や大企業の利権が絡む「原発問題」〜真相追求編〜②
これも分かり易く、秀逸です。当サイトの「原発は要らない」ページに掲載しました。

通畠義信氏、南日本美術展にて海童賞受賞しました!

画像は第74回南日本美術展カタログより転載

当サイトで紹介しています「鉄の作家」通畠義信氏が、第74回南日本美術展にて海童賞:空間造形部門優秀賞を受賞されました。おめでとうございます!
この賞は2017年、2018年に続き3回目の受賞となります。

今回の作品は「ハエの家2019 -冥界ニュース -」

会場には応募作品についてのコンセプトをまとめたファイル「一次審査用書類ファイル」が展示されています。
これから観に行かれる方には、是非そのファイルも手に取って開いて読んで欲しいです。
作品に関する基本コンセプトのほかに「仮想劇~冥界ニュース リアルタイム~」という寸劇の脚本がファイルされています。

舞台は「地底界放送局スタジオ」
出演者は、ニュースキャスター、コメンテーター、お天気屋お姉さん、そしてリポーターとしてハエ男が登場する劇です。
2ページくらいの短い場面でしたが、面白かったですよ。もっともっと読みたかったです。
通畠氏のマルチな才能を知ることができるファイルです。

第74回南日本美術展

2019年11月16日(土)~12月1日(日)
黎明館・鹿児島美術館


この「ハエの家シリーズ」は今回で最後になるそうです。
また新たな作品の登場を心待ちにいたしましょう。

「絶叫委員会(著:穂村弘)」を再読した

穂村弘さんの「絶叫委員会」を再読しました。
再読と言っても本棚から取り出して読み直したわけではなく、ブックオフで見つけて、愚かにも2冊目を購入してしまったわけで。

「未読の穂村弘発見!」と小躍りしてレジでお金を払い、寝る前に読み始めて1ページ読むごとに既視感を感じながらも読み進め、「読んでいる」「いや、読んでない」と自問自答を繰り返しつつ読み終わりました。

読書リスト」で確認すると、どうやら3年前の2016年11月に既読しているようです。二重購入を避けるために作成した「読書リスト」だったのに、頼りにならないヤツです。

本棚を見直してみると、1冊目の 「絶叫委員会」 が見当たらない。
おそらく3年前の11月と言えば、職場が辛くてもう辞めたい!けど辞められない!って時期だったから本を読みながら暖まろうと、お風呂読書に使ったため、ボロボロになってしまって捨てざるを得なかったに違いありません。
取り敢えず、本棚に同じ本が2冊並ぶことは避けられました。

それはともかく、何度読み直しても、穂村弘さんのエッセイは面白い。
お風呂が冷えた体を温めるように、穂村弘さんのエッセイは私の心を温めてくれます。

「絶叫委員会」は著者が日常の中で遭遇した印象的な言葉について書かれたエッセイです。
普段は聞き逃してしまいそうな何気ない言葉や、パニックに陥った時に思わず発してしまう意外な言葉、あるいは「それを言っちゃあお終いよ」的な致命的発言などなど。
一見、無意味にしか聞こえない言葉であっても、無意味さの中から面白さや愛や悲しさを取り出したりして、世界の奥行を垣間見せてくれる一冊です。

日頃、何かの言葉に違和感を持っても、それを言語化できない私はモヤモヤしながら、そのうち忘れてしまいます。
例えば、
「万一ご満足いただけない場合は全額ご返金致します」
というフレーズ。何だか不快に感じるのだけど、どこがどう嫌なのか言葉にすることができなかった。このフレーズについて誰かと意見交換することもなかった。それを本書の中で見つけたときには、あっ、と思いました。

「他人の主観に対してそこまで強気になれるのは自信の現れというレベルを超えている。サービスの顔をした恫喝に思えるのだ。」

P161「サービストーク」

そうそう、それ。私もそれを言いたかったのです。

「償いの雪が降る」健気な主人公を応援しながら読んだミステリ

大学生のジョーは、授業で身の回りの誰かの伝記を書くことになった。適当な身内がいないため訪れた介護施設で、末期がん患者のカールを紹介される。カールは30年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、仮出所し施設で最後の時を過ごしていた。カールは「臨終の供述」をしたいとジョーのインタビューに応じる。話を聞くうちにジョーは事件に疑問を抱き、真相を探り始めるが……。バリー賞など三冠獲得、衝撃のデビュー・ミステリ!

「BOOK」データベースより)

小説というのはシリーズ物でなければ、主人公が魅力的な人物なのか、自分好みなのか、読んでみるまで分からない。
テレビドラマだったら、好きな役者が出演しているとか、配役情報だけで観る気になったりするのだけど、小説はそうはいかない。

特に本書のようにこれが作家のデビュー作となれば、登場するのは全員未知の人物ばかりです。
読みながら登場人物の顔や性格を、書かれている情報を元に自分なりに想像して新人俳優に育てていくのは、これも読書の楽しみ方の一つです。
本書『償いの雪が降る』の主人公ジョーは、結構魅力的な若手俳優でしたよ。
イケメンではないけど、健気で勇気があって、優しく、まっすぐで。
性別こそ違え、ジブリ映画に出てくる女の子みたいに、応援したくなるキャラクターではないかと思います。

酒とギャンブルと男に溺れている母親。今で言う「毒親」の元で育ち、自閉症の弟の面倒をみながら、自立し明るい未来を手に入れるために、孤軍奮闘する主人公。私も応援しながら読み進みました。

同じ主人公で2作目も書かれているということなので、シリーズ化されるかもしれませんね。

シリーズ物と言えば、私は以前、パトリシア・コーンウェルの『検屍官シリーズ』と、スー・グラフトンの『キンジー・ミルホーンシリーズ』に嵌って、新作を見逃さず読んでいた時期がありました。
でも、『検屍官シリーズ』の方はある時から、たぶん10作目かその前あたりからか、全く読まなくなってしまいました。何故か主人公のケイ・スカーペッタに魅力を感じなくなってしまったのです。
ケイ・スカーペッタが人気女優に育ち過ぎたのか、私の好みが変わったのかは分かりませんが、シリーズ物といえど惰性で読み続けることはできないようです。

一方、女探偵『キンジー・ミルホーンシリーズ』については、キンジ―に飽きることはなく、1作目『アリバイのA』から始まって、18作目『ロマンスのR』まで読みました。
『S』で始まる次回作の刊行をずっと待ち続けたけれど、何故か日本では『S』から後は翻訳されることはなく、2017年、スー・グラフトンは亡くなってしまいました。
今では既刊分も全て絶版だということです。本当に残念です。
できることなら、アメリカでは既に刊行されている『S』から『Z』までを、日本でも翻訳刊行して欲しい。

女探偵キンジーは社交的なことが苦手で、人と会った時天気のことぐらいしか話題がない。キンジ―が「この世にお天気があって、ホントに良かった」と自嘲気味に思う場面が、何故かいまだに妙に忘れられない。