主戦場

http://www.shusenjo.jp/
監督・脚本・撮影・編集・インタビュー ミキ・デザキ
出演 トニー・マラーノ 杉田水脈 ケント・ギルバート 櫻井よしこ 吉見義明 戸塚悦郎

日系アメリカ人ユーチューバーによる作品。
従軍慰安婦とは、どういうものだったか?強制連行はあったのか?慰安婦は性奴隷であったか?それとも売春婦であったか?

日本人は偉い、ほかのアジア人とは違う、強制連行なんて日本人にできるはずがない、あれは高給取りの売春婦に他ならないetc.etc.
書店の表紙の顔で、ケント・ギルバートの人相の悪くなったことに驚いていたけど、なにゆえあのようは主張を持つに至ったのでしょうねえ。杉田水脈のぬらりと平然とした顔とか。そういう、日本第一主義のみなさんと、歴史の検証、研究している学者、慰安婦だった人の娘、などなどそれぞれの主張を織り交ぜて映し出す、実際のインタビューの声、表情。
兵士だった90歳を過ぎたおじいさんの言葉。

ある種、圧巻だったのは、日本会議の中心部にいるらしい加瀬なにがしの言葉。日本が戦争に勝ったので、アメリカの黒人は人権を持つに至った。その通りの言葉であったかはともかく、そういうようなことを言った時、小さな映画館が小さくどよめいた。勝ったんだって、太平洋戦争で、日本が。
こんな、脳だか神経だか精神だかどこかが決定的に壊れている人が、あの右翼主張集団日本会議のトップ付近にいるんだ。

戦後、平和憲法では冷戦時代に何かと都合が悪くなったアメリカが、巣鴨プリズンにいたA級先般と言われた岸信介を、引っ張り出して来て、首相に据える、と言うことがあったみたいだよー。知ってる人には常識なのかなあ。そしてその岸信介の孫、安倍さんがどんどん戦争できる国にしたがっているのねー。

別に劇場でなくてもいい、機会があったら観てください。なまじのフィクションよりすごいから。

The Crossing パート1 パート2

http://thecrossing.jp/
監督 呉宇森(ジョン・ウー)
出演 章子怡 黄暁明 ソン・ヘギョ 金城武 長澤まさみ 佟 大為

原題『太平輪』、実在し、1949年に沈没した船の名前。
日本人にとって、1945年の敗戦により戦争は終わっているが、日中戦争に勝利した中国では、その後も国民党と共産党の間で激しい内戦が続いていたのだ。

上海のダンスパーティで出会う将軍と銀行頭取の娘、台湾で恋に落ちる日本人女学生と台湾人学生(ちょっとこの時の金城・長澤には無理が…)、出征後、行方不明になった恋人を探すため、古郷から上海に出てき手従軍看護婦になった娘、そして、食料の配給を受けるためその娘と家族写真を撮る見知らぬ男。
3組の男女の運命が、戦場で、あるいは今まさに戦場となる寸前の場所で、そしてそこから脱出しようという船の上で、交錯する。

パート1の黄暁明は素敵です。軍医となり、沈没する船から子供を救い散っていく金城武は良いのです(日本語・台湾語・北京語のセリフを話しています)。ずっと人の好い佟大為はいい味です。
悪い映画ではありません。
が、中華圏では大コケしました。
編集の問題でしょうか。なんか視点がとっ散らかってしまうのですね。群像劇というにはそれぞれが際立ちすぎて。
灯火管制下、明かりを消して出航する、極端に過剰積載した客船だというのにそーんな、そーんなことでほかの船とぶつかってしまうなんて!と、思うし。

でもね、パート1の終わりにもパート2の終わりにも私はうるうる涙しました。内容は良いんだよ。女優のことも言えって?お金に困って身を売るチャン・ツーイーの造型がおしゃれすぎると思うぞ。まあ一組ぐらいうまいこと行って良かったよ。

ありふれた祈り

著者 ウィリアム・ケント・クルーガー
ハヤカワ・ミステリ文庫

あの夏のすべての死は、一人の子供の死ではじまった。
と、この物語は始まる。あの夏 の、子供。1961年に13歳だったフランクと11歳だったジェイクの兄弟。牧師の父親、音楽家の母。ミネソタの田舎の町。

その後も死が続くし、事件は起こっている、けれど、ハヤカワミステリと言うよりは、少年小説、私はブラッドベリの『たんぽぽのお酒』を想ったが、『スタンド・バイ・ミー』を思い出す人もいる、そんな物語。
原題『ORDINARY GRACE』。“今回だけでも、ありふれたお祈りにできないの?”と、娘の葬式の席で、牧師である夫に言う妻。

ロイ・オービソンとか、悲しき街角とか、そんな局が流行っていた時代、まださまざまな差別語が世にあった時代。

解説の北上二郎によると、この作家の『血の咆哮』がお薦めだそうだ。読みたいと思う、けれど、ウイリアム・ケント・クルーガーと言う作家の名前が記憶しにくいと思うのは私の脳の老化の問題だな、きっと。

黒の狩人

著者 大沢在昌
幻冬舎文庫

単行本が出たのは2008年だそうだ。その時代の、新宿。もう少し前、馳星周の『不夜城』の頃に比べてずいぶん落ち着いているらしい中華系黒社会がらみ。

『新宿鮫』のシリーズを読んでいたのはいつの頃だか。シリーズ途中までしか読んでいないので、晶との関係がどうなったかも知らない。で、その新宿鮫にも脇役で出ていたというが、もはや記憶にない佐江:警視庁新宿署組織犯罪対策課警部補、その補助員として試験採用されたという中国人:毛、そして野瀬由紀:外務省アジア大洋州局中国課職員を中心に、中国公安など絡んでくる。
先日、映画『新聞記者』を観たばかりなので、外務省の役人がスパイ活動のようなことを・・・してんのか?していてもおかしくないかも、少なくとも中国共産党配下の公安が日本の市井に紛れ込んでいろんなことをしているかも、など思う。
日本の美人外務省職員がそんなことはしていないよね、でも、上海のカラオケ店(日本だとカラオケバーかな)のおねーさんが政府とつながっていて情報が洩れる、と言うたぐいのことはあるよね。

中国人の死体が発見され、それがわきの下に“泰山”など山の名前を入れ墨している、と言うことが続き。

中国人の名前をちゃんと覚えられない、ので、理解がなかなか付いていかない。まあ大沢在昌らしいエンターテインメント、面白かった。中国語学習者としては、中国人の名前のルビが、訛ってるよ、どこの出身者に聞いたの?と気になるのだが。毛さんかっこいいよ!キャスティング誰だったらいいか、とあれこれ妄想するのに良いかも。新宿鮫だって映画の真田広之とドラマの舘ひろしじゃえらい違いだったけどね。

新聞記者

https://shimbunkisha.jp/
監督 藤井直人
出演 シム・ウンギュン 松坂桃李 北村有起哉 田中哲司

東都新聞の記者、吉岡に届いたある文書。そこには大学新設に関する情報が。と言う時点で観客は、某総理のお友達の某大学のことを思うわけで。
もう一人の主役、内閣情報調査室の官僚、杉原。政府の方針にとって都合の悪い情報を攻撃、コントロールするという使命を与えられ、葛藤している。

よく似た名前で出てくる、レイプ告発事件の女性、演技しているのは女優だけど、写真は、本人の詩織さんだったよね?『BlackBox』の。

映画の中のTV映像に、元文科省官僚の前川喜平さんや、この映画の原案となったものを書いた望月衣塑子さんなどの対談が出てくる。

杉原の尊敬する先輩が、ビルから身を投げて死ぬ。

吉岡という女性記者の母が韓国人と言う設定で、少し訛りがあるが、気になるほどではない。その父も記者だった。自分を信じ、自分を疑え、と言う言葉を残している父。

内閣情報調査室 というところの事情が完全にフィクションなのか、なにがしか事実がらみなのか、そんなところに関わっている人が近くにいたとしても、教えてくれないだろう、否定するだけだろうけれど。ツイッターでは実際、現政権寄りの意見を呟くアルバイトを募集しているようだ。
立場の違う二人の主役がいて、そこのところの飲み込みの悪かった私は、初めちょっと混乱した。が、どんどん緊迫していって、内閣情報調査室のボスの田中哲司が、怖ええ!『コクソン』の時の國村隼と並び立って勝つかもしれない怖さ。私から助演男優賞を進呈しよう。全然届かないけど。
松阪桃李はそもそもとてもうまい役者だし、シム・ウンギョンは、あれ?もうちょっと可愛い女優だよね、と思うほどに、ダサい加減のつんのめるような記者を演じている。最後の最後、スリルとサスペンスのピークで!おーい!
何と言った?その唇の動き。

面白かったですよ。
口コミで広がっていて、上映二日目の、39席の小さな映画館ガーデンズシネマにちょっと早めに行ったつもりだったけれど39番目。補助席もあった満杯ぶりでした。

旅のおわり世界のはじまり

https://tabisekamovie.com/
監督 黒沢清
出演 前田敦子 加瀬亮 染谷将太 柄本時生 アディズ・ラジャボフ

ウズベキスタンの大きな湖に住むという怪魚を撮影しようとやってきた日本人クルー、リポーターの葉子。幻の怪魚はそうそう見つかるものではなく、イライラを募らせるディレクター。

日本人のスタッフの思いはどこへやら、のんびりマイペースな現地の人々。日本人流を通そうとするディレクターの態度に観客のこちらがイラッとすること数回。
そしてTV界で仕事をするってこんなに過酷な要求に、はい、とお答えして逆らうことなく屈託のない笑顔をカメラに見せる、それが普通なんだろなあ。

その国の人と交流しようという気も無いのに、バスに乗ってバザールに買い物に行く葉子さん、どうやってちゃんと帰って来ることができるのか、方向音痴のワタクシにはわっかりません。そうやって出かけた先で、かすかな歌声を耳にする。それを追いかけて、劇場に入っていく。現実と葉子の幻想とおもわれるものが交錯するシーン。本当は舞台で歌いたい、演じたい葉子の夢。

人んちの国で自分ち流やってるとそんなことにもなるだろうよやっぱり、という事件も起こる。そんなんで済んで良かったよ。

山羊がかわいそうだと言って野に放つシーン、どうも納得がいかなかったのが、最後の方で生きてくるしかけ、サウンドオブミュージックか!と言う景色の中、歌うあっちゃん。

ヘンな映画です。自分探し、と言ってしまえばそんな作品なのですが。好き嫌いは分かれるでしょう。景色、シルクロードの中心地だったというだけある建物たちはとても美しく、行ってみたいという気になります。
前田敦子サンの映画はこれ以前には『もらとりあむタマ子』だけしか観ていないのだが、その一昨で、前田敦子は女優だ、と認識した。特にウズベキスタンなんて国にいると子供みたいに見えるのも無理はない、そんな普通の女の子が、撮り方によって?なのか、あ、美人なんだ、となる。
えーと、あのスカートの下にライン入りのジャージを着てるって、何?ファッションですかい?年寄りには理解不能。

リポーターは反射神経でできるけど女優は、という発言、あーそうなんだ、と。
黒沢清って怖い映画作ってる監督だよね、新境地なのでしょうか。

通訳の人、ウズベキスタンの有名俳優なんだって、そして日本語は全く知らないところからたくさんの日本語のセリフをマスターしたらしい。すごーい。

オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン

著者 サムエル・ビョルク
ディスカヴァー文庫

オスロの山の中で、木からぶら下がった幼い少女が発見される。“I’m Traveling Alone”と書かれた札を下げて。

ミステリーと言えば北欧、と言う感になってきたこの頃。これはノルウェーからやってきた。
殺人捜査課特別班のミア・クリューゲル、その上司ホールゲル・ムンク。その背景が細かく作りこんである。犯人の側についても同じく。最後の最後まで、読者にミスリードを誘う仕掛け。

友人から貸し出されたもので、700ページを超える分厚い文庫本、それもこのシリーズ第2作の『フクロウの囁き』まで続けて読んでしまった、結果、結局誰が犯人で何だった?な、始末でござりましたのは、こちらの脳味噌の老化によるものだろう。面白かったから続けて読んだのだが。
映像化されることを狙って書かれたかと思う。ただ、主人公ミアが、ある事件によるトラウマから回復していない状態が、一作目と二作目で何一つ変化が見られない、てのはどう?だからワタシはもう一回700ページ2冊をめくり返すことになったじゃないか・・・と申すと八つ当たりか。2冊のテイストが似すぎてるとは思う。今後、なにかしら変化は起こるのだろうけれど。

北欧というと福祉など充実しているというイメージなのだけれど、やはりいじめがあり、ネグレクトがあり、教師の事なかれ主義も存在するものなのね。

ディスカヴァー文庫と言うものを初めて知った。基本ネット扱いであるらしい。
次作に出会う機会があれば読みたいと思う。次回作が待ち遠しい、というほどではない。ドラマ化されるほうがいい。

蜜蜂と遠雷

著者 恩田陸
幻冬舎文庫

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール、その出場者たち。
自宅にピアノが無く、優れた音感を持つ風間塵16歳、かつて天才少女としてデビューしたけれど、母の死によってステージに立てなくなった栄伝亜夜20歳、音大出身とは言え今は楽器店に勤める高島明石28歳、優勝候補と目されるのはジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。

そのほかもちろん世界中から集まるコンテスタント、そしてそれを審査する審査員たちの心の動き。

あークラシック音楽に造詣が…浅すぎて残念であります。アニメの『ピアノの森』はずっと追いかけていたのだけど。あれは演奏が聞けたけど、文章だとだいたいの感じしかわからない悲しき我が身。
ではありますが、さすが直木賞・本屋大賞W受賞作品、一気読みとなりました。『ピアノの森』を知っている人なら皆、塵とカイが重なったことでしょう。音楽界、もっと自己主張の強いライバル意識あからさまなものではないんだろうか、と感じないことも無い(そういう人も出てくるけど)ながら、あの、ちょっとつらい人にお勧めです。今ちょっとしんどい人、別世界に飛んでしばし現実を忘れます。

新聞記者

著者 望月衣塑子
角川新書

観たいと思っている同名の映画の原作(と言うわけではなくおそらく女性記者の在り方の原型?)と知って、読んだ。東京新聞の望月衣塑子記者の名前は、しばしば目にしていた。菅官房長官の目の敵、しばしばその質問を遮られてしまう孤軍奮闘の記者として。

お母さんの影響で子供のころから小劇場の芝居を観ていて、児童劇団に入り、女優を目指していた少女。それが。やはりお母さんに勧められて読んだ、吉田ルイ子さんの『南ア・アパルトヘイト共和国』によって、ジャーナリスト志望に変わっていく。
大学入学、留学を望んだけれどTOEFLの点数に愕然、まずそこから努力を始める。
大概誰でも知ってるよね、就職でマスコミを狙うことがどれほど大変なことか、なんて。なんだかんだで東京新聞に入社。そして就職するよりそこで記者として働くことの方がなんぼか大変なことなわけで。いわゆるサツ回りではある県警第一課の人が毎朝走っていることを知り、朝5時前にその人のマラソンコース手前で待ち伏せ、一緒に走る。とか。
東宝根性無しで申し訳ございません、でございます。根性と体力がまず基本ですね、仕事というものには。
で、歯科医師連盟のヤミ献金疑惑事件、武器輸出、そして我々も知っている森友、加計問題、前川前事務次官、伊藤詩織さんのレイプ事件、などなどへ。そのころに私も某SNSなどで著者の名前をしょっちゅう目にするようになりました。なぜそこを追及するほかの、記者はいないのか?ほとんどが男性記者だから、記者なんだけど政府の意向とか会社の意向とか生活とかかかってる??

他社の同業者と結婚していて子供もいるんだ。そりゃあすごい。どういう時間の使い方なんだか。なんだか。なんだか。この日本で。いや、そんな人はたくさん存在しているのだろうけれど。

「質問は簡潔にお願いします」と、菅官房長官に質問する彼女に対して側近の誰かがすぐ口を挟む。何度もそんなことが繰り返される。

あー、韓国の女優シム・ウンギョンと松坂桃李の映画、観たいなあ。

キングダム

https://kingdom-the-movie.jp/index.html
監督 佐藤信介
出演 山崎賢人 吉沢亮 本郷奏多 大沢たかお 坂口拓

原泰久原作の漫画は読んでいない。アニメは何とか追いかけていた。

春秋戦国時代の秦国。孤児の信と漂は、奴隷生活の中、いつか大将軍になることを夢見て、剣の訓練に励んでいた。通りかかった大臣が、漂だけを連れていく。
時が過ぎ、ある日、血まみれの漂が信の寝泊まりする納屋に現れ、地図と剣を渡してそこへ行けと言い、息絶える。
走り出す信、小屋にたどり着くと、そこには漂そっくりの男がいた。

下手にアニメを見ていたから、山崎賢人?と思ってしまう。漂・ 嬴政(のちの始皇帝)二役の吉沢亮は誠に美しい。山の民の王・長澤まさみ、貂の橋本環奈はむさくるしく血なまぐさい中のアクセント、息抜きかな。本郷奏多憎ったらしい、ああ怪人二十面相の小林少年が。
が、何と言っても大沢たかお!凄い造形、発声。あの声、機械操作もしているかな。若いころの大沢たかおがこんな風になるとは思わなかったよ。そして、アクション好きの人たちが『RE・BORN』と言う作品の彼を絶賛していたので、さあどこにどんな風に出てくる?と心待ちしていた左慈役・坂口拓。なるほど。なるほど。

みなさんよくアクションの訓練をなさって、頼もしい限りでありますよ。なんだかニヤニヤしながら見てしまうね。続編あるんじゃない?
エンディングがONE OK ROCKでした。ああ、若いカップルか少年たちしかいなかったよ、そんなこと初めてだった。