密偵

http://mittei.ayapro.ne.jp/
監督 キム・ジウン
出演 ソン・ガンホ コン・ユ ハン・ジミン 鶴見辰吾 イ・ビョンホン

1920年代、日本統治時代の朝鮮。独立運動団体「義烈団」と、それを追う警察。朝鮮人であるが、日本警察の一員と言う役をソン・ガンホ、警察の上司が鶴見辰吾、義烈団リーダーがコン・ユ。
鶴見辰吾って若いころ香港映画に出たことがある。そして一時、怪優と呼ばれて妙な役ばかり選んでいたような時期があった、のだよ。で、同じく昔香港映画に出たことのある國村隼が、韓国映画『哭声』で見せたようなとんでもないものを、ちょっと期待しちゃったのがまず間違いでございました。結構な酷い拷問ぶりではあったんだけど。

いや、面白くなかったとは言わない。誰がどっちの密偵なのか、わからない状態で進むし。が、今年私が観た韓国映画はどれもすごかったのでね。えげつなさが足りないと申しては何ですが。反日愛国感十分なので韓国ではヒットしたんだろうけど。

ただ、日本語をかなり達者に話すソン・ガンホを始め、英語、中国語のセリフ、韓国の俳優さん(アイドル歌手も)の努力は素晴らしい。大変だなあ、と思ったのでありました。

台湾萬歳

http://taiwan-banzai.com/

監督 酒井充子

『台湾人生』『台湾アイデンティティー』に続く台湾3部作のドキュメンタリー。
出演者は台湾の人々。年配の人たちは日本語で教育を受けた世代、日本語が流暢。少数民族アミ族ヤプヌン族の人も出てくる。アミ族が歌がうまいと思っていたが、プヌン族の歴史教師兼シンガーソングライターという人歌うまい。
プヌン族名、中国名、日本名と3つの名前を持つおばあさんは、日本統治時代、もともと住んでいた高地から無理やり現在の場所に移住させられた。

親日家が多い台湾でも、かつて日本人に命じ られて、無報酬で重労働した思い出を語る人もいる。
言語は日本語・中国語・台湾語・民族語が混ざり、相手によって変わる。日本人が持ち込んだ古い漁の方法が今でも受け継がれて、息子の代でも日本語になじんでいる人もいる。

前2作を見ていない人にとってはあまりピンと来ないのかもしれない。

私には興味深い内容で、少数民族の多い台東に行ってみたいと思うものでありました。

ママは日本に嫁に行っちゃダメというけれど

監督 谷内田彰久
出演 簡嫚書 中野裕太
原作者 リンちゃん(林薏涵) モギさん(茂木洋路)
東日本の震災の時に、日本頑張って、とフェイスブックに書き込んだ台湾の大学生リンちゃん、それに、ありがとう台湾、とお礼を書いた日本人の男モギさん。
で、なんだか男3人で台湾に遊びに行き、迎えてくれたリンちゃんは日本びいきの可愛い女の子で。
都合が良すぎるやん、な展開が続くのだが、これ、事実に基づくそうで。日台の観光案内映画として見てくださいませ。この可愛い女の子はこの何やってんだかよくわからない男のどこに惹かれたのかな?ほんとに何やってる男なのかな?まああちこち旅行したり観光案内したりできるってことはお金は無いことは無いね、とか、突っ込みたいもの満載。観光案内としては美しい。大して映画作品にはなっていない、が、事実に基づくんだね、重ねて言うが。良かったね、うまく行って。そうそう行かないと思うけどね。
まあ、そのくらいです。地元の人が一緒に個人旅行できると良いよねえ。
出てくる見知らぬ男優たちは、台湾で活動している人たちだそうです。

ミレニアム4

著者 ダヴィド・ラーゲルクランツ
ハヤカワ文庫

さああのミレニアム4“蜘蛛の巣を払う女”がやっと文庫化。待ってました。
すごいね、作家が変わったのに、裏切らないね。

ミレニアムを4だけ読む人はまずいないだろうし(映画やドラマを見た人の中にはいるかもしれないが)、みんな知ってて読むよね、元々の作家スティーグ・ラーソンが死んでしまったこと、まだまだ続編が続くはずだったこと。前作を読んだファンがその死をどんなに惜しんだことか。

さて。
雑誌ミレニアムは(どこの国でもそうなんだな)、このnet時代に危機にある。そこへ、人工知能の権威であるフランス・バルデルに会ってほしい、と言う男が現れる。かのドラゴン・タトゥーの女リスベットがかかわっているらしいと知り、関心を持つミカエル。

スウェーデンにあってもやはりDVって存在するんだよなあ、と、今更のことを思う。日本の男女格差と比べ物にならない国であっても。

国民を監視するものは、やがて国民によって監視されるようになる。民主主義の基本原理がここにある”

と、リスベットがハッキングして書き込んだのはアメリカ国家安全保障局のパソコン。この言葉が、ストーリーの根幹にある。

映画の世界の話では無く、もう何がどこから監視され情報を集められているかわからないのが現実だ。

昨日のこと、某企業の研究所勤めの知人が多い友人との会話。東大卒の頭のいい研究員たちはみんなおかしい、○○障害とか、なにかの病名が付きかねない人ばっかりだ…。その話をした本人も、かつて受験勉強で勉強モードのスイッチを入れたら、教科書のページ丸ごと記憶に貼りついて、どうしても出て行かなくておかしくなりそうだった、スイッチを切った、楽になった、と、いう、写真的記憶力と自分で言っていた女であるが。
AIの世界的権威バルデルなど、結婚生活を送るにはかなり不都合な変人だっただろう、その息子アウグストは、自閉症で、サヴァン症候群で、数学の天才であることが次第にわかってくる。

私は数学的にはほぼアホなので、素数という言葉ぐらいは知っているが、素因数分解と言われたら何のこっちゃで、コンピューター言語なんか知るわけがない。残念なことで、少しでも数学的知識があったら、このストーリーをもっと味わえたのだろう。

ストーリーと別に、この小説の中では様々な機関において女性が重用されているし、同性愛あるいは両性愛も特別なことではないように描かれる。日本では、政治家が、同性カップルは日本の伝統に合わないとかなんとか歴史を知らない馬鹿なことを言っているし、子連れで議会出席した女性議員は罰される。男女雇用機会均等法って日本では1985年に成立しているんだけど。

えーと、リスベットの活躍が少ないと、不満を持つ読者もいるようだが、私は大変面白く読み、今もう一度読み返しているところである。で、聞くところでは6作までは予定されているとか。恭喜恭喜!

 

 

 

もののあはれ

著者 ケン・リュウ
ハヤカワ文庫

『紙の動物園』と対になっている。こちらはSF篇。
8編の短編をまとめたものだが、タイトルになっている『もののあはれ』の主人公は、日本人。しかも列車で久留米から鹿児島に行く。
『紙の動物園』で紹介したように、作者は中国生まれアメリカ育ち、弁護士でもあり、プログラマーでもあるという。で、中国系アメリカ人である彼の、日本人の描き方は、美化しすぎじゃない?まあ確かに大きな地震があっても派手な略奪は起こらない国だけれど。
地球に小惑星がぶつかる時が迫って、選抜された人々が新天地を求めて宇宙に旅立つ。のだけど、アクシデントが。その時、日本人の大翔が決断する。

それぞれ味わいの違う話。最後の『良い狩りを』は、中国の話。妖怪退治師と妖狐の少女、艶(ヤン)。妖狐にフーリーチンと振り仮名がある。狐狸精だろうな、元の中国語は。
清朝の時代?もっと昔?。美しい妖狐を助けた少年。時が経ち、世の中から妖が次第に消えていく。それと共に、艶は本来の狐の姿に戻ることが難しくなっていく。時の流れがぐわりとワープしたような描き方で進み、イギリス領香港、かと思うと、少年が35歳になったある日、現れた艶の身体はクロム合金に替えられており。

ちょうど、これを読み終わる頃、カズオ・イシグロにノーベル文学賞のニュース。日本生まれイギリス育ちのカズオ・イシグロが描く1930年代の上海に感じるちょっとした違和感と、中国生まれアメリカ育ちのケン・リュウの日本・日本人の描き方に対する違和感を、並べてしまう。

それはともかく、SFが好きな方、読んでみてください。どの話がお好き?

 

バカになったか、日本人

著者 橋本治
集英社文庫

このところとみに思っていたことが、そのままタイトルになっていたではないか、買わずにいられようか。日本語を知らん政治家が総理とか副総理とかになってるし、芸能人や政治家の不倫がどーだってんだ、俳優なら芝居が、政治家ならその姿勢が問われるべきだろ、不倫はその家族にとっては大問題だが私にはかんけーない、けど視聴者がその話題に乗ってるのなら、国民がアホなのか?と、いうようなことを思っていましたのさ、私。

Ⅰ 大震災がやってきた日
Ⅱ 楽しい原発騒動記
Ⅲ 原発以上に厄介な問題
Ⅳ そして今は
というパートに分かれているが、適当に拾い読みしてもいい。そして、“文庫版の後書き” を読むと、だいぶ最近の話になる。稲田朋美とか豊田真由子とか。そこからもう一回、パートⅡの“あ、東大法学部だ”を読もう。東大法学部というのは東大の中で一番頭がいいのだそうだ。だから周りのことなんか眼中にないから、抵当にあしらう、から愛想はいい。のだって。

2017年9月25日第一刷発行、の、この文庫版、その後の世の中の政治方面の流れは速く、緑のタヌキさんが希望の党というものを作り、日本は極右の政党の争いになるのかとほぼ窒息しかけたところへ、立憲民主党というものができてリベラル派という人達が何とか息をつけることになった、けれど明日はどうなるのだろう。

まあ、よかったら書店で拾い読みしてみませんか?

私が最初に読んだ橋本治は「桃尻娘」だったかな?古い話。東大のポスターを描いた人としてまず有名になり、自己流でイラストを編みこんだようなセーターを編み、時々テレビに出てきていた、が、今は難病を抱えて『いつまでも若いと思うなよ』新潮新書 などと言う本も書いているのか。そうか、それも読んでみたい。

人生フルーツ

http://life-is-fruity.com/
プロデューサー 阿武野勝彦
監督 伏原健之
ナレーション 樹木希林

建築家の津端修一さんが、自ら手掛けた愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウン、その計画が自分が望んだものからかけ離れてしまった時、その一角を買って、家を建て里山を育て果物や野菜を植え、そして四季折々にその恵みが、妻英子さんの手によって食卓に上がる、という日々。夫90歳、妻87歳。

パートタイム里山生活者の私には、理想の暮らしだ。
あの黄色に塗った板に作物の名前など書いて土に差してある札、真似たい。二人の姿がマンガ風に描いてあるいろいろ、可愛い。

家は、暮らしの宝石箱でなくてはいけない。byル・コルビュジエ だそうです。

畑の草取りをして、お昼寝して、そこから戻ってこなかった。という人生の終わり方。自転車で出かけたり、仕事の依頼もあって生き生きと向かっていて、その途中で。

東海テレビのドキュメンタリー。マルヤガーデンズシネマで再上映、その延長、となってやっと観られた。

丁寧な、自然な、豊かな、生活です。

ポポイ

著者 倉橋由美子
出版社 福武書店

借りた覚えもないのだが、しばしば本の貸し借りをしている友人から来ていたもの。

政治家だったお祖父さまに会い密談ののち、その目の前で唐突に切腹し介錯された生首、が、首から下は人工心臓などの装置につながれ、生き続けているという。その世話を、婚約者から頼まれた二十歳の孫娘。
美少年の首。

作品中にも出てくるが、三島由紀夫の割腹が思い起こされる。ユディットとかサロメとかもちろん。

予備知識無く、こんな本があった、と読み始め、数十年ぶりに読む倉橋由美子の才に圧倒される。

1987年に発行されているというのに、パソコン端末で映像を映し出したり、スカイプのような形でテレビ電話をしていたり、その時代にどうして?と思いつつも読み進んだが、後に知った。SFラジオドラマとして近未来を舞台に作られた物語だったということだ。

生首にポポイ(ギリシア語の感嘆詞だそうだ)と名付け、舌の動きで端末に文字を表すことで会話を成り立たせる。

ストーリーとしては、あっけない最後の迎え方である。読み手に教養を要求するというか、広範な知識があると読み取りやすい(私は知らない情報がいろいろありました)。のでもあり、この小説は好き嫌いが分かれるだろう。私は、これに出てきた桂子お祖母さまという人が出てくるシリーズがあるそうで(桂子さんシリーズ)、読んでみたいと思う。大昔に“夢の浮橋”は読んでいるはずだが記憶に無いし。

 

新感染 ファイナルエクスプレス

http://shin-kansen.com/
監督 ヨン・サンホ
出演 コン・ユ キム・スアン チョン・ユミ マ・ドンソク

あちこちで評判を目にしていなかったら、まず見なかっただろう、ゾンビと化した人間たちが列車の中で…!うっかりして日本語吹き替えの一回しか上映しなくなってから観たのだが、観てよかったあ。

疾走する列車の中で、突如病人が出た、と思ったら病人は見る間にゾンビと化し、乗務員やほかの乗客に噛みついて急速に感染を広げていく。
ソウルでファンドマネージャーとして(他人を蹴落とし)働く男ソグと、その娘スアンがその列車に乗り合わせていた。別居中の妻に会いに行く娘を送り届けたらすぐ仕事に戻るはずだった。

ゾンビの造形が怖すぎて笑う。結構血がほとばしる系の映画は見慣れているはずだが、手で目をふさいで指の隙間から見るという真似をしてしまったよ(だからバイオレンスは平気だけどホラーは苦手なんだって)。

車内のパニック状態初期には、自分や娘のことだけしか考えない勝手な男だったソグが、乗り合わせた屈強な男と共に必死の戦いを繰り広げる、

『人間』を描くドラマとなっています。そして、この迫力は映画館でしか味わえないでしょう。

原題부산행ぷさんへん、釜山行き。ソウルから釜山への列車。
コン・ユが出た日本映画があったけど思い出せない、調べたらそうだ三池崇史の『龍が如く』だった。

私を離さないで

著者 カズオ・イシグロ
ハヤカワepi文庫

カズオ・イシグロの小説を手に取っても、なかなか読み進められなくて書棚に戻すという状態だった。本作は、TVドラマ化されたものを観ていたこともあって、スムーズに読むことになった。

ドラマよりずっと抑制された描き方。

“介護人”であるという女性の語りで進む。かつてヘールシャムという施設で、語り手の女性を含む少年少女が暮らしていた。抑制されているが何がしかの違和感を匂わせながら、それは実は、ということが見えてくる。
先にドラマを見ていたことが残念に感じられる。この小説のテーマにどこで気づいただろう?もしも小説が先だったら。

臓器提供のために作られたクローンだったのだ。そのヘールシャムで育っていた子どもたちは。そして、いつかそこを巣立って、コテージというところに行く。先輩たちもそこにいて、それぞれそのコテージをも去る時が来る。そして介護人になり、臓器提供をした人に付くのだ。いずれ自分が臓器提供する日までは。数回の提供が待っている。

クローンは生殖能力は無いということらしい。でもみんな恋愛も性愛もする。ドナーだから病気には気を付けなければならないが。ヘールシャムで美術教育が盛んだったのはクローンの感受性や表現能力がどんなものかの実験だっただろうか。

ヘールシャムのあり方に疑問を持った先生によって、自分たちの役割というものを知らされた彼ら。淡々と受け入れた、はずは無い。
けれども数年の延期が得られるかもしれないという希望が、とても切実に大きなことのように描かれ。

語り手キャシーがヘールシャム時代に好きだった、Never Let Me Go という ジュディ・ブリッジウォーター の歌が、この小説のタイトルになっている。実在の歌手の実在の歌なのか?と疑いながら読んだけれど、hold me never let me go という歌声を探してみた。なるほど体を左右にゆすりながら聞くだろう。

2011年の映画では、校長役でシャーロット・ランプリングが出ているらしい。観たい。

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