香川一区

https://www.kagawa1ku.com/
監督 大島 新

前作『なぜ君は総理大臣になれないのか』は小川淳也議員の初出馬からの17年間を追った作品だったそうだが、残念、私は観ていない。いや本当に残念。なぜなら大概のフィクションよりずっと面白かったから、この「香川一区」。

あの初代デジタル改革担当大臣議員(四国新聞及び西日本放送のオーナー一族だって、マスコミオーナーが世襲って?)平井卓也氏は政治家3世でもある。その人と同じ選挙区で戦う小川淳也議員を中心に、平井議員や新しく同区で立った日本維新の会の町川順子氏の活動を追う。

どうすりゃ東大出てここまで愚直なほどの実直さで選挙に臨めるのか?どうやって育った?と思うのだが、そういうj人であるらしい。選挙活動に協力している女性が多い、まだ選挙権の無い高校生が応援しているのに対し、ちゃんと対応する。
そして与党の側の選挙運動は、ほぼ8割9割男たちで占められる。職場から動員される。後援者のオジサンは撮影カメラを排斥する。人権とかジェンダーとか、そんなものは文字でしかない言葉でしかない、選挙とは男の物だ!と、昭和な状況が展開される。

50歳になったら政治家を辞める。と言っていたという小川氏、まああと10年ほど延期してもらいたいな。とは言え、
、こういう人は、なかなか上に立つ人にはなれないのだろう。よほど優れたブレーンが着いても、厳しいかなあ。当選がが早々決まった後で、民主主義とは、勝った51の側が、負けた49の側をいかに背負うかだ、と語る小川氏。

大島新監督はあの大島渚監督のご子息なのだそうだ。知らなかった私が無知?かも。

レイジング・ファイア

監督・脚本・プロデュース ベニー・チャン陳木勝
出演 ドニー・イェン甄子丹 ニコラス・ツェー謝霆鋒

ドニー演じる警部が、追い続けてきた犯人の取引現場に踏み込もうという日、現場を外される。そして仮面を付けた男どもによって、その取引現場に踏み込んだ捜査官たちは惨殺される。
仮面を外すと、それはかつて警部を慕っていたエリート警察官とその部下なのだった。って、自白させるのに拷問した犯人が噛みついて離れなかったから殺してしまう羽目になった、それを警部が目撃した。法廷で、警部はそれを目撃したと言わざるを得ない。ニコ演じる元警察官と部下は、監獄で恨みを募らせ、出獄するとたいそう無残に捜査官を殺しまくるってなんだそれ!でありますよ。
でありましてもまあこの映画はアクションを堪能する作品です。それでいいのさ。
終わり近くの二人の対決シーンをやりたい、見せたいだけだったでしょ、と思う。
ニコ謝霆鋒は、デビュー前に日本で歌のレッスンをしていて、数か月住んでいた、ので、わりと日本語を話せた。昔は。今も、忘れていなければ。その昔の『ジェネックスコップ』で仲村トオルと共演していた。あれも陳木勝監督作品だった。その頃の少年の面影を思いながら、ああニコもこんな悪い役をやるようになったのね、と思っている観客の我。

ジャッキー・チェン映画のように本編の後におまけがついているし、エンドロールでニコの歌声が流れるし(とても正しい感じの歌声)、懐かしい正統香港アクション映画を観た満足感があったのは我ながら意外でもある。アンディ・ラウの歌声が流れる作品とか、陳木勝監督だったよ。この作品が遺作となりました。確か、これを撮った直後ぐらいに病がわかり、すでに進んでいたのだったと思う。
香港は中国に飲み込まれてしまったから、この先こんな香港ノワールは作られないだろう。ありがとう、ベニー・チャン。

夕霧花園

http://yuugiri-kaen.com/
監督 トム・リン林書宇
出演 リー・シンジエ李心潔 阿部寛 シルヴィア・チャン張艾嘉

シルヴィア・チャンが出るのだから台湾映画だと思って観始めたら、ん?広東語?マレーシアが舞台だった。
第二次大戦中、戦後のユンリン役を李心潔が、80年代のユンリンを張艾嘉が演じている。

亡き妹が望んでいた日本庭園造りを日本人庭師の中村に依頼するが、中村はそれを断り、自分が今やっている庭園造りを手伝えと言う。見習いとして日本庭園造りをマスターしろと(できるかそんな数か月で!)。
男たちと共に庭に石を据える。何度もやり直させる中村。
ユンリンは戦争中妹のユンホンも一緒に強制労働に駆り出された。妹は慰安婦として日本兵たちの性欲の道具とされ、日本の敗戦で収容所ごと焼き払われた。姉ユンリンは生き延びたが、妹を見殺しした思いに苛まれている。

80年代のユンリンは女性裁判官となっている。かつて愛した中村が、「山下財宝」なる埋蔵金と関わっていたという疑惑を知る。
なんと、ミステリー仕立ての映画なのだった。原作はマレーシアの作家タン・トゥアンエンの小説『The Garden of Evening Mists』だそうだ。

キャメロンハイランドと言う場所の景色は美しい。・・・外国人の思う日本人像だから、そんなもんだと思ってそこはあきらめよう。けどさあ、庭師が華道や茶道をたしなむことはあるだろう、でも刺青の美学を追及する?ユンリンの背中に入れ墨を入れる、それが後の話につながるのだから仕方ないが、刺青を刺したその日にお風呂に入るかあ、しかもそこで!
もう一つ、借景と言う言葉がさあ・・・。

そこに引っかかるかどうかで、感想が変わりましょう。ごめんね、引っかかったよ。
とは言え俳優さんたちみんな良いですよ。映像も。

以前はアンジェリカ・リーいうイングリッシュネームだった李心潔、2000年ごろから見ているからそこそこの年齢のはずなのに(若く見える)、と思ったら1976年生まれ、いやいやお若い。張艾嘉がさすがに歳、と、思うが私と同じくらいの年齢には、お見受けしませんわよ、もちろん。
林書宇という台湾の監督の作品、『星空』『百日告別』確かこの欄でも紹介している。

 

デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング

http://deniseho-movie2021.com/
監督 スー・ウィリアムズ
出演 何韻詩デニス・ホー 黄耀明アンソニー・ウォン

香港芸能界のスターである何韻詩が、2014年の『雨傘運動』中国の支配が強まる中で若者たち中心に起こった民主化運動(警官の催涙ガスを避けるために雨傘を用いたことからそう呼ばれた)に参加し、座り込みを続けた。
そして、彼女は中国での芸能活動ができなくなってしまう。ブラックリスト入り。今では香港映画でもコンサートでも中国資本が絡む。そして次第にCMなどからも撤退を余儀なくされる。レコード会社の契約を切られる。
カナダ育ちの彼女は、モントリオールへ向かう。

2019年6月。香港で逃亡犯条例改正に反対するデモが起き、彼女はまたそこに参加する。国連やアメリカ議会でも発言する。

それとは別に、2012年の時点で、彼女はLGBTパレードに参加し、香港芸能界の女性で初めて同性愛者であることをカミングアウトした。やはり同性愛者である歌手・音楽プロデューサー黄耀明と共に、LGBTに関わる社会活動、民主化運動に携わっている。
私は香港芸能ファンであるが、デニス・ホーと言う歌手にあまり関心を持っていなかった。カミングアウトしたこと、民主活動をしていることだけは知っていたけれど。そんなに梅艷芳ファンだったのか。コンサートで梅艷芳と共に歌っているシーン、ああー懐かしかったよ。あの『夕日の歌』も流れたね、近藤マッチのカバー(アニタの葬儀の様子を見た香港芸能ファンには知られているさる事情…)

『十年』という映画で予告していた香港の中国化、10年も経たずに物言えぬ場所になってきている。
イングリッシュネームが黄耀明と同じアンソニー・ウォンである俳優の黃秋生サンも今、ほぼ干されている。良い俳優さんなのに。

日本では周庭(アグネス・チョウ)さんが日本語で発言していた、周庭は今どうしていることだろう。この映画よりもその後の状況は悪くなり、1997年香港返還から50年続くはずだった1国2制度は、彼方に消えてしまった。

少年の君

監督 デレク・ツァン曾國祥
出演 チョウ・ドンユイ周冬雨 イー・ヤンチェンシー易烊千璽

中国の受験戦争の凄まじさは、高考と呼ばれる大学入学統一試験の時にパトカーまでが出動しているのがニュースでも取り上げられ、日本でも知られている。
その中国の進学校に通う女子高校生、チェン・ニエン。いじめられていた同級生が飛び降り自殺する。大勢の生徒がスマホカメラを向ける。倒れている同級生に自分の上着を掛けてやる。
そして、自分がいじめの標的になる。
母子家庭で、母親は詐欺まがいの商売をしているらしい。
下校途中、集団暴行を受けている少年を見かける。それがきっかけで、二人は親しくなる。不良少年と優等生の出会い。うっかり“愛と誠”だの“泥だらけの純情”だの思い浮かべてしまうわたくしでありました。“白夜行”のほうですか、あなたは。

童顔の周冬雨だが、なんぼなんでも高校生役、と思うが違和感ない。1992年生まれだって。
街の不良役、易烊千璽という人はTFBOYSという世界進出している中国のアイドルグループのメンバーだそうだ。アイドル的甘さの無い顔立ち。子役出身だそうだ。

北京大学や精華大学(世界ランクで東大より上)を目指す高校生が、ここまで幼稚な虐めをやるものだろうか?映画自体は終わってから、その後、政府の各部門がいじめ対策をした、と易烊千璽が説明している。

中国が舞台なのに繁体字の字幕、と思ったら、中国・香港合作、監督は、香港映画ファンにはおなじみのエリック・ツァンさんの息子なのだそうだ。
とても、良い映画です。二人ともとてもいい役者さんだと思います。バリカンで刈った頭が似合ってたね、周冬雨。

ある男

著者 平野啓一郎
文春文庫

愛したはずの夫はまったくの別人だった と帯にあって、確かにそういう話だが。
何層にも関係が話が重なって、いつもこの作家のものを読むにはなにがしかの教養知識が必要だったりすることもあり、明治の文豪がミステリー仕立の文学作品を書いた、ような。
ある男 ってまあその別人だった男を指すだろうとは思うけれど、その男について調べていく弁護士のことかも、という気にもなる。どの男のこと?

序 としてこの小説を書いた作家が語る。城戸さんという弁護士と偶然出会い、知りえたことを膨らませて書いた、と。

幸せに暮らしていた家族、夫が仕事の事故で亡くなる。その兄であるはずの人に連絡した結果、谷口大祐と名乗って いた夫は、別人であることが判明する。夫は何者なのか?なぜ谷口大祐と名乗りその履歴をそのまま語っていたのか?

城戸は在日三世であり、昨今の極右の排外主義などに自らも直面することなどもある。妻との関係にもねじれが生じている。戸籍を交換するブローカーがいることを知り、城戸は横浜刑務所にそのブローカーだった男に会いに行く。先生、在日でしょ?と言う男。在日っぽくない在日ですね、でもそれは在日っぽいってことなんですよ。

城戸に谷口と名乗っていた男の調査を依頼してきた谷口の妻里恵は、一度目の結婚で生まれた次男を、脳腫瘍で亡くし、その前後の夫の対応が原因で離婚している。長男は、実の父親より二番目の父をしたっていた。谷口との間に女の子もうまれた。

で、
誰なのか、谷口とは。なぜだったのか。
他人の履歴を、まるごと生きることが可能?アメリカではよく犯罪組織から身を守るために新しい戸籍を与えられて遠いところで生きる、という話が映画などで出てくるが。

音楽にも造詣の深い平野啓一郎だから、いくつか出てくる中で、富樫雅彦と菊池雅章の美しいCDをかけながらクリスマスツリーの飾りつけをする というシーンがあって、聞いてみたいと思う。

大変面白く読みました。ミステリーとしては一度読めば結論が分かりますが、なにしろ重層の作品、読み返すたびに、それこそこの作家が言う“分人”ごとに読み方が変わることと思われます。

MINAMATA

監督 アンドリュー・レヴィタス
出演 ジョニー・デップ 真田広之 美波 國村隼 加瀬亮 浅野忠信

報道写真家ユージン・スミスが(当時の)妻アイリーンと共に1975年に発表した写真集『MINAMATA』、その映画化。
化学会社チッソが起こした公害(水銀の入った排水)により、まずその土地の魚を食べた猫に異常が、そして人間の身体にと広がり、、胎児性の場合は身体の奇形や機能の不全がひどく、その奇病は水俣病と呼ばれることになる。

日本の仕事の依頼のための通訳者だったアイリーン美緒子と出会い、のちに水俣で生活してその生活や患者、抗議活動などにカメラを向ける。

私の年代なら、そして水俣市のある熊本の隣の県の住人なら、MINAMATAやユージン・スミスについて多少の知識はある。写真のかけらぐらいは目にしてきた。彼が第二次大戦中に沖縄で重傷を負い、ずっと後遺症があったことは知らなかった。ほぼアルコールで生きているような人であることも知らなかった。もっとも、映画の中では食べ物を口にするシーンがあったが、沖縄戦の際の負傷で歯を失って流動物中心の食事だったそうだ。その上に、抗議運動がもみ合いになった時にチッソ側の攻撃で片目を失い腕などにも重傷を負った。

天下のジョニー・デップだよ、彼がプロデューサーとしても名を連ねるこの作品が、日本では評価を受けると思う、が、世界では?アメリカでこれを観ようとする人は?と、観ながらも疑問符。

石牟礼道子の「苦界浄土-わが水俣病」をまだ読んでいないのだ。頑張って読んでみたい。

パンケーキを毒見する

監督 内山雄人

首相が岸田さんに代わってから観たのだが。
岸田さんに格別の期待は無い。が、初めてその会見を目にして、ちゃんと日本語を話している、それだけでホッとする楽に聞ける気がした。アベさんスガさんと、本を読むことなど無さそうな日本語の滅茶苦茶さ、質問に対してアベさんはご飯論法、スガさんは質問の意図を汲む能力があるのか?という態度だったから。

で、なにやかやで笑いながら観ましたよ、本当に質問の答えにも何にもなってない答弁、後ろで官僚が原稿を書いて渡さないと何も言葉が出ない。

卒業した大学が議員秘書という仕事を斡旋したんだって。もちろん初めは末端の秘書だよね。で、どんな風に気が利いて、出世してきたのだろう。どんなところで目端が利く人だったのだろう。まず横浜市会議員になって、影の横浜市長と呼ばれたって。かなり初めからお金を集める能力に長けていたらしい。値下げの政治家と呼ばれ、最近では携帯料金を下げ。
叩き上げの苦労人という触れ込みだったよね。数年前まで集団就職で上京したと履歴が書いてあったって。語学講座に通っただけで〇〇大学に留学し卒業したという嘘履歴はよくあるけれど、逆のお方は無いよね。
まともに答弁しようともしないのは、国民を政治から無関心にさせようという深謀遠慮だ説まであるのか。
この映画を観ても、このスカスカのスカさんがどうやって上り詰めたのか?私にはわっかりません。

最近、ツイッターで野党批判を繰り返していた某氏は実は法人であり、主な取引先として自民党と記載があると、わかったという。で、税金からそこに支払われているのかな?すげーなあ。
与党の政治家で、まっとうな人もいるよね、もちろん。この映画にも出て発言していた。

頼むわ、みんな選挙に行こう。時々国会中継を観よう。日本はすでに平均月収のとっても低い国になっているってことぐらい知っておこう。機会があったらこの映画観ようよ。

逃げた女

https://nigetaonna-movie.com/
監督 ホン・サンス
出演 キム・ミニ ソ・ヨンファ ソン・キンミ

5年間の結婚生活の間、夫と一度も離れることが無かったという女性が、夫の出張中に、郊外に住む女友達を訪ねる。それぞれの知人に対して、5年間離れることが無かったと話す。夫は愛する人とは一緒にいるべき、との考えであると。

たずねて行った女友達、ばったり会ったかつての友達(元彼と結婚しているらしい)、三人三様に、気楽そうでありつつ何やら男との関係の面倒さが垣間見える。

淡々と、訪ね、会話し、食事し、5年間離れることが無かった話。格別の事件が起こるでもなく映画は終了する。
ハリウッド映画好きの人には、なんのこっちゃ?だろう。
ただ、ある一部の人には刺さるだろうなあ。パートナーとの関係に微妙なざらつきを感じている誰かとか。
女性たちのおしゃべりが、それはすべて本当のことなのかと疑問符が湧いたり。男が総じてあまり賢くないように描かれている気がするが、監督が男性だから?女性監督がこの状況を描くと、女性への視点がきびしくなりそうだ。そもそも本当に5年間離れることが無かったのか?それも嘘かも、と前提から疑う気にもなる。
で、逃げた女って?

この監督と女優はパートナーであるそうだ。

ホン・サンスという有名な監督の作品を、どうやら初めて観たらしい。私は、ほかの作品も観たいと思います。

孤狼の血 LEVEL2

https://www.korou.jp/  
監督 白石一彌
出演 松坂桃李 鈴木亮平 村上虹郎

第一作目は観ていない。柚月裕子の原作は初めの方を読んでそのまま積んである。一作目の松阪桃李とこの二作目と、姿がおそろしく変わってない?と思ったのと、松阪桃李・鈴木亮平と並ぶと、令和の二大カメレオン俳優じゃありませんか、観てみようかなあ、となり。

久しぶりにヤクザ社会血の嵐の映画を観ましたよ。
かつての広島ヤクザ抗争映画『仁義なき戦い』には詳しくないので比較でものをいう権利は無いが、あの泥臭さとは違う。とは言え、たいそうな惨たらしい殺し方をやってのける鈴木亮平さんなのだった。そして刑事の松阪桃李もまた裏社会とつながって抗争にならない範囲でうまくおさめて来た男だったのだが。

あまりのことに笑ってしまう、ほんとにあまりのこと。でありますが、『鬼滅の刃』の鬼にも何かしらそうなる理由がある、と描かれるのをちょっと思い出してしまいましたね。

この、松阪・鈴木ご両人、なりきることを楽しんだんだろうなあ。

そしてああー、こいつ(誰でしょう)やな奴!違う意味で、とか。

前作役所広司が出でいる方が重厚だったらしい。機会をみつけて見てみます。