THE Crossing 香港と大陸をまたぐ少女

https://thecrossing-movie.com/
監督・脚本 白雪
エグゼクティブプロデューサー 田壮壮
出演 ホアン・ヤオ スン・ヤン

深圳に住み、香港の高校に通学する少女。
友達と日本に旅行することを計画している。
アルバイト気分で、スマホの密輸に手を出す。一国二制度により、香港では関税が安いので、安く仕入れた品物を隣の深圳で売りさばくのである。
普通の女の子だ。そんなことやめようよ、と声をかけたくなる。その内とんでもないことになるよ!

母親と同居しているが、別居しているらしい父親に会いに行ったりする。そしてその父親には別の家庭があるらしいことも見えてくる。母親が麻雀仲間と話しているのは北京語だ。香港の学校ではもちろん広東語で話す。

関係が良くわからなかった。離婚したのかと思っていたが、香港に住む父親が景気が良かった時代に、深圳で、母親と愛人関係になった、そうして香港の病院で生まれた子供には香港のIDがある、だから毎日税関を通って通学できる、ということなのだそうだ。
母親の職業は?どうやら麻雀で生活しているのか。

密輸にかかわるきっかけになったのは友達の彼氏、その男との関係が深まりそうになるが。そして密輸のボスの女性が本性を現しそうに・・・。

2018年作品。一国二制度というのはそういうことだったんだなあ、と今更ながらに思う。
2020年の現在、一国二制度は風前の灯火で、習近平の中国に、今、どのあたりまで飲み込まれているか?
地味な作品だが、香港の問題に興味がある人にはお勧めしたい。原題『過春天』春を過ぎて、とも春を過ごす、とも解釈できる。

狂武蔵

監督 下村勇二
出演 坂口拓 山﨑賢人、斎藤洋介、樋浦 勉

9年お蔵入りだったものに手を入れて完成させた、と言うことだけは知っていた。
坂口拓のアクションは凄い、と言うのは「キングダム」左慈を観た人はわかっている。
だからね、その動きを見られれば良しと、いう思いで観に行ったのね。
まあでもこれ、映画じゃないのよ!
次から次に出てくる敵を倒し続けるんだけど、敵たち現代人の頭だし。セリフのある人だけ鬘つけてるけど、一人はおいおいそれ町人髷だよね。突っ込みどころ満載、笑える映画とは思いませんでしたよ、ほかの人は笑ってなかったような気がするけど。
ずーっと戦い続ける武蔵こと坂口拓。吉岡門弟たちは限りなく現れる。あんたさっき死んだような気がする、のがゾンビのように繰り返し出てきてまた伐られてる、絶対そうだよね、みんな何度か倒されてるよね。そーんなに上段振りかぶって向かったら胴をやられるに決まってんでしょ、と突っ込みたいし。剣道で言うと面、胴、籠手、いろんな形、その籠手打ったあと体沈んで足!って実践の戦い方ってもんだろう。刀持ったカンフーか。
なんだかあちこちに竹筒があってそれで水を飲み刀に水を吹きかける武蔵。

撮影が鹿児島出身の長野康隆、上映後その人のお兄さんからの話。カメラマンは、20キロのステディカムで77分間追い続けた・・・。

元々は園子温監督で別のものが企画されていて、それが延期になり、レンタルしていた機材を明日には返さなければならなくなった、で、午後から日没の前までにとにかく大雑把な段取りだけで撮った、のだそうだ。

そして、「キングダム」のアクション監督・下村勇ニが前後にちょっとしたストーリーを仕込んで全体を仕上げた、ということだって。

どなた様にもお薦めはしないけれど、だれかとこの作品のある種の凄さについて語りたい、よ。

ハリネズミの願い

著者 トーン・テレヘン
出版社 新潮社

とてもとても内気なハリネズミがいます。自分のハリが他人から嫌われると思っています。
それなりに居心地の良い孤独の中にいます。
でも、誰かほかの人とお茶を飲みながらおしゃべりしたい気持ちはあるので、招待状を書きます。そして、最後に、でも、誰も来なくても大丈夫です と書き添えて、
そして引き出しにしまいます。

取り越し苦労の名人です。妄想力は巨大です。

読んでるとなかなかつらいです。あたくしだって態度はでかくても気は小さくて自分からフェイスブックのお友達申請したことはありません。なんだかどこかに触れてしまったらしくて出したってことになってて相手方に了承されちゃったものがほとんどです。

最後の方で、ちょっとホッとします。
2017年の翻訳小説部門の本屋大賞だそうです。オランダの作家、もともとお医者さんで、幼い娘のために書き始め、動物小説を書き続けているということです。

樽とタタン

著者 中島京子
新潮文庫

今から30年以上前、3歳から12歳まで済んだ小さな町。
その町の喫茶店に、コーヒー豆が入っていた大きな樽に赤い色を塗ったものがあり、その腹には丸い大きな穴があいていた。子供の頃、保育所代わりに預けられていたその喫茶店の中に入ってじっとしていた女の子。常連の小説家が、
樽と一緒だからと、タタンと呼ぶようになった。
キャラメリーゼしたリンゴが乗っているあのケーキ、タルトタタンのもじりね。30年以上前にタルトタタンを知っていた小説家は、海外で生活していたのだろうか。

九つのお話でできているうちの、最初の“「はくい・なを」さんの一日”が、ん?なんだ?と思われるが、まあ何かしら喫茶店の扉の向こうは小さな異世界として描かれている、もしくは記憶のかなたで異世界と化している。
“ぱっと消えてピッと入る”と言う話が好きだ。明治生まれの祖母が言う。「おれは、死んだらそれっきりだと思ってる」「そのかわりによ、死んだら、ここんところへ、ぴっと入ってくんだ」と、自分の胸を指さす。マサオが死んだとき、おれにははわかった、それからずっとここんところにいるわけだ、と。

タタンと呼ばれたこの子は、言葉にうるさい。体育をたいくと言う、女王をじょうおうと、雰囲気をふいんきと、クラスメートが言うたび、ピーッと笛を吹いて黄色いカードを押し付けたいきもちになった、という、そこ。わかるわかる!そういう子供でしたよ私も。子供だからちょっとした勘違いも起こるけれどね。

子どもの頃を思い出すとき、誰にでもあるだろう懐かしい小さな世界。記憶の中でなにがしか変形し、異界に入り込んでいることは珍しくないかも。私の従姉妹の一人は、祖父母の家で兎を何匹も飼っていたように記憶しているらしいが、鶏は飼っていたよ、兎?一匹ならずたくさん?私の記憶にも別の従弟の記憶にもそれは存在しない。

この子供は、小説家の予言通り、小説を書く大人になっている。小説や詩を書かないタイプ、ストーリーがきちんとあるものが好きなタイプには、あまり向かないかもしれない。お話です。あなたはどう感じた?

チィファの手紙

https://last-letter-c.com/
監督 岩井俊二  
プロデューサー ピーター・チャン陳可辛
出演 周迅 秦昊  胡歌

日本版の『ラストレター』を観ていないのだが、それの中国版だそうだ。その前には韓国でペ・ドゥナ主演『チャンオクの手紙』と言うショートムーヴィを撮っているのだそうだが、それも知らない。
岩井俊二は、かつて中山美穂主演の『LoveLetter』が中国・韓国でもヒットして、アジア圏でファンの多い監督だ。で、元から交流のあった陳可辛の尽力で、中国映画として成立する作品になった、ということだ。

で、話は、姉の葬儀で始まる。
姉宛てに、同窓会の案内が届いていた。妹が、それを伝えようと出かけ、姉チィナンに間違えられて、そのままやり過ごす。早々にその席を抜けて帰ろうとするチィファを追いかけてくる男。覚えているか聞かれる。
観客としてはなんだかわからないがどうもすわりが悪いような気がしている。
姉を好きだった男が、チィファを姉と間違えたままメールしてくる。と、それを目にしてしまった夫が、嫉妬に狂ってシャワーで濡らす、壊す。おいおいなんだよ!だいたい中国でスマホ無しでは買い物もできない、大変!

いろんな部分がなんか納得できない状況のまま、姉のフリして手紙を書くチィファ。自分の住所は書かずに。
返事が実家に届く。実家では姉の娘と、学校が始まるまでチィファの娘が暮らしている。手紙を読んでしまう娘たち。そのまま、母のフリ伯母のフリでこちらも返事を書く娘たち。ほら、ヘンでしょう?

なんだけど。

なんか変でなんか不穏でアンバランスな感を抱きながらでも観続けてください。途中から、その男をやるのが彼かなあ、きっとそうだ、と思っていると、ほらやっぱり、そんな造型で出てくるんだあ、麗しの(はずの)胡歌が。『琅琊榜 麒麟の才子、風雲起こす』の彼が。

姉の昔の彼氏のヘアスタイル、もう少しすっきりさせてもらえませんでしたかい?

いつの間にか引き込まれ、うるっ。

据わりの悪さをもたらしていた一番の原因は、やはり周迅の、あの変わらない童顔で、まんまなのか企んでいるのかわからないようなその演技と、岩井俊二が、組んだ、ということが大きいのだろう。男の子も、女の子たちも、みんな良いけど。
観終わって、その謎ときが分かった上で、もう一度最初から見直したいと思った映画でした。

追龍

https://www.tsuiryu.com/
監督 王晶 關智耀
出演 ドニー・イェン アンディ・ラウ

1960年代の香港、大陸から不法移民としてやってきたン・シーホウとその仲間たちは、日銭稼ぎのためにマフィア同士の争いに加わる。小競り合いのつもりが暴動となる。イギリス人警司ヘンダ―に対抗したため、拘束され、手ひどい暴行を加えられるが、香港人警官リー・ロックによって助けられる。
黒社会で出世していくシーホウとロックは、警察と黒社会にありながら互いに助け助けられ、手を組んでそれぞれの世界でのし上がっていく。

うっはっは、ひっさしぶりに観ましたぜ、バリバリの香港黒社会血みどろ映画。
実話が元になっているのだそうだ。リー・ロックも麻薬王シーホウも実在。今は無き悪の魔窟、九龍城、が舞台になる景色もまあ久しぶり。
甄 子丹ドニーさんも劉徳華アンディさんも、もはや決して若くは無い、二人が組んでアクションをやったのは初めてだったそうだが、もうこの先は望めないかも。この映画撮った後なのかな、アンディが大変な骨折したのは。見事復活したけど。

『リー・ロック伝』と言う映画、昔あったよな、と思ってググると、やはりアンディ主演で2本作られている、1991年に!

英国人警司がまことに憎たらしい悪人なのは、実際にイギリスの植民地だった時代にはあったことなのだろうが、97年返還以降、どんどん締め付けがひどくなっている大陸の横暴と重ねている?

んふ、趣味に淫した映画紹介ですんません。

この映画観たあと、原付押しながら横断歩道を渡ろうとしていたら、連休に帰省したらしい親子連れの小さい男の子が、バイバイ、と手を振る、振り返す、落差の大きいほんわか模様でした。

淪落の人

http://rinraku.musashino-k.jp/
監督・脚本 オリヴァー・チャン
出演 アンソニー・ウォン黄秋生 クリセル・コンサンジ サム・リー李璨琛め

事故で車椅子生活となってしまった男。妻とは離婚、息子はアメリカで大学生。ヘルパーも長続きしない。
新しいフィリピン人ヘルパーがやって来る。彼女は広東語ができない。苛立ちながらも、英語の勉強を始める男。

『最強の二人』の庶民バージョン、と言えますよ、短く説明するならね。

強面黒社会ヤクザ役がほとんどだった秋生サン、『頭文字D』でステテコ姿が似合うのにびっくりしたのがもう2005年の話か。
良い役者さんだが、香港民主化運動に賛同しているために、映画の仕事から干されているような状態なのだ。今は香港映画でも大陸の資本が入り、大陸で公開することでお金が入るのだから、香港芸能人の本音がどうであれ、習近平のご意向に逆らうようなことはできない、のが普通。
ま、日本だってABEさんに反対する意見の芸能人はだいたいたたかれる、ヨイショするタレントがコメンテーターやっていたりするけどね。

秋生サン、この企画が気に入って、ノーギャラ出演したって。監督のお母さんが脊髄損傷で車椅子生活が長かったといいうこと、実際にヘルパーさんが車椅子の後ろのステップ(?)に乗って走っているのを見たことからこの映画に結び付いたそうだ。

久しぶりに香港映画を観た,佳作だった、もう香港映画らしい香港映画が作られることは難しいかもしれない、習さんもABE氏もTランプも、ちょっと病気になって引退してくれないものかと思う次第であるよ。
あ、サム・リー。『メイドインホンコン』でデビューした彼を久しぶりに見た、そうか、メイドインホンコンの監督だった陳果がプロデューサーだ。

ソン・ランの響き

監督 レオン・レ
出演 リエン・ビン・ファット アイザック

80年代サイゴン、借金の取り立てヤクザと言う商売はベトナムでも存在した(している?)のか。強引な取り立てをしているユンが、京劇に似たベトナムの伝統劇、カイルオンに取り立てに行き、若手花形役者リン・フンと出会う。
食堂でデザートをサービスされるリン・フンに対してチンピラが絡む、そこに居合わせたユンが、リン・フンを家に連れていき、休ませる。
実はユンはカイルオンに欠かせない楽器であるソン・ランの演奏者を父に持ち、同じく奏者を志した過去があった。

孤独に生きてきた二人が心通わせようとしたその時。

香港80年代の若きアンディ・ラウとか、トニー・レオンとか、なんだかそのあたりと重なってしまうのねー。でもなぜかレスリー・チャンじゃないんだなあ。きれいな若手役者役は、元アイドルグループのメンバーなんだって。ユン役はこれがデビュー作だなんて!監督だって少年時にアメリカに渡り、帰国して長編第一作だそうだ。
限りなく同性愛的である友情なのか、どうなんでしょうね。

僕が殺した人と僕を殺した人

著者 東山彰良
文春文庫

1の舞台はアメリカ。台湾の人形劇『布袋劇(ポウテヒ)』の人形を持つ男と少年の出会い。スティーブン・キングか?という雰囲気で始まる。

2からは台湾。80年代台湾の下町、近所の友達の家でご飯を食べることは何でもない普通の事だった時代。ユンの兄のモウを、バイク事故で失ってから、父母のいさかいが絶えない。ユンは、友達のアガンの親がやっている牛肉麺の店を手伝っている。ユンの母が精神を病んだので、父が治療のためアメリカに連れていくことになり、ユンはしばらくアガンの家に預けられる。
ユン、ジェイ、アガン、その弟のダーダー、それぞれ家庭に問題がある。アガンの母は、ある日男と出奔してしまう。ジェイは継父から暴力を受けている。
それぞれの問題を放つようにブレイクダンスの練習に明け暮れる13歳のユン、ジェイ、ガン。
ある日、ジェイの父親を毒蛇で殺そうと計画する。

と、進む台湾での物語の間に、2015年アメリカで、サックマンと呼ばれる少年殺し事件の犯人を、弁護しようとしている男の話が挟まれる。

途中まで私は勘違いしていた。その犯人と弁護士が誰であるかを。

台湾人と外省人、国民党と共産党、両岸問題、台湾の歴史をよく知らない人には読みにくいかもしれないが。
今年の、私の読書部門ベスト3には入ると思う、作品。『スタンド・バイ・ミー』『タンポポのお酒』などに連なる少年の日の物語。誰か台湾の監督の手によって映画化されないかなあ。

マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ

著者 古内一絵
出版社 中央公論社

商店街の外れ、路地の奥に、『マカン・マラン』と言う店がある。夜食のお店。インドネシア語でマカンは食事、マランは夜の意味だという。オーナーはたくましいドラァグクイーンのシャール、昼間はドラァグクイーンたちのダンスファッション店。
第一話では、広告代理店に勤める、リストラの対象かもしれない中堅の女性、塔子が、仕事帰りにめまいで倒れたところをシャールが助け。漢方、マクロビオティックの、その人の体質に合わせた優しく美味しそうな料理が出てくる。貧血を起こした塔子に出されたのは、生姜とシナモンが香るお茶。生のマッシュルームをスライスして、ルッコラと和え、レモン、自家製ドレッシングと絡める、と言うのは誰でもできる!やってみよう。
この第一話が一番好きだったな。
第二話『金のお米パン』第三話『世界で一番女王なサラダ』第四話『大晦日のアドベントスープ』と、ちょっと疲れた大人に、次の一歩を踏み出させてくれる料理たち、人との出会いの物語。

マカン・マランのシリーズはあと3冊あるようで、全部読みたい。

これを紹介してくれた人は、今、療養中で、あまり食べられない。
マカン・マランのオーナーシェフのシャールも、難しい手術が決まっているという設定。

漢方系の食について、ほんのちょっと齧ったことはあるけれど、改めて勉強したくなりました。