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「沼地のある森を抜けて」 梨木香歩

梨木香歩 1959年鹿児島生まれ、イギリス留学、滋賀在住、だそうです。鹿児島生まれと知ってこの人の物を読み始めました。
始まりはぬか床だった、ぬか床がうめくのだと帯にあるので、ホラーか?「ほの暗い水の底から」の親戚か?というような気がしてしまうのですが・・・読み 終わったところで、はあーっ、すごい、とつぶやいてしまいました。酵母菌に始まり、壮大な命の流れ、生命とは、というところに行き着くファンタジーなので す。ファンタジーと言ってもユニコーンやいわゆる魔法や妖精が出てくるわけではありません。それに、途中に挟み込まれる“かつて風に靡く白銀の草原があっ たシマの話”という部分がいまひとつ良くわからない、のでありつつも、命ということについて物思う機会があるときに何かふと、救われる、そういう出会いに なるかもしれません。
この人の「からくりからくさ」を読んだ時に、ひょっとしてルーツは奄美?と思ったのだけれど、この「沼地のある森を抜けて」にはガジュマルやアダンが生えてる島がでてきます。

試しに、「西の魔女が死んだ」を読んでみてください。文庫に入っています。それが気に入った方、他の作品をどうぞ。それぞれが連作っぽい作りになっていますし。

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comment(0) 2006.04.24 14:30

「東京飄然」 町田康

旅に出たくなった。なぜか。理由などない。
というのがこの随筆集の始まり。我輩ハ猫デアル。名前ハマダ無イ。の後はどう続くんだっけ?と、連想を呼び起こされ。で、そのページの後ろから2行目に、友部正人という歌手に、「どうして旅に出なかったんだ?坊や」という歌がある、という文章がでてくる・・・買っちゃいますよ・・・人によっては。ルー・リードって名前も出てきますよ、あとのほうに。
町田康ってお好きですか?私は、この人が才能豊かであることは十分わかっているけれどこの人の文体はちょっと苦手(つまり饒舌な明治の文豪が貧乏長屋に住んでるみたいな感じの、あ、いつもそうなんだかは知りません、ごめんなさい)、なんだけど買っちゃいましたよ。
飄然と旅に出る、歌手であり作家である町田康が、ただし日帰りの。それぞれの旅の途中に気になった物こだわった小さな事件について語っている、そういうことなんですが。
新橋にポン・ヌッフという屋号の立ち食いそばやがあるそうです。フランス語のカケラがわかると、そりゃまあ新橋なんだけどそりゃそうだけど・・・まあだからそんなことに引っかかる方にお勧めしましょう。
「栄光のオランダ・フランドル展」を見に行くんだけど、別に興味があったわけではなく、なにふらんどるんじゃ、こらあ、みたいな状態である、のだそうです。
そんなこんなのたびに私はケケケと笑い崩れつつ、ちびちび読みました。
で、読み終わって最後に知ったのが、婦人公論に連載された物だと言うことです・・・婦人公論の読者って町田町蔵のパンクロックを聴いて育った人たち?そんなことも無さそうだよね・・・まさか主婦をターゲットにした読み物だなんて。町蔵はいい、と、吉本ばななさんの昔のエッセーに時々出てきて、どんな人、どんな歌だろうとかつて気になってたけれど。
いや、御紹介しといてなんだけど、これ、読む気になってもらえました?表紙を一枚はずすと彼自身の写真を含めてたくさんの写真が出てきますよ。知らない方のためにお伝えしますが、町田康はいい顔してますよ。

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comment(0) 2006.03.05 14:10

「ミスティー・レイン」柴田よしき

柴田よしきは、実にさまざまなスタイルの作品を書いている作家です。ミステ リー作家であることは確かなのですが、トランスジェンダー、ゲイといったこと を絡めて、ハードな描き方をしているRIKOシリーズ、無認可保育園の園長である 花咲探偵シリーズ、猫探偵シリーズ、そしてホラーの数々、などなど。 で、その中でこの「ミスティー・レイン」が、特別優れた作品だということで はないのです。
失恋し、失職し、偶然芸能界にかかわって、ひとりの男性俳優のマネージャー として採用された二十代の女性、茉莉緒・・・というのは少女漫画のような展開 ともいえます。殺人事件が起ります。 芸能界の内幕物ですから、ミーハー的好奇心で読めます。成り立てマネージャ ー和泉茉莉緒、そして雨森海という名の俳優の、成長物語と言ってしまえば、ま あそういうことである、お話です。
ではなにがお勧めか?
たとえば不倫、恋人の裏切り、失業、いつでも代替のきく仕事への不満・・・ どれか身に憶えのある人は多いでしょう。私なにしてるんだろう、と心につぶや いたことのある人、今、呟いたひと。
自分の足できちんと立つための過程、が、描かれている小説、というのは、心 に気持いいと思います。
読んでみて、面白かったと思った方は、次に花咲慎一郎探偵へ、そして、緑子 へ、進んでみませんか?わたくしは花ちゃんと、RIKOシリーズ2と3に出てくる ゲイのインテリやくざ山内のファンです。

柴田よしきホームページ http://www.shibatay.com/
ブログhttp://blog.livedoor.jp/c_nagatsu/

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comment(0) 2006.03.01 14:31

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