台湾映画
監督 李康生
出演 ルー・イーチン 苗天
李康生は、蔡明亮監督映画の主演俳優、つまりかつてのジャン・コクトー監督と俳優ジャン・マレーの関係。シャオカン(小康)と呼ばれた少年だった李康生の。初監督作品。原題『不見』。
公園のトイレから出てきたら孫がいなくなっていた、必死で孫を探し回る祖母。その姿をひたすら長回しのカメラで追う。迷子のアナウンス、交番(?)のおまわりさん…まではともかく、通りすがりのバイクの後ろに飛び乗って無理やり台北の町を走り探し回る痩せて小柄な祖母。
方や、インターネットカフェで一日中ゲームをしている少年がいる。祖父の不在を気にも掛けずに。
夜になって、孫探しに疲れ果てて途方にくれる祖母、そして祖父の不在を気にし始めてこちらもくたびれた少年。
そして、薄いフェンスでぐるりを仕切られた公園の外側に人影が・・・。
昼間の公園で日本の古い歌謡曲が流れていた。おまわりさんは話もそこそこに飛び出す祖母に「オバサン」と呼びかけた(と思う、そう聞こえた)。
康生くん主演の、蔡明亮監督作品ではない映画の中で、1960年代終わりぐらいの設定だったと思うが、父親に「とうさん」と呼びかけていたものがあった。『多桑』と書いて父さんと読む台湾映画もある。オバサンも台湾では日本植民地時代の名残で外来語として根付いているのだろうか。
蔡明亮監督の映画はどなた様にもお勧めできない物が多い・・・ずっと追いかけて見ていない人にはおよそ気持悪いだけかもしれないものもある(最近の『西瓜』とか数年前の『河』とか)。その奇妙な作品たちの中でいつもむしろ無表情な、孤独な、諦念のような、姿を見せている李康生初監督作品は、ドキュメンタリータッチの、やはり独特の視線で描かれる。
最新の中華芸能ニュースで、ベネチア映画祭のコンペに李康生監督の)「幇幇我愛神」ノミネートとのこと。シャオカン偉い。そして、蔡監督の映画にいつも出ていた苗天さんはかつてのカンフースターさんだそうだ。毎度淡々と妙な役を演じていた人だったが、亡くなられた。