ホセ・ムヒカ 日本人に伝えたい本当のメッセージ

著者 萩一晶
朝日新書

昨年来日して、世界で一番貧しい大統領としてその質素な生活ぶりを知られた、前ウルグアイ大統領ホセ・ムヒカ。彼に直截三度インタビューしている、朝日新聞記者の著。ラテンアメリカ特派員、ハバナ支局長などの経験がある。

私が思う「貧しい人」とは、限りない欲を持ち、いくらあっても満足しない人のことだ。でも私は少しのモノで満足して生きている。

モノを買うとき、人はカネで買っているように思うだろう。でも違うんだ。そのカネを稼ぐために働いた、人生という時間で買っているんだよ。

というような、ムヒカさんの言葉として昨年聞いたことのある種類の言葉も、いくつもあるのだが、むしろ書店に並ぶ別のムヒカさんに関する本のほうが、そういう言葉をたくさん知ることができるのではないか。この本では、南米、ウルグアイの歴史、このような大統領を誕生させることとなったバックグラウンド、などを追求している。ので、自分がいかに南米の歴史について無知であるかを知ることとなりましたよ。

と言っても、文体は読みやすい。ちょっと飛ばして最後の章を読んでみても構わないだろう。あちこち拾い読みすることもできる。「豊かな国であればあるほど、幸福について考え、心配し始めている。(中略)すでにたくさんのモノを持っている国々では、たくさん働いて車を買い替えることなんかには、もはや飽きた人が出始めているようだ」そうだよね、日本の若者は車を持たなくなった。中国の金持層の坊やとは大違いだ。

ムヒカさんとトランプ大統領の誕生という現象はよく似ているという。既成の政治家、既得権層への不満を持つ人々へのアプローチにより、思いがけなく共感を得た、ということ。トランプタワーに住む人と全く違って、鹿児島に住む両親の実家(そう書いてあったんだよ、両親の実家?なんか変だけど)よりも質素な家に住んでいるそうだ。

まあともかく、我が日本の今を時めく政治家たちの貧しすぎる言語に比べ、なんと豊かな言葉、コミュニケーション能力であることか。

手術を控えた叔父のお見舞いに行って、息子が本を出したから読んでくれと言われ、その鹿児島に住む著者の両親宅で渡されて読んだ本、です。

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