小さな場所

著者 東山彰良

文春文庫

台北北部、実在の街、紋身街。西門町という名前は聞いたことがあるが、台湾の原宿というところだそうだ。なのにそこの片隅には刺青の店が立ち並ぶのか。歌舞伎町とかの裏道みたいなものか?

猥雑な街で食堂を営んでいる両親、その息子、小武。

ケニー、猪小弟(ピッグボーイ)、ニン姐さん、それからタピオカミルクティ屋の阿華、などの店。ニン姐さんは、拝金主義のケニーと違って、一見さんお断りだし紹介で来た客にも考え直すように諭すような女性だった。

台湾では今でも土地神様みたいなものが祀られているのか?土地公廟から逃げ出した神様を連れ帰る?

短編連作で、あれこれの話ごとに思わずクスッと笑うようなエピソードがあって、あれ?この作家ってこんなだったっけ?と思う。日本で言うなら昭和の話のようだけれど、そこここに例えば『トイレの神様』の歌だのミッシェル・ガン・エレファントだのと出てくるので、割合最近の話なのだ。最後の『小さな場所』が良い。壺中之天の話を知っている中華の子供だからこその発想だろうが、何でも好きなものを入れておける空想の壺に、紋身街を入れる、入れないでけんかになる。そこから井の中の蛙の話になり。大喧嘩から冷戦になった頃、国語の授業で宿題が出る。テーマは「私の街」。小武が書き始める作文の始まりは、井戸の底に、蛙が一匹住んでいました。蛙は井戸の外には出たことがありませんでしたし・・・

井戸を跳び出して、とうとう大海原までたどり着き、クジラと話す、というところまで、書き進んでいく、のだよ。

区画整理が進み、小綺麗な家ばかりになった住宅地に住んでいると、ご近所に雑多な人々がごちゃごちゃと暮らしていてカギなどかけていなかった子供の頃を思い出すものでありました。

 

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